介護保険・社会保障専門委員会

はじめに

第172回厚生労働省「社会保障審議会介護保険部会給付費分科会」」(分科会)は、11 月15日に「ベルサール秋葉原」(東京都千代田区)で午前10時から行われました。

議題は(1)地域区分について(2)居宅介護支援の管理者要件に係る経過措置について(3)令和2年度介護従事者処遇改善状況調査の実施について、でした。

人材の問題は介護職だけではない

議題(1)の「地域区分」とは「地域ごとの人件費格差を調整するために設定」「公務員の地域手当に準拠して見直す」ものです。例えば私の住む長野県原村は東京都23区と比べ、介護報酬が2割少なくなっています。中山間地域への介護事業所の参入が消極的になると言われています。  

議題 (2)の「管理者要件」とは「居宅介護支援事業所(*ケアマネジャーが所属する所)における人材育成の取組を推進するため、主任ケアマネジャーであることを管理者の要件とした」ものです。2020年度までに実施する予定を2026年度まで延長する事について問われました。厚生労働省の調査で、管理者が主任ケアマネジャーの資格を有する事業所は44.9%で、ここでも人材不足の問題が指摘されています。

まだまだ低い介護職員の収入

議題(3)は、これまでの「介護職員処遇改善加算」に加えて今年度に作られた「介護職員等特定処遇加算」(介護サービス事業所における勤続年数10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠に、公費1000億円程度を投じて行う処遇改善)を中心とした、介護事業所の職員の待遇状況の調査についての提案です。  厚生労働省の2018年調査では、月額給与の全産業平均36万6千円、福祉施設介護員平均27万5千円です。賃金は重要な問題ですが、働く人にとって職場の環境も働き続けるための大事な条件です。介護職場特有の様々な職場環境の実態把握は、職員定着のためのヒントになる、という「市民福祉情報オフィス・ハスカップ」小竹雅子さんの指摘は大事なことだと思います。

鎌田事務局長の発言要旨

・「訪問系」サービス事業所の人件費割合低下傾向はなぜ?

「地域区分」の目的は、介護現場で働く人たちの人件費を公平に保障するための仕組みなのだと理解している。「地域区分」ごとに「報酬単価」は紹介されているが、働く人たちの賃金はどうなっているのか?ホームヘルパーや介護職員の地域区分別に平均給与の額がわかるようであれば、資料を出していただきたい。また資料の「人件費割合の推移」に、「訪問系の人件費割合は、平均3%程度の低下傾向にある」という、心配になる報告があります。「通所・入所系及び施設サービスの人件費割合は、平均2%程度の上昇傾向にある」のに、なぜ、訪問系の人件費割合が下がっているのか?介護保険は在宅サービスを利用する人が8割近くになる。ひとり暮らしや高齢夫婦で暮らす人も多いなかで、ホームヘルパーや訪問看護師など「訪問系」のスタッフの確保はとても重要だと思う。「訪問系」の人件費割合が下がっている理由について、わかる範囲でかまわないので、教えていただきたい。

・介護サービス利用者や介護者の視点からの主任ケアマネージャーの調査は?

ケアマネジャーは自宅などで在宅サービスを利用している人や介護する家族にとって、貴重な存在である。2016年度と2018年度を比較する資料によると、「管理者が主任ケアマネジャーでない」という問い回答では、2016年度の51.1%から2018年度は43.7%になり、7.4%しか減っておらず、主任ケアマネジャーを配置が進んでいない。その理由として、「実務経験年数5年以上の要件が満たせないため」がもっとも多いとの報告がある。介護保険がはじまって20年近くが経過しているのに、制度とともにスタートしたケアマネジャーの実務経験年数はそれほど短いのだろうか。管理者の経験年数の資料はあるが、事業所のケアマネジャーの経験年数について、資料があれば資料を出していただきたい。管理者が主任ケアマネジャーである場合、「事業所内検討会の定期的な開催」や「同行訪問による支援」、「ケアマネジャーからの相談」などに対応できているケースが多いという報告がある。これはどちらかといえば、経営あるいは運営する立場からの評価になると思うが、利用者や介護者からの主任ケアマネジャーに対する評価の調査結果があれば、教えていただきたい。

・「派遣労働者」に頼る介護現場

私の親はグループホームに入居している。会いに行くたびに新しい職員さんがいて、人材派遣会社からの派遣スタッフとのこと。事業所を運営している人にうかがうと、介護職員処遇改善加算、あるいは10月から新設された介護職員等特定処遇改善加算があっても、応募してくる職員がいないのが現状とのこと。このため、派遣スタッフに頼るしかないのだそうです。事業所からみれば、サービスの質を上げようとしても、研修すらできない現状のなかで、めざす目標には到底届かず、現場で働く他の職員が疲弊していると言っています。また、介護職員処遇改善加算を取るため、利用者に自己負担額が増えることを説明する必要があるわけですが、説明する事業所の側も制度が複雑すぎて、わからないままに説明しているように感じます。利用者は、介護職員の給与が増えて、定着してくれるのならと思って加算に同意しお金を払っていますが、厚生労働省でもわかりやすい説明をもっと広げていただければと思います。 人材定着のための加算について、全国的な実態を知るためには、処遇改善加算や特定処遇改善加算の取得状況だけでなく、事業所の離職率や人材派遣会社の職員の割合、派遣スタッフの費用割合などの項目もあるといいのではないかと思います。今回の調査では、人材の定着の現状について把握する調査項目も用意されているのでしょうか?あるいは、厚生労働省の調査とは別に人材定着の現状を知ることができる調査があれば教えていただきたい。

サービスの削減と負担増加の流れが広げられています

 11月25日、財務省の「財政制度等審議会」は財務大臣に「建議」を提出しました。 「介護」分野については、利用料の「原則2割負担に向けその対象範囲を拡大」「要介護1と2の者の~地域支援事業絵の移行等」「ケアマネジメントサービスの~自己負担を導入」等の実現を迫っています。11月21日の「全世代型社会保障検討会議」に呼ばれた日本商工会議所の三村明夫会頭は、介護保険サービス利用料の2割負担を主張したと伝えられています。年末に予定されている「中間報告」の内容が気がかりです。

次回の「給付費分科会」

 次回の「給付費分科会」は2019年12月12日に予定されています。(まとめと文責 鎌田晴之)

リンク:厚生労働省(部会ホームページ)

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126698.html