どうするつもりか介護保険=改正の動きレポート#44【介護給付費分科会編】

介護保険・社会保障専門委員会





はじめに ~令和6年度介護報酬改定に向けての審議報告のとりまとめに向けて~

 12月11日(月)13:30から16:00まで、九段会館テラス コンファレンス&バンケットバンケットホール鳳凰参集及びWEBによるハイフレックス形式で開催された、厚生労働省社会保障審議会第235回介護給付費分科会(「分科会」)は、令和6年度介護報酬改定に向けて、審議報告のとりまとめに向けた内容について審議されました。その中で、委員として当会より出席した鎌田松代代表理事の発言内容を中心に「分科会」審議の動きをお伝えします。

議事次第
<資料>
 社会保障審議会介護給付費分科会委員名簿
【資料1】令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)の概要
【資料2】令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)
【資料2-1】第233回介護給付費分科会でのご意見を踏まえた審議報告記載事項の見直し案

<参考資料>
【松田委員提出資料】

 最初に老人保健課長よりこれまでの分科会の内容をまとめた68ページにわたる量の審議報告(案)資料2の説明があり、続いて高齢者支援課長より資料2-1の説明がありました。
 また、松田委員より提出資料のLIFEに関する説明がありました。

【鎌田松代代表理事による意見及び質問】(囲み内、下線は脚注用)
7ページの良質なサービスの効率の提供に向けた働きやすい職場作りの、特に訪問介護などのサービスでは・・・・の最後に「訪問介護の人材を充実させるための取り組みを喫緊の課題として対応を検討する」と追記することを要望します。また、訪問介護の人手不足の緊迫性が、この文章全体の中からは受け取れないと思いましたので、再度の検討をお願いできればと思います。

 鎌田松代代表理事は資料2令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)7ページ(3)良質的なサービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくりが求められる中での改定の内、訪問介護に関する部分
○ 特に訪問介護などのサービスでは人員不足が顕著であり、これまで処遇改善に関する累次の取組を行ってきた。令和4年10月の臨時介護報酬改定においてはベースアップ等支援加算を、また令和5年度補正予算においては令和5年の賃上げの状況を踏まえ緊急支援補助金を創設した。あわせて、多様な人材の確 保・育成、離職防止・定着促進、生産性向上、介護職の魅力向上など総合的な人材確保対策を講じてきており、引き続き、処遇改善措置の効果の把握とともに、これらの取組の継続が求められる。
に対し、訪問介護の人材確保への取り組みを喫緊の課題として対応検討することを明文化するとともに、訪問介護の人手不足の緊迫性が読み取れる文章にして欲しいと要望しました。
 確かに、資料2の当該文章では、これまで処遇改善や介護職の魅力向上など総合的な人材確保対策を講じてきたことに、あたかも効果があったかのように読み取れ、現在も訪問介護の人材不足が解消されずに危機的状況である認識が低いのではと感じてしまうのは私だけでしょうか。

【鎌田松代代表理事による意見】
11ページ居宅介護支援・介護予防支援のところで、「少なくとも2月に1回(介護予防支援の場合は6月に1回)は利用者の居宅 を訪問すること。」とあります。時代の流れの中ではICTの利用もあると思いますし、積極的に使っていくことは大事だと思います。しかし、そのリスクや利用者の状態の観察をどうしていくのかが理解されないままに利用されていくことに、私達利用者家族は危惧を覚えます。そのことは毎回申し上げております。コロナ禍を経てオンラインの利用は移動がない分、時間を有効に使え、必要事項を検討できるなど話せる便利さを体感しております。片や、会議や研修会での参集者が増えています。それは直接に会って肌感覚でのコミュニケーションが重要であることがわかったからです。このテレビ電話等を活用してのモニタリングでは収集できない情報については、他のサービス事業者との連携により情報収取する、とありますが、これは既に行われていることではないのでしょうか?テレビ電話などの通信機器を使った際においては、せめて「利用者の必要に応じて柔軟に訪問回数を増やすことに対応する」などを、少なくとも2月に1回の文言のところに加えていただければと思います。

 鎌田松代代表理事は資料2令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)11ページ③他のサービス事業所との連携によるモニタリング部分
・テレビ電話装置等を活用したモニタリングでは収集できない情報について、他のサービス事業者との連携により情報を収集すること。
・少なくとも2月に1回(介護予防支援の場合は6月に1回)は利用者の居宅を訪問すること。
に対し、テレビ電話等の活用はある意味便利で効率的であるものの、直接会って肌感覚でコミュニケーションをとることに勝るものではない。他サービス事業者との連携による情報収集についても、これまで当たり前のように行われてきたことで、新たな緩和条件とはなりえない旨の意見を述べました。また、利用者の状態に応じて訪問回数を柔軟に増やす文言を加筆するよう求めました。
 これまで介護支援専門員は1月に1回以上、利用者宅を訪問しモニタリングを行わなければならないという基準の元、状態に合わせて複数回訪問する場合も多くあり、サービス提供事業所との情報共有は当たり前のように行ってきました。
 はたして、テレビ電話を利用できる要介護者がどの程度いるのでしょうか。ケアマネさんの多くは専門職としてプライドを持っているので、これまで通り利用者宅を訪問すると私は思います。(思いたいです)

【鎌田松代代表理事による意見】
24ページの高齢者虐待防止、安全性の確保等の取組の推進で、基本報酬減算というペナルティを課すだけでは本質的な虐待防止を目指すことにはならないのではないでしょうか?特に介護職員の虐待には業務上のストレスが影響していることも多いため、介護職員へのカウンセリング、あるいは介護職員への相談支援などの対応が現在も行われていると思いますけれども、更なる充実というような文言も入れていただければと思います。

 鎌田松代代表理事は資料2令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)24ページ(6)高齢者虐待防止、安全性の確保等の取組の推進における①高齢者虐待防止の推進および②身体的拘束等の適正化の推進について、それぞれ虐待の発生又はその再発を防止するための措置および身体的拘束等の適正化のための措置が講じられていない場合に基本報酬を減算する
に対し、この措置だけでは本質的な解決に結びつかないのではないかとの意見を述べました。また、介護職ストレス軽減のための相談支援について、さらなる充実を図ってほしいとの文言加筆を要望しました。

【鎌田松代代表理事による意見】
26ページの福祉用具の両カッコ8の福祉用具貸与・特定福祉用具販売の見直しについて、「利用者に対して選択のメリットとデメリットを理解できるように」を説明文章の前に入れていただくことを希望します。

 鎌田松代代表理事は資料2令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)26ページ
(8)福祉用具貸与・特定福祉用具販売の見直しの中の一文
選択制の対象福祉用具の提供に当たっては、福祉用具専門相談員又は介護支 援専門員が、福祉用具貸与又は特定福祉用具販売のいずれかを利用者が選択で きることについて、利用者等に対し、選択のメリットとデメリットを理解できるように十分説明を行うこととするとともに、利用者の選択に当たって必要な情報を提供すること及び医師や専門職の意見、利用者の身体状況等を踏まえ、提案を行うこととする。
の中で、赤字部分を加筆するするように求めました。
利用者等が選択判断に必要な情報は、丁寧かつ理解しやすく説明してほしいものですね。

【鎌田松代代表理事による意見】
42ページ①管理者の責務及び業務範囲の明確化について、他の方もおっしゃってましたが、効率化を急ぐあまり兼務による管理者の過重労働にならないよう十分に配慮することを求めるといった文章を追加していただければと思います。

 鎌田松代代表理事は資料2令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)42ページ
 提供する介護サービスの質を担保しつつ、介護サービス事業所を効率的に運営する観点から、管理者の責務について、利用者へのサービス提供の場面等で生じる事象を適時かつ適切に把握しながら、職員及び業務の一元的な管理・指揮命令を行う ことである旨を明確化した上で、管理者が兼務できる事業所の範囲について、管理者がその責務を果たせる場合には、同一敷地内における他の事業所、施設等ではなくても差し支えない旨を明確化する。
の文章に「効率化を急ぐあまり兼務による管理者の過重労働にならないよう十分に配慮することを求める」との内容を加筆するよう求めました
 管理者の多くは介護職や生活相談員等と兼務している場合が多いので、実態に対する配慮は必要と思います。

【鎌田松代代表理事による意見】
 49ページ5.その他①「書面掲示」規制の見直しについて、「介護サービスの事業者は原則として重要事項等の情報をウェブサイト(法人のホームページ等又は、情報公表システム上)に掲載公表しなければならないこととする。」の後に、「なお、公表場所については利用者等に周知するよう努める」を追加することを要望いたします。どこに書いてあるのか、ホームページであるのか、例えば掲示場所であるとか、利用者がどこを見ればわかるかを入れていただければと思います。

鎌田松代代表理事は資料2令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)49ページ5.その他①「書面掲示」規制の見直しにおける
介護サービス事業者は、原則として重要事項等の情報をウェブサイト(法人のホームページ等又は情報公表システム上)に掲載・公表しなければならないこととする。
の部分に対し、利用者目線に立って利用者が情報を得やすいよう配慮する文言を加筆するように求めました。
ウェブサイトの情報検索に慣れていない高齢者等は、必要な情報を探すことが難しいと容易に想定できますので、是非加筆してほしいですね。

【鎌田松代代表理事による意見】
 最後に、先週の新聞記事の中に介護労働者の入職離職のデータが出て、介護現場で働き始める人を離職が初めて上回る担い手不足が危機的という報道がありました。データを調べていただきましたら、6.3万人の離職超過があったということです。介護現場の人手不足が数字でも見られるように、実際の現場での不足人員はもっとではないのかとも思ってしまいます。この数字によって現場の混乱が予測され、介護サービスの質への影響をとても危惧します。介護人材を増やす必要があるのに減っていることに危機を覚えます。また、デジタル化などによる人員削減の方向性は、基本報酬の削減に繋がるのではないか。さらに人材不足が拡大することを懸念いたします。介護人材を増やすための抜本的な取り組みに、真剣に取り組むための調査検討を早急に実施していただきたいと思います。このことについてもう一度述べます。

 鎌田松代代表理事は、介護労働者の離職者が入職者数を上回る新聞報道を紹介し、人材不足の課題解消のために介護人材を増やさなければならないところ、逆に減っている現状に対し介護保険制度の危機的状況であることを改めて訴えました。また、介護人材確保に効果的な取組につながる調査検討を求めました。

【鎌田松代代表理事による意見】
 2点目は加算がさらに増えることです。制度の簡素化や解りやすさが、逆に制度の複雑化、解り難さの方向に進んでいるように思えてなりません。制度の解りやすさについては、今回の審議が始まった当初から意見がありましたけれども、最終的には複雑さが加算されてるように思います。今後の検討をぜひお願いいたします。

 鎌田松代代表理事は、制度の簡素化と解りやすさという大勢意見に対して、結果的に逆行した内容について正しました。
それにしても多くの加算があり、介護支援専門員ですらすべてをしっかり網羅できない現実を皆さんはどのようにお考えでしょうか。

【鎌田松代代表理事による意見】
 3点目は1点目と関連しますけど、今期の介護保険制度の改正では、介護人材の確保が重要な課題だったと思います。特養での悲惨な虐待事件が先週報道されていました。人手不足での無資格者でしょうか、研修がないままでの現場配置だったとの報道がありました。在宅介護が困難となり、特養にやっと入所できたのに、人材不足からこのような痛ましい事故で家族を亡くしてしまう。また、夢を持って介護の現場に来た職員さんがこのような事故を起こしてしまうようなことになっているのは、ひとえに介護人材不足というところにいるのではないのでしょうか? 施設も人材確保に向けては努力をされています。私達利用する者も処遇改善加算が増えるたびに、職員さんが長く働いて笑顔でケアしていただければと思い負担してきました。しかし、これ以上は介護保険料も上がる現状の中では難しいので、税での支出の検討を要望いたします。 私達利用者、施設はこのように、いろいろと自分たちにできることをやっていますけれども、片や国はいかがでしょうか?今回いくつかの人材確保や配置基準での人材の有効活用などでの対応策が出され、もちろんICTを活用してロボットを活用してっていうことも出されていて、検討を続けておられることはわかりました。しかし、小手先ではないのでしょうか?  介護職の魅力向上、離職防止、定着促進など、ページ7の訪問介護のところに記載はありますが、具体的に私達利用者家族に国が行っていることは見えてきません。喫緊の課題ですので、省庁を横断した福祉人材の課題に取り組んでいただくことを切に希望いたします。先ほど石田委員からもありましたけれども、辞めた方の理由も大事ですが、なぜ福祉の現場に応募がないのかという調査は、ぜひ早急にお願いしたいと思っております。以上です。

 鎌田松代代表理事は、最近頻繁にある介護福祉施設(特別養護老人ホーム)における虐待報道を紹介し、改めて介護人材確保が喫緊の課題であると同時に危機回避であることを強調し、省庁を横断しての取組を要望しました。
 介護人材確保の課題については、立場により危機感という点で、かなりの温度差を感じます。利用する側の私たちや、介護事業を運営する側の事業者は、介護人材不足による影響を直に受けているため、かなり強い危機感を持っていると思いますが、国側の対応を見る限り危機感の度合いに明らかな違いがあるとの印象を持つのは私だけでしょうか。

 本分科会の審議内容を網羅し事務局が修正した、令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)が次回の分科会(12月18日予定)において提出され審議される予定です。

 いよいよ大詰めです。

 最後に、このリポートが、審議の全てをお伝えするものになりえないことをご理解いただき、今回のテーマを含め、取り上げていない問題にも、意見・質問がございましたらお寄せください。

(まとめ・文責  介護保険社会保障専門委員会 志田信也)

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