介護保険・社会保障専門委員会

はじめに~第8期報酬改定の審議本格化~

第176回厚生労働省「社会保障審議会介護給付費分科会」(分科会)は3月16日に「ベルサール九段」(東京都千代田区)で午前10時から行われました。

議題は(1)令和3年度介護報酬改定に向けた今後の検討の進め方について、でした。当レポート#12でお伝えした、2月21日の「介護保険部会」で決定した「基本指針」* に基づいて、この「分科会」が審議していきます。

*「基本指針」は、介護保険法で、『厚生労働大臣は地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律に規定する総合確保方針に即して、介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針を定めること』とされています。現在の基本指針は平成30年3月13日厚生労働省告示第57号として出された告示です。  新型コロナウィルスへの様々な自粛対応の一つとして、今回「随行者」は一人に制限され、一般傍聴は中止での開催でした。

「制度の持続可能性」はやはり負担増?と裏読みする

配布資料にある「介護報酬改定における主な論点(案)について」によれば論点は

①地域包括システムの推進②自立支援・重度化防止の推進③介護人材の確保・介護現場の革新④制度の安定性・持続可能性の確保、の四つが並べられています。

前回「平成30年度報酬改定」時の論点は①地域包括ケアシステムの推進②自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現③多様な人材の確保と生産性の向上④介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保

①から③までは表現の違いだけで中身は同じだと思います。唯一④は、今期では「介護サービスの適正化・重点化を通じ」て「制度の安定性・持続可能性の確保」する、としているのに来期はその前提条件を無くしました。「介護サービスの適正化・重点化」とは、「介護サービスの給付制限」とほぼ同じ意味です。この間の介護保険部会で政府が熱望してきた「負担増」との合わせ技が隠されている、これが前提条件を無くした意味だと思います。

「自立支援」とは「要介護度」を下げる事!?

この日の審議は、示された「論点」について、委員それぞれの問題意識を表明する形で進められました。議論の一つに、「インセンティブ交付金」(保険者機能強化推進交付金200億円)と新設された「介護保険・保険者努力支援交付金」(200億円)をめぐるものがあります。数値化した要介護度の維持や「改善」の結果をより重視して加算の増額を求める。利用者の自立支援と尊厳保持が重要。自立度が高まることへのインセンティブが必要。一部に要介護度が上がることを喜ぶ現象がある、下がると世話してもらえない事があるようだ。加算を受けやすい利用者を選別する危惧も指摘されました。この点に関して、議論の基となる「基本指針」(介護保険部会で決定)の「概要」では、『それぞれ評価指標の達成状況(評価指標の総合得点)に応じて、 交付金を交付する』とされています。「要介護認定の変化率」も評価指標になっています。認定率が下がるという事は「介護予防」の取組効果があった、という理屈のようですが、逆に「予防に努力しなかったから要介護になった」という風潮が懸念されます。「予防」の努力は否定しませんが、要介護状態になる主な原因は「加齢」だと思いますし、そのための介護保険制度だと思います。評価指標の中身も大事ですが、オシリヲタタクような政策に腐心して目的を見失う事の方が問題です。

介護人材の確保には発想の工夫と深化を

検討事項③の介護人材確保等に関しては、「個別の事業所単位に留まらず、地域全体でサービスの質、仕事の質など検討し制度の持続性・安定性を図り介護提供の体制化を考えるべき」「人材の確保でICTやセンサーでの見守り、介護補助者、外国人労働者などが出ているが、財政的制約もあり、これまで違う発想で深化を」という意見があり、「加減算など複雑化した報酬体系の見直し・簡素化が必要」という本質的な意見も出されました。

鎌田松代事務局長の質問と発言要旨

1「介護関連データベースの構成」について

データベース構築の目的は?

データペースについては、現在、通常国会に提出されている介護保険法改正案にも盛り込まれていますが、介護関連データベースを構築する目的はなにかということが、いまひとつ、よくわかりません。「公益性を有する研究」というのも、なにを指すのかわかりません。ビッグデータの情報を外部に提供することによって、誰に、どのようなメリットがあると想定されているのか、教えてください。

会議の場での事務局回答要旨

制度の改善や研究を目的としている。整理して示す様にしていく。

情報提供を拒むことはできるのか?

また、63ページには「介護分野のデータ活用の環境整備」として、「厚生労働大臣は、情報を求めることができると規定する」とありますが、利用者が情報の提供を拒むことができるのでしょうか?あるいは、情報の提供を拒んだ場合、介護保険制度にかかわる不利益が生じるのでしょうか?個人情報の保護という大切な問題も含んでいると思いますので、ご回答をお願いいたします。

会議の場での事務局回答要旨

法制度の中でのデータベース化である。情報は匿名化しており、個人が特定されることはない。またこの情報での個人に不利益があることもない

2「介護報酬改定における主な論点(案)」について

「生活の持続の可能性」を視野においた中での、「制度の持続可能性」追求をが多い 

 私たち、「家族の会」は介護保険制度が創設された当初は介護が社会化されると大変に喜びました。その後、認知症ケアにおいても加算制度もとりながらでしたが、ケアの充実に向けた取組で向上が図られてきました。しかし、高齢者は増加し、介護保険制度利用者が増えるに従い、この制度は「負担増・給付削減」の流れが年を追うごとに大きくなってきました。「制度の持続可能性」が声高に叫ばれています。制度が持続しても、私たちの生活が立ちゆかないような給付の削減と負担増となれば、元も子もなくなります。「生活の持続の可能性」も視野においた議論や検討をお願いします。

「自立支援とは何か」「重度化防止とは何か」分科会での共通認識づくりを

また、来年度の介護報酬に向けて、一番下に4項目があがっています。このなかで2番に「自立支援・重度化防止の推進」とあります。

グループホームに入居している義母は骨折し、回復期病棟でリハビリをしましたが、骨折前のような歩行ができるまでにはなりませんでした。車いす移動で、自立とはなっていません。認知症は進行性の疾患で、出来ないことが増え、根治治療法はない疾患です。また長生きすれば、認知症になる確率は高くなります。

今回の介護報酬改定における主な論点(案)の「自立支援」あるいは「重度化防止」とはなにかという議論は過去にもあったと思います。「自立支援」とは介護保険のお世話にならない、「介護保険からの卒業」という言葉もありました。つまり給付対象ではなくなることだという意見があります。また、「重度化防止」とはよくなることだという意見もあります。認知症の人にとっては厳しい言葉です。 今回、次期の介護報酬の見直しを議論するにあたり、「自立支援」とはなにか、「重度化防止」とはなにか、介護給付費分科会の委員のみなさんの共通認識がないと、議論をすすめることができないのではないかと思います。どうか、きちんとした定義のもとで、議論をすすめていただきたいとお願いします。

秋までの動き方が大事に

厚生労働省の「介護報酬改定のスケジュール表」によると、3月の「主な論点の議論」「業者団体ヒヤリング」のあと空欄で、「秋頃 具体的な方向性の議論」「12月 基本的な考え方の整理・とりまとめ」「年明け 諮問・答申」のあと「第8期介護保険事業計画」に入れ込む、という段取りのようです。利用者へのヒヤリングは予定されていないのでしょうか。

いずれにしても、介護保険部会で論議され、先送りにされた「ケアプラン有料化」などの「検討事項」に手をつけずに進められるのかを注視する事と、今回の改定が介護保険制度にかかわる人たち(利用者本人や家族等そして介護サービス従事者)にとってどのような影響があるかをチェックしながら、当面秋までの間、改定論議の問題点を指摘していかなければなり ません。

次回の「給付費分科会は」

 次回の「給付費分科会」は2020年4月10日に予定されています。(まとめと文責 鎌田晴之)

リンク:厚生労働省(部会ホームページ)

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126734.html