どうするつもりか介護保険制度=「改正」の動きレポート#45の1 【介護保険部会】

介護保険・社会保障専門委員会

はじめに~2割負担の対象者拡大「部会」結論出ず、予算編成過程での検討に~

 12月7日に、第109回社会保障審議会介護保険部会(「部会」)が開催されました。会場は「東京虎ノ門グローバルスクエアカンファレンス」で午前10時から12時まで、会場参集とWEB参加のハイブリッド形式でした。議題は「給付と負担について」で、報告事項として1 「『介護予防・日常生活支援総合事業の充実に向けた検討会』の中間整理及び総合事業の充実に向けた工程表について」及び2「改正介護保険法の施行等について」が行われました。
 「一定所得以上の見直し」=2割負担者の対象拡大については、昨年末の「部会」がまとめた「介護保険制度見直しに関する意見」では今年の夏ごろを目途に結論を得るとされてきましたが、6月16日に「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)が閣議決定され、この件は本年末までに結論を得るとされた事を受けての審議でしたが、今回も結論への方向性がまとまらず、「来年度予算編成過程で検討する事としてはどうか」という事務局の意向を了承する形で終わりました。
 今回も、花俣ふみ代副代表の発言要旨を紹介しながら、配布資料及びYoutube配信に視聴参加した際のメモなどをもとに、問題点をお伝えしていきます。(囲み内が発言要旨、下線は脚注用)

写真 朝日新聞デジタルより

1 開催案内第109回社会保障審議会介護保険部会の開催について
2 00-1 第109回介護保険部会議事次第
3 00-2 介護保険部会委員名簿(R5.12.7)
資料 資料1 給付と負担について
   参考資料1-1 給付と負担について(参考資料)
   参考資料1-2 全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)について(素案)(令和5年第16回経済財政諮問会議資料)
   資料2-1 「介護予防・日常生活支援総合事業の充実に向けた検討会」の中間整理及び総合事業の充実に向けた工程表について(報告)
   資料2-2 介護予防・日常生活支援総合事業の充実に向けた検討会中間整理
   資料3-1 改正介護保険法の施行等について(報告)
   資料3-2 介護予防・日常生活支援総合事業の上限制度の運用の見直しについて(報告)
   石田委員 提出資料

 

【第109回介護保険部会 2023年12月7日】
「給付と負担について」の厚生労働省による「今後についての対応案」(資料1の13頁)
『2割負担の一定所得以上の判断基準(※1)のあり方については、負担能力に応じた給付と負担の不断の見直しの観点から、現場の従事者の処遇改善をはじめ、地域におけるサービス提供体制の確保に係る介護報酬改定での対応と合わせて、 予算編成過程で検討(※2)することとしてはどうか』
『その際、以下の点に留意しつつ、検討することとしてはどうか。・介護サービスは、医療サービスと利用実態が異なるため、単純な比較は困難であること ・ 判断基準の見直しの検討に当たっては、見直しによるサービスの利用への影響について留意すること ・仮に、判断基準の見直しを行う場合には保険者の実務への影響や利用者への周知期間に十分に配慮する観点から、十分な準備期間を設けること』
『介護老人保健施設及び介護医療院の多床室の室料負担の導入については、 在宅でサービスを受ける者との負担の公平性、各施設の機能や利用実態等を踏まえつつ、本年末の予算編成過程において検討すべきである』(参考資料1-2の9頁)

(※1)一定所得以上の判断基準  資料1の4頁、参考資料1-1の17~19頁参照

(※2)予算編成過程で検討  
「部会」での結論を出さないまま、来年度の予算編成において、与党や財務省との折衝の中で決めるということです。「部会」には報告をするという事ですが、花俣ふみ代副代表も指摘しているように、介護保険サービスを利用する高齢者世帯の負担能力を示す資料が不十分なまま、基準額の設定を一任することには不安があります。

以上の「対応案」は、12月5日の内閣府・経済財政諮問会議の「素案」を踏襲しています。(参考資料1-2)

【花俣ふみ代副代表の発言要旨】
 まず資料の1ですけれども、一定以上所得の判断基準ですが、今回は75歳以上の世帯の収入と支出の状況年収別モデルが10段階示されています。しかしこの資料では要支援・要介護の認定を受けた方々の収入と支出の状況は把握できません。また、その他消費支出に介護サービスの自己負担分が含まれるそうですが、身の回りの品や、理美容代など諸雑費や交際費、仕送り金なども合計した額ではとても介護保険の自己負担額のエビデンスにはならない、つまり、認定を受けた皆さんの収入と支出の状況が示されない限り、2割負担の方を増やせるかどうかを判断することはできません。納得して受け入れることはできないことをまず申し上げます。

年収別モデルが10段階  資料1の6~7頁

同趣旨の発言を紹介します。
【染川朗委員  UAゼンセン日本介護クラフトユニオン会長による発言メモ】
『要介護状態の方の支出には、介護保険給付の対象とならない衛生用品や通所施設での食費負担居住系施設系サービス、あるいはショートステイ等でのホテルコストや食費、水光熱費負担が発生しています。これらについても併せて検討の材料とすることに加え、必要な介護を受けるために、収支がマイナスとなる場合に、預貯金の取り崩しや親族からの金銭的援助に頼るケースがどの程度あるのかも踏まえて検討する必要があります』

【花俣ふみ代副代表の発言要旨】
資料1のP10にもありますように政府の財政諮問会議で、介護保険制度改革の素案が出され、この中で13ページにもありますように利用者負担の範囲の見直しとして、年本年末の予算編成過程において検討するとあります。介護を必要とする人や介護する家族にとって、利用料が2倍になるのかどうかという不安は大変大きなストレスになっています。また介護保険サービスを必要とする人は医療のニーズも抱えています。少子化対策のため、医療保険の引き上げの他、患者負担を増やすことが予定されています。来年度の第1号保険料は、人口比率の計算だけでも自然増があります。年金収入がほとんど増えず、物価高騰の中で保険料と患者負担も上がるという中、さらに介護保険で利用者負担が2割になる人を本当に増やせるのでしょうか?加えて、多くの皆さんを不安に陥れる見直しの審議が長期化するという異例の展開、これ以上、無理やりの議論を続けていただきたくはないのです。介護を必要とする皆さんが負担増によりサービスを減らす、あるいは諦める事態は絶対に回避していただきたいと繰り返し強く要望いたします。以上になります。

「2割負担判断基準の見直し」に対する各委員(=団体等)の発言要旨を発言順にメモから紹介します。

【鳥潟美夏子委員 全国健康保険協会理事】
  応能負担の観点から現役並み所得一定以上、ストック所得の双方について、それぞれ判断基準の見直しを行う必要がある
【花俣ふみ代委員  認知症の人と家族の会常任理事】上記囲み内
【小林司委員 日本労働組合総連合政策推進局生活福祉局長】
  長期化して負担を積み重ねる介護と医療との違い、サービスへの影響について、くれぐれも留意して慎重に検討すべきと考える。
【橋本康子委員 日本慢性期医療協会会長】
  *このテーマについて言及せず
【笹尾 勝委員 全国老人クラブ連合会常務理事】
  7月段階ではやはり慎重な意見が大勢を占めていた。やはり慎重に検討していただくことが大事だろうというふうに思いますれば、予算編成過程での検討をするということについては認めがたい。
【小林広美委員 日本介護支援専門員協会副会長】
  高齢者の生活には、利用者負担割合以外にも居住費とか、物価高騰の影響もある。負担割合が上昇する利用者さんには、費用負担が急増する場合もあるので、高齢者の事情に十分配慮いただきたい。
【染川朗委員  UAゼンセン日本介護クラフトユニオン会長】
  介護報酬は当然に大幅プラス改定されるものと考えており、利用者負担の増加が生まれますので、それを踏まえて判断をする必要があるという観点であれば、事務局提案については了承しする。
【佐藤主光委員 一橋大学国際・公共政策大学院、大学院経済学研究科教授 】
  やはり能力に応じて応分の負担を求めていくことだ。そのために資産の保有状況を考慮した自己負担のあり方、保険料の設定というのも今後検討していく必要がある
【小林司委員 日本労働組合総連合政策推進局生活福祉局長】
  長期化して負担を積み重ねる介護と医療との違い、サービスへの影響について、くれぐれも留意して慎重に検討すべき。
【石田路子委員 高齢社会をよくする女性の会】
  高齢者の生活実態を詳しく、現実を調査した上で、サービスの利用控えというような状況が多く引き起こされないようにしっかり高齢者の生活実態を把握して、改めて検討していただきたいということをもう一度強く要望する。
【井上隆委員 日本経済団体連合会専務理事】
  予算編成過程で検討するということはやむを得ないと考えるが、本来の部会でデータを基に議論を尽くすべき課題ではないか。また、フローの収入だけではなくて、ストックの方の状況も把握する

必要がある。とりわけ金融資産の把握というのが重要になってくる。

【伊藤悦郎委員 健康保険組合連合会常務理事】

  高齢者は現役世代と比較して収入が低いというふうに思われているが、貯蓄は大きい傾向がある。世代間のバランスを考えると、本来はフローだけではなくて、ストックも考慮して検討していくべき。利用者負担については原則2割負担とするといったような、踏み込んだ見直しを確実に実施して検討していただきたい。
【小泉立志委員 公益社団法人全国老人福祉施設協議会副会長】
  物価高騰による生活への影響もあり一定以上の所得だからといってその対象者ばかりに負担を強いるのは、慎重に協議が必要。フルサービスの利用への影響も考慮が必要であり安易にこのまま決めてしまうのはいかがなものか。
【川野参考人委員 全国市長会介護保険対策特別委員会 】
 今後利用者負担の増加によって、サービスの利用控え等が懸念されるところ。介護を必要とする全ての人がサービスを利用できるよう、また利用者の負担が過重にならないよう十分に配慮した上で、慎重な検討をお願いしたい。
【新田参考人 全国知事会】
  高齢者の家計状況等の詳細な分析を踏まえ、サービスの質に見合った自己負担のあり方を検討することも必要。当部会で出された意見にも十分ご留意した上で、総合的な観点から、予算編成上の過程においてご検討を進めていただきたい。
【幸本智彦委員 日本商工会議所社会保障専門委員会委員】
  判断基準の見直しにより利用者負担を2割とする対象の拡大などを検討すべき。これについては予算編成過程で検討するとされている事務局案の通り進めていただければと思う。
【及川ゆりこ委員 日本介護福祉士会会長】
  くれぐれもサービスの利用控えに繋がることがないような整理をお願いしたい。
【座小田孝安委員 民間介護事業推進委員会代表委員】
  現下の経済情勢等も踏まえ、検討すべきとされているので、高齢者の生活実態や運用後の影響につきまして、しっかりと検証いただくようにお願いしたい。
【江澤和彦委員 日本医師会常任理事】  介護保険のみならず医療保険の2割負担の議論もあり、物価高騰とあらゆる負担を考慮した上で慎重に、本当に負担できない方がいないのかどうか検討していくべき。近年医療や介護の分野において、会議の形骸化が指摘されており、先ほど予算編成過程に於いて当部会の議論がどの程度反映されるのか、質問としたい。
【田母神裕美委員 日本看護協会常任理事】
  負担増による必要なサービスの利用抑制に繋がらないよう、また、物価高騰による影響も十分に詳細に配慮した上で、慎重な検討が必要である。
【野口晴子委員 早稲田大学政治経済学術院教授】
  *事務局提案への意見表明無く、資料作成に関する方法論を展開

座長【菊池馨実座長 早稲田大学理事法学学術院教授】
 様々な観点から様々なご意見をいただきました。ありがとうございます。その中でも積極的なお考えの皆様、一方で慎重にというお考えの皆様もいらした。また、そもそもこの予算編成過程での検討に委ねることへのご疑問を呈された委員もおられた。ということで、全面的に異論なしということで、まとめるわけにはいかない。今日の議論を踏まえて、事務局としての受け止めをあるいはお答えできる部分があればお願いしたい。

【蓑原介護保険計画課長 】
 2022年の家計の支出収入モデル等も提出した一方で、現下の物価の状況、後期高齢者医療制度の見直しに伴う負担増、介護報酬改定の影響などについて、これだけでは負担可能かどうか、さらに負担が増える部分であるのではというご指摘もあった。我々としても非常に重く受け止めている。各制度の見直し、また分科会の方での報酬改定の内容によっては利用料の方にも当然影響があるわけで、それらを踏まえて予算編成過程でしっかりと検討する。本日まで継続をしてご議論頂き、各部会でいただいたご意見というのは、当然厚生労働省としては責任を持ってしっかりと反映というか考慮した上で予算編成過程で検討していく。また予算編成過程のプロセスの主体、誰が主体なんだというところの笹尾委員からも御指摘もあり、それは当然政府予算編成過程においては、与党等のご相談というところが途中の過程では出てくるが、最終的には政府、厚生労働省として決めていくと判断していくということ。2割負担、給付と負担の議論が長期化をしているという異例の事態というご指摘もあり、まさに介護報酬改定の時期とこの給付と負担の見直しの判断の時期が重なったということについては大変申し訳なく思っているが、全体の負担の状況や影響値に関しては、総合的に判断をさせていただきたい、そういった形でご理解をいただきたいと思っています。

座長【菊池馨実座長 早稲田大学理事法学学術院教授】によるまとめ
 介護保険のあり方を議論する場というのはまさにこの介護保険部会である。ここに様々な知見を持つ専門家あるいは専門職の皆様が、あるいはその当事者関係者の皆様が、都度上げて専門的な議論をしているので、ここでの議論の中身というものはしっかりと反映していただく必要がある。予算編成過程において、先ほど蓑原課長、山口課長から決意表明があったが、しっかりとここでの議論を踏まえて、臨んでいただきたいと、私からも強くお願いしておきたい。そういった形で、なかなかすっきりした結論にはならず、相変わらず皆様に大変申し訳ないのですが、年末に向けて厚生労働省には頑張っていただくということで、今日のところはお認めいただけますとありがたいのですが、よろしいでしょうか?ご異論ございませんでしょうか?よろしいですか。はいありがとうございます。

 「給付と負担」、今回は利用料2割負担の基準見直しが議題ですが、審議をこの時期まで引き延ばされながら、結論を得られませんでした。発言メモの紹介でも、積極論、懐疑論、反対論が混在していますが、これは他の課題でも同様です。それでもこれまでは「妥協案」を工夫してきた事務局が、今回まとめきれないのは厚生労働省が“当事者能力”を発揮できないなんらかの要素があるのでしょうか。危惧するのは、委員からも出ていましたが、諮問機関たる審議会の形骸化です。 報告事項とされた「総合事業」についても、意見交換が行われました。「第10期計画期間までに結論を得る」とされている、「軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方」(=要介護1と2の人の生活援助等の総合事業への移行)と関わる問題ですので、花俣ふみ代副代表の発言も含めて、別便「動きレポート#45の2」としてお届けします。

 最後に、このレポートが、審議の全てをお伝えするものになりえないことをご理解いただき、今回のテーマを含め、取り上げていない問題にも、意見・質問がございましたらお寄せください。            

(まとめと文責 介護保険・社会保障専門委員会 鎌田晴之)

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