どうするつもりか介護保険=改正の動きレポート#43【介護給付費分科会編】

介護保険・社会保障専門委員会

はじめに ~ 令和6年度報酬改定に向けて・運営基準に関する事項、多床室の室料負担、複合型サービス(訪問介護と通所介護の組合せ)など、審議は大詰めに ~

 

 12月4日9:30から12:00まで東京虎ノ門グローバルスクエアコンファレンス参集及びWEBによるハイブリッド方式で開催された厚生労働省社会保障審議会第234回介護給付費分科会(「分科会」)は、令和6年度介護報酬改定に向けて運営基準に関する事項、多床室の室料負担、複合型サービス(訪問介護と通所介護の組合せ)、その他(基準費用額、総合マネジメント体制強化加算、終末期の薬学管理、定期巡回・随時対応型訪問介護看護における訪問看護関連加算の取扱い)などについて審議されました。その中で、審議委員の鎌田松代代表理事の発言内容を中心に「分科会」審議の動きをお伝えします。

【審議内容】 

議事次第
委員名簿
【資料1】運営基準の改正等の概要(案)
  1.地域包括ケアシステムの深化・推進
  2.自立支援・重度化防止に向けた対応
  3.良質な介護サービスの確保に向けた働きやすい職場づくり
  4.制度の安定性・持続可能性の確保
【資料2】指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等の改正等に関する事項について(案)
【資料3】多床室の室料負担
【資料4】複合型サービス(訪問介護と通所介護の組合せ)
【資料5】その他(基準費用額、総合マネジメント体制強化加算、終末期の薬学管理、定期巡回・随時対応型訪問介護看護
  ○参考資料
【参考資料】指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等の改正等に関する事項について(案)
この審議についての「介護保険ニュース#7」

資料1、資料2で示された内容を抜粋 
1.訪問系サービス
(1)訪問リハビリテーション 
  ➀入院中に医療機関が作成したリハビリテーション計画書の入手及び把握の義務化
  ② 訪問リハビリテーション事業所に係るみなし指定
(2)居宅療養管理指導
  ○ 経過措置期間の延長

2.通所系サービス
(1)通所リハビリテーション  
  ① 入院時に医療機関が作成したリハビリテーション計画書の入手及び把握の義務
  ② みなし指定を受けた通所リハビリテーション事業所の人員配置基準の緩和

3.短期入所系サービス
(1)短期入所系サービス共通
  ○ ユニットケアの質の向上のための体制の確保

4.多機能系サービス
(1)(看護)小規模多機能型居宅介護
  ○ 管理者の兼務
(2)看護小規模多機能型居宅介護
 ○ サービス内容の明確化

5.福祉用具貸与・特定福祉用具販売
(1)福祉用具貸与・特定福祉用具販売共通
  ○ 選択制の対象福祉用具の提供に係る利用者等への説明及び提案(※1)
(2)福祉用具貸与
  ① 貸与後におけるモニタリングの実施時期等の明確化
  ② モニタリング結果の記録及び介護支援専門員への交付
  ③ 選択制の対象福祉用具を貸与した後の貸与継続の必要性の検討
(3)特定福祉用具販売
  ① 選択制の対象福祉用具に係る計画の達成状況の確認
  ② 選択制の対象福祉用具に係る販売後のメンテナンス

6.居宅介護支援・介護予防支援
 ① 公正中立性の確保のための取組の見直し
  ② 指定居宅サービス事業者等との連携によるモニタリング(※2)
  ③ ケアマネジャー1人当たりの取扱件数
  ④ 介護予防支援の円滑な実施

7.居住系サービス
(1)特定施設入居者生活介護・地域密着型特定施設入居者生活介護
  ○ 生産性向上に先進的に取り組む特定施設に係る人員配置基準の特例的な柔軟化(※3)
(2) 特定施設入居者生活介護
 ○ 口腔衛生管理の強化
(3) 居住系サービス共通(特定施設入居者生活介護・地域密着型特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護)
  ① 協力医療機関との連携体制の構築
  ② 新興感染症発生時等の対応を行う医療機関との連携

8.施設系サービス
(1)介護老人福祉施設
  ○ 小規模介護老人福祉施設の配置基準の緩和
(2)介護老人福祉施設及び地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  ○ 緊急時等における対応方法の定期的な見直しの義務付け
(3)施設系サービス共通(介護老人福祉施設、地域密着型老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設及び介護医療院)
  ① ユニットケアの質の向上のための体制の確保
  ② 協力医療機関との連携体制の構築
  ③ 新興感染症発生時等の対応を行う医療機関との連携

9.短期入所系サービス・多機能系サービス・居住系サービス・施設系サービス共通
(1)介護現場の生産性の向上
  ○ 利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会設置の義務付け

10.全サービス共通
(1)「書面掲示」規制の見直し
(2)管理者の兼務範囲の明確化
(3)身体的拘束等の適正化の推進

【鎌田松代代表理事による意見及び質問】(囲み内、下線は脚注用)
まず5の福祉用具対応特定福祉用具販売のところの(1)の選択性のところの部分(※1)ですけど、利用者等への説明および提案のところです。どうしてもその業者の方とかそれから、ケアマネさんが言ったりしたときに、十分に利用者が自分の思いとかを話せるような、そういう環境作りを行った上でというところで、行っていただきたいというふうに思います。利用者等に対して十分説明することを義務づけるというこの十分の意味のところをもう少し明確にしていただきたいというふうに思います。どうしても業者さんとかに言われると、なかなか利用者が自分の思いを言えないということがあるかなというふうに思っています。  6の居宅介護支援・介護予防支援のところの②のところ(※2)です。テレビ電話等を活用したモニタリングっていうところと、まずテレビ電話等を介してというところには時期尚早ではないかっていう形での反対をいたします。その次の訪問の回数、テレビ電話を使うと少なくともふた月に1回、介護予防のときは6ヶ月に1回は利用者宅を訪問するという少なくともっていう文言がありますけど、そういう一人暮らしや高齢夫婦世帯の場合、月1回の訪問が2月に1回になり、次回訪問までの期間が延長されることになります。次の訪問までの間の利用者や介護家族から連絡するのはよほどの事態に発展した場合と推測します。毎月に1回の訪問があることで、ケアマネジャーが異変の予兆を専門的な観点から、在宅生活の状況アセスメントとしていることで悪化の予防しています。話すことで悩みや不安を話し、精神的な安定ができています。このケアマネジャーさんだったから介護のある人生を自分らしくいくことができたという介護者もいます。ケアマネの人材不足、業務負担軽減は喫緊の課題です。そこは同意見です。これケアマネさんから聞いたお話ですけれども、業務負担のために2月に1回の訪問にすれば業務負担軽減になるというのはないかという思考には誤りがあります。業務負担軽減をすべきは「そこはないですよ」ということです。ひと月に1回どころか二、三回訪問しなければならない利用者もいる中で、訪問回数減とすると、ケアマネジメント自体どころか、その方のケア全体が大きく後退してしまいます。なぜなら要介護者・要支援者の状態変化は訪問のときにしかわかりません。テレビ電話で何がわかるのでしょう。そもそも使える方がどれだけいるのかも疑問です。微妙な表情や匂いや、食事はとれているか、身なりに変化はないか、冷蔵庫やに変化はないか、変な業者に引っかかってないかなど、認知症の症状の変化、発見のほんの一部です。削減すべきは業務を先にやることがあります。整えるべき書類の多さ、更新研修の有無、サービス開始前の担当者会議の義務などです。まずそこの負担軽減を図るべきではというふうに考えます。それから少なくともの言葉が気になります。最低限が2月に1回、半年で良いというこの言葉により、なってしまうとも受け止めてしまいました。このケアマネさんからの声は私達の家族の声でもあるというふうに、この内容には反対です。

 認知症の人と家族の会・鎌田松代代表理事は特定福祉用具販売を実施する中で、「利用者に十分な説明を行った上で」の十分な説明という文言が曖昧であり明確にするよう求めました。また、ケアマネジャーの義務になっている「月1回」の「ケアプラン」のモニタリングをテレビ電話などを用いて月1回行えば、要介護の利用者への訪問は2カ月に1回で、要支援者への訪問は6カ月に1回で可とする提案に対し、反対しました。多忙なケアマネジャーの業務ですが、自宅などへの訪問は利用者の状態や変化を把握するためには非常に重要な業務であり認知症の状態変化は2カ月に1回では足らないことは明らかだと思います。ケアマネジャーが五感を駆使して利用者の変化を察知しています。テレビ電話越しには五感は使えません。そもそもテレビ電話等の機器を使用できる利用者がどのくらいいるのでしょうか。ケアマネジャーはケア全体の司令塔です。そのケアマネジャーの人材不足は介護職員同様であり今後もなり手不足は止まりそうにありません。訪問回数を減らす前に手続きや書類、ケアマネ更新研修など減らせる業務があると思います。ちなみに、この件に関した他の委員からの反対意見はありませんでした。

【資料2より該当部分を抜粋】
(※3)○ 生産性向上に先進的に取り組む特定施設に係る人員配置基準の特例的な柔軟化 テクノロジーの活用等により介護サービスの質の向上及び職員の負担軽減を推進する観点から、利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会において、生産性向上の取組に当たっての必要な安全対策について検討した上で、見守り機器等の複数のテクノロジーの活用、職員間の適切な役割分担等の取組により、介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減が行われている指定特定施設に係る当該指定特定施設ごとに置くべき看護職員及び介護職員の合計数について、「常勤換算方法で、要介護者である利用者の数が3(要支援者の場合は10)又はその端数を増すごとに1以上であること」を「常勤換算方法で、要介護者である利用者の数が3(要支援者の場合は10)又はその端数を増すごとに0.9以上であること」とすることとする。

【鎌田松代代表理事による意見及び質問】(囲み内、下線は脚注用)
居住系サービスの生産性向上に先進的に取り組む特定施設のところですけれども(※3)、実証で確認されたもののみ運用の中で、運用をちゃんと義務付けてやるということですけれども、そのあたりがやっぱり今回議論の中で出されたデータとかがやっぱり私達利用者にとっては納得のいくものではない。ましてやそのデザインとかそれから江澤委員とか専門職の方々からもそういうお声が出てきている中で、こういうふうな私はやっぱり見切り発車ではないかというふうに思います。安全にちゃんとできる施設のみにやっていくっていうことですけれども、そこが本当にどういう形でされるのかっていうところの部分がなかなか見えないことにみんなが反対している。ほとんどが反対している中で、どこまでの方が賛成したらいいのかっていうところでは、あの本当に見切り発車だなと思って私は納得できないです、反対です。

【他の委員からの意見メモ】
<小林司氏 日本労働組合総連総合政策推進局生活福祉局長>
生産性向上に先進的に取り組む特定施設における人員配置基準の特例的な柔軟化については、ケアの質と安全性の向上に繋がるよう、配置基準を緩和する案は控えるべき。

<田母神裕美氏 日本看護協会常任理事>
ケアの現場におきまして、介護ロボットで根本的に代替が難しい業務が多い状況。示しいただいたデータにおきましては、事後の人員配置において、緩やかな基準ということが検証されたという事業所は非常に少なかったということで、多くの事業所はあの3対1の以内のデータであったかと思う。人員配置基準の緩和ということは、データにおいてもエビデンスとして乏しいのではないかと思うのでこれについては反対。

<江澤和彦氏 日本医師会常任理事>
現在全国平均の特定施設の配置は2.5対1、平均要介護度は2.7に対し実証施設の平均要介護度は全国平均よりは軽い施設が多かった。それから医療的ケアもどうだったのかがちょっとよくわからない状況であり、ここは本当にこういったことが利用者に対して支障がないのかどうかまだまだ検証が足りないと思っている。見切り発車はあまりよろしくないので、いきなり拡大するっていうのは現時点では難しいと思う。

資料3 多床室の室料負担について(※4) 老人保健課長からの説明 
 介護医療院につきましては、介護保険法上、日常生活上の世話を行う長期療養生活施設であり、ターミナルを含め、利用者に必要な医療も提供されてございます。また実態として死亡対象が多く、事実上の生活の場として選択されておりますことから、在宅でサービスを受ける方との負担の均衡を図るため、利用者の負担能力も考慮した上で、一定の所得を有する多床室の入所者の方から室料負担を求めることとしてはどうか。介護老人保健施設につきましては、介護保険法上、日常生活上の世話を行う施設であるものの、在宅復帰および在宅療養支援を行う施設であり、実態として死亡退所が少ないといった点が、介護医療院や介護老人福祉施設とは異なってございます。ただし、療養型およびその他型の介護老人保健施設につきましては、介護保険法上日常生活上の世話を行う施設であり、実態として死亡退所が多く、事実上の生活の場として選択をされておりますことから、在宅でサービスを受ける方との負担の均衡を図るため、利用者の負担能力も考慮した上で、一定の所得を有する多床室の入所者の方から室料負担を求めることとしてはどうか。低所得者に配慮いたしまして、利用者負担第1から第3段階の方については補足給付により利用者負担を増加させない。頻繁なこの累計の変更がないように、一定期間の実績をもって、3年間の室料負担を求める・求めないの判断を行うこうした形としてはどうか。

【鎌田松代代表理事による意見及び質問】(囲み内、下線は脚注用)
 多床室の室料負担について(※4)ですけれども、今回の案には反対です。負担する根拠として日常生活上の世話、それから死亡退所が多いということですけれども、老健で死亡退所が多いというのは老健はそもそも通過施設であったわけですけれども、そこが通過施設でなく長くいなければいけないことに問題があるのではないか。在宅介護が限界になってきて次の場所にも行けなくって長いこといるわけなのです。そこに長くいるからというだけでこの根拠として室料を取っていかれるっていうのは、いかがなものかと思います。それから床面積の問題ですが、日常生活の世話っていうところは、病院の中でもどこでも自立した生活ができないものに対しては行われているものですし、そこに生活の場としての床面積がもうベッドと車椅子で精一杯のところで生活の場としての潤いのあるものではないと思います。それを生活上の世話と、死亡退所が多いというところでの根拠で室料を取っていくっていうことはいかがなものなのかと思います。床面積がこのように狭い中ではやっぱり納得はいかないもので、一定の所得を有する、多床室の入所者から室料を求めることはどうかというような理由も含めて、詭弁のようにしか思えてなりません。反対いたします。

【他の委員からの意見メモ】
<田中志子氏 日本慢性期医療協会常任理事>
 以前からお話しているように、以下の点を根拠に賛同できないことを強く表明いたします。初めに、ご利用者の立場を考えて、多床室で室料をご負担いただくには、カーテンや仕切り家具で区切られただけの空間で、特養の多床室とは異なり、わずか6.4平米から8平米という狭い面積の空間であり、部屋とみなせるものではなく、倫理的にも室料としてご負担していただくにはふさわしくない生活環境であると考えます。元々特養は措置の時代から、終のすみかとして住まいの役割を担ってまいりました。このことで、平成27年度に室料の議論が進められ、違いと経緯をこの分科会でも共有するべきではないかと考えます。そもそも利用者負担が増えることについて、あまりにも性急な議論の進め方であり、到底国民の皆様に理解を得られるとは考えられません。前回以前に示されたように、住民票は自宅にあることが調査からも明らかで、ホテルコストが二重負担になる。また、介護医療院でも亡くなる方の割合は約半数にしかならず、ご指摘の類型の老健であっても、3割の方は死亡以外となっています。また、このような進め方で、仮に利用者負担増が決定したとして、現状から何らサービスが変わらない状況の中で、どのように説明をしたら、室料負担増をご利用者やご家族にご納得いただけるのか、全く想像もつきません。国はどう説明させるおつもりなのかと不思議でなりません。もっと精緻な調査を行い、しっかりとした話し合いをし、パブコメを含めて広く国民の意見も聞くべきではないでしょうか?またご指摘のように、看取りの場でもございますが、老健も介護医療院も設備要件に、調剤所を初め、医療設備を求めており、実際に9ページにあるように、喀痰吸引やインスリン注射などの医療行為が常態的に行われ、加えて、老健の施設長は医師であり、アスタリスクにあるように、介護医療院にも、常に医師がいます。言うなれば、生活の場であるとともに、紛れもない医療の場でもあります。実際にこれら医療行為が伴うことで、特養を始め他の施設で対処できない利用者の介護保険を伴った医療の最後の砦でもあります。これらの重要ないくつもの理由から、生活の場として室料をとることには断固反対いたします。

<東憲太郎氏 全国老人保健施設協会会長>
 介護保険施設の概要ということで介護保険法のものが示されております。これは何度もこの分科会で申し上げてきましたが、特養や医療院と違いまして老健施設のみが生活施設ではなく、在宅復帰療養支援施設と明示をされております。今回、老健施設の一部にも室料負担を求めることが提案されておりますが、大変遺憾と言わざるをえません。介護保険上の位置づけとして、生活施設じゃないこと。また、他の委員からの発言もありましたように、そもそも室料負担を求められるような生活のスペース様式ではないことから、老健施設の対象物への室料負担には反対です。

<江澤和彦氏 日本医師会常任理事>

国民の感覚からもかけ離れたものであって、もう論外であるというふうに思っています。その中で、例えば介護医療院におきましては、1型と2型がございます。このうち1型運営している介護医療院が大半でございます。1型の要件はそこにありますように、喀痰吸引、経管栄養などが占める実施されたものが50%以上あるいはその他にその下にありますようにターミナルケア等の要件があります。従いまして、介護医療院の入所者の大半は、経管栄養、喀痰吸引等施されてターミナルケアが実施されているということで、それを一般の国民の方が生活の場と感ずるとはとても思えないというふうに思っています。また、介護療養病床の廃止が来年3月末に迫っている中で、介護療養から介護医療院に移行したときに、また利用者の負担が増えるということであれば、なかなかこれも移行にあたって支障になるというふうに考えています。4人部屋の1人当たりの床面積、介護医療院が6.4平米以上、老健施設が8平米以上ということで、その中でカーテンで仕切る程度のプライバシーということで、到底利用者の納得は得られるものではないですし、我々も職員としても利用者にとって説明がつかないものであります。また一方で負担という面から考えますと、今回の議論の中でも所得に応じた保険料負担の増額、それから2割負担者の拡大、それからこの多床室の室料負担という三重苦の検討をしなくてはいけないという状況にもなっているわけであります。でもその中で介護医療院のほぼ全ては医療法人立であって、それから老健の4分の3の医療法人立であって、社会福祉法人と異なって利用者負担の減免もできないわけですから、その種の負担はそのままその利用者の負担増になるわけであります。以前の当分科会で示された収入支出モデルにおいても、多くの方がサービス料が厳しいというものが示されたわけであります。したがいまして、今回提案にあります4段階以上の方においても負担ができない、負担が不可能である方が確実にいらっしゃるということでありますので、包摂的社会の観点からいくと1人でも社保の社会から抜け落ちちゃいけない、地域共生社会の実現というものを、今一度照らし合わせて検討することが必要であるというふうに思います。従いましてこの多床室の室料負担は、負担の面、あるいは一般的な国民感覚からしても、到底受けられるものでないですし、一部の利用者においては大変痛みが大きすぎるものでございますので即刻見直すべきというふうに思っています。 こういった多床室の室料負担については断固反対ということは申し上げたいと思います。


資料4、複合型サービスについて 認知症施策地域介護推進課長の対応案
訪問介護と通所介護を組み合わせた複合型サービスの創設につきまして介護給付費分科会における議論を踏まえまして、より効果的かつ効率的なサービスのあり方について、実証的な事業実施とその影響分析を含めましてさらに検討を始めることとしてはどうか。

【鎌田松代代表理事による意見及び質問】(囲み内、下線は脚注用)
複合型サービスです。複合型サービスは来年度からの実施はなく引き続き検証を進めるということで大変に安堵しております。少しちょっと説明でびっくりしたのは実証もされていなかった机上の空論と申し上げてはなんですけれども、びっくりしている次第です。人材の確保という面においても、それがほとんどその実証とか現場の状況っていうところの部分では、データとか事業者へのヒアリングのみで作り込まれたものであったと私は今回の説明で思いましたし、私達にとって大変大事である一番の楽しみ、利用している家族にとって一番の楽しみである在宅の生活を維持できる、訪問介護がこのような形で回数制限もあるような包括報酬や、馴染んでいたデイサービスが地域密着事業になる、利用できなくなるなど、困ったことになると思っておりました。引き続き実証検証をしていただいて、本当にこれが人材確保の面からも利用者にとっても有益なものであるのかっていうことはぜひ進めていただきたいと思います。
質問:鎌田代表理事
今日の課題である訪問介護の人材確保での案ということですが、実証的な事業実施とは具体的にはどのようなことをしていかれるのでしょうか?また、影響分析には、人材確保に有効なのかどうかの項目を入れるべきと考えます。ただし、人材不足が著しいホームヘルパーの確保について、これ以外での対応策がないのはなぜでしょうか?また、人材を確保するために、訪問介護での非常勤の時給の給与の引き上げ、移動や待機時間の保障、労働内容についての相談支援体制の整備など、ホームヘルパーの待遇を改善する方策を考える。具体的な案などについてはいかがお考えでしょうか?

回答メモ:認知症施策地域介護推進課長
 まず実証的な事業実施の今後の内容でございます。今回提案させていただいたところで、今後、具体的な制度設計についてはまた考えてまいりたいというふうに思っておりますけれども、過去、小規模多機能型居宅介護等や小多機看多機等の実施の際にも行った実証実施というものを少し参考に今後検討させていただきたいというふうに考えている。また、このご提案の代わりに訪問介護全体としてどのように対処していくのかというようなご質問いただいた。今回、この給付費分科会の中での検討事項として一番大きなものは当然処遇改善というものをご提案し、それを含めました訪問介護全体の待遇改善というものは、この改定全体の中で検討していくべきものというふうに考える。この複合型サービスの創設の部分については実証実施で進めさせていきたいというご提案です。

【他の委員からの意見メモ】
<東憲太郎氏 全国老人保健施設協会会長>
 基本的に賛成。訪問介護の人材不足という課題があり、さらにコロナ禍において、訪問介護の重要性がさらに認識され、訪問と通所の組み合わせ、人材の交流の有用性が指摘され、議論されてきたものと承知をしております。今回、地域密着型サービスによる通所介護と訪問介護の複合型サービスは見送られ、今後さらに様々な検討を深めることとされましたが、その際、既存の通所介護、訪問介護事業所において、人員や設備基準を緩和することも検討すべきと考えます。一般の通所介護、訪問介護事業所と、集合住宅における事業性については明確に区別して検討していくべきだと考えます。

<古谷忠之氏 全国老人福祉施設協議会参事>
 検討を深める対応案には賛成。複合型サービスに関しては、現状のサービス事業所の活用をすることで人材の有効活用や柔軟な対応による質の高いサービス提供が期待できると考えておりますので、実証事業等を通して適切なサービス提供、健全な運営が維持できるような基準と報酬を検討してほしい。

<及川ゆりこ氏 日本介護福祉士会会長>
 丁寧な検証・検討を行うなどの慎重な対応をお願いしたいと思います。

<稲葉雅之氏 民間介護事業推進委員会代表委員>
 人材不足の深刻化を背景として、柔軟なサービス提供によるケアの質の向上や、家族負担の軽減に資するように、既存資源等を活用した複合的な在宅サービスの整備を進めていくという方針のもとで検討されてきたというのがそもそもの出発点。より効果的かつ効率的なサービスのあり方について、実証的な事業実施とその営業影響分析などさらに検討を進める、現時点において賢明な判断であると評価をいたします。

(尚、論点【資料5総合マネジメント体制強化加算の見直しについて、基準費用額について、薬学管理居宅療養管理指導について、定期巡回随時対応型訪問介護看護の関係の訪問看護関連加算の取り扱いについて】は省略します。)

 以上の様に、第234回介護給付費分科会では非常に重要な論点に於いて最終局面を迎えています。記載の通り「訪問介護と通所介護の複合型サービス」は2024年度は見送りとなりましたが、介護医療院、老健の多床室室料負担は反対意見も多いところですが結論は未だ出ておりません。まさに大詰めを迎えている介護給付費分科会。次回以降も最終結論に向け審議は続きます。

 最後に、このレポートが、審議の全てをお伝えするものになりえないことをご理解いただき、今回のテーマを含め、取り上げていない問題にも、意見・質問がございましたらお寄せください。

(まとめ 文責  介護保険社会保障専門委員会 和田 誠)

 

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