認知症をよく理解するための9大法則・1原則

神奈川県・川崎幸クリニック院長
公益社団法人認知症の人と家族の会副代表理事
杉山孝博

認知症の介護において最大の問題は、症状の理解の難しさにある。今言ったことも忘れてしまうひどいもの忘れ、家族の顔すら忘れてしまう失認、金銭・物に対するひどい執着、徘徊、失禁など多彩な症状を、介護者は理解できす、振り回されてしまう。認知症の症状を理解し上手な対応が可能になるように工夫したのが、「認知症をよく理解するための9大法則・1原則」である。

第1法則 : 記憶障害に関する法則

記銘力低下:話したことも見たことも行ったことも直後には忘れてしまうほどのひどいもの物れ。同じことを繰り返すのは毎回忘れてしまうため

全体記憶の障害:食べたことなど体験したこと全体を忘れてしまう
記憶の逆行性喪失:現在から過去にさかのぼって忘れていくのが特徴。昔の世界の戻っている

第2法則 : 症状の出現強度に関する法則

より身近な者に対して認知症の症状がより強く出る

第3法則 : 自己有利の法則

自分にとって不利なことは認めない

第4法則 : まだら症状の法則

正常な部分と認知症として理解すべき部分とが混在する。初期から末期まで通してみられる。常識的な人だったらしないような言動をお年寄りがしてい るため周囲が混乱しているときには「認知症問題」が発生しているのだから、その原因になった言動は「認知症の症状」であるととらえる。

第5法則 : 感情残像の法則

言ったり、聞いたり、行ったことはすぐ忘れる(記銘力低下の特徴)が、感情は残像のように残る。理性の世界から感情の世界へ。

a.ほめる、感謝する
b.同情(相づちをうつ)
c.共感(「よかったね」を付け加える)
d.謝る、事実でなくても認める、嘘をつく(悪役を演じる俳優の気持ちで)

第6法則 : こだわりの法則

ひとつのことにいつまでもこだわり続ける。説得や否定はこだわりを強めるのみ。本人が安心できるようにもってゆくことが大切

a.こだわりの原因をみつけて対応する
b.そのままにしておく
c.第三者に登場してもらう
d.場面転換をする
e.地域の協力理解を得る
f.一手だけ先手を打つ
g.お年寄りの過去を知る
h.長期間は続かないと割り切る

第7法則 : 作用・反作用の法則

認知症の人に対して強く対応すると、強い反応が返ってきます。認知症の人と介護者の間に鏡を置いて、鏡に映った介護者の気持ちや状態が、認知症の人の状態です。

第8法則 :認知症症状の了解可能性に関する法則

老年期の知的機能低下の特性から全ての認知症の症状が理解・説明できる

第9法則 :衰弱の進行に関する法則

認知症の人の老化の速度は非常に速く、認知症になっていない人の約3倍のスピード。正常の高齢者の4年後の死亡率が28.4%であるのに、認知症高齢者の4年後の死亡率は83.2%(聖マリアンナ医大長谷川名誉教授の報告)

介護に関する原則

認知症の人の形成している世界を理解し、大切にする。その世界と現実とのギャップを感じさせないようにする


より詳しくお知りになりたい方は、家族の会神奈川県支部発行の「改定 認知症の理解と介護-認知症の人の世界を理解しよい介護をするために-」(B5版、52頁、定価300円)をご覧下さい。

お問い合わせ

公益社団法人認知症の人と家族の会 神奈川県支部

電話:045-548-8061(月・水・金10時~16時)/ファックス:045-548-8068

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