介護保険ニュース#24~社会保障審議会介護保険部会(第128回)
社会保障審議会介護保険部会(第128回)(令和7年11月10日開催) 概要まとめ
第128回社会保障審議会介護保険部会(令和7年11月10日開催)では、主に「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等」、「地域包括ケアシステムの深化(介護予防・日常生活支援総合事業等)」、「地域包括ケアシステムの深化(高齢者向け住まい)」の3つの大きなテーマについて、現状の課題と今後の検討の方向性が議論されました。
以下に、資料に基づいた各テーマの概要をまとめます。
主な議題と内容
| 議題 | 内容概要 |
| 1.人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等 | 1. 地域分類と中山間・人口減少地域への対応(論点①〜④) 2040年に向けた高齢化と人口減少の地域差に対応するため、全国を**「中山間・人口減少地域」「大都市部」「一般市等」の3類型**に分類し、対応策を構築します。特にサービス需要が減少する中山間・人口減少地域に対して、サービス維持を目的とした特例措置が提案されて1. 地域分類と中山間・人口減少地域への対応(論点①〜④) 2040年に向けた高齢化と人口減少の地域差に対応するため、全国を**「中山間・人口減少地域」「大都市部」「一般市等」の3類型**に分類し、対応策を構築します。特にサービス需要が減少する中山間・人口減少地域に対して、サービス維持を目的とした特例措置が提案されています。 • サービス提供体制の維持(論点②): 人材確保が困難な中山間・人口減少地域において、サービスの維持・確保がやむを得ない場合に限り、特例介護サービスに新たな類型を設けることが検討されています。この類型では、管理職や専門職の常勤・専従要件、夜勤要件の緩和を、ICT活用や事業所間連携を前提に実施することが考えられています。また、特例介護サービスの対象を居宅サービス等だけでなく、地域密着型サービスや施設サービスにも拡大する案があります。 • 包括的な評価の仕組み(論点③): 訪問系サービスを中心に、季節変動や長距離移動による経営不安定を解消するため、現行の出来高報酬に加え、**月単位の定額報酬(包括的な評価の仕組み)**を新たな特例サービスとして選択可能とする案が提案されています。これにより、経営の安定化や人材確保(常勤化)の促進が期待されますが、利用者間の公平性やモラルハザードの抑制には十分配慮が必要です。 • 介護サービスを事業として実施する仕組み(論点④): 特例サービスを利用してもサービス維持が困難な地域のため、市町村が介護保険財源を活用して、サービスを**給付に代わる新たな事業(新類型)**として柔軟に実施できる仕組みの創設が検討されています。これにより、事業の対価として事業費(委託費)が支払われ、収入の予見性が高まり経営安定につながるとされています。 2. 大都市部と制度の効率化・精緻化(論点⑦、⑧) • 調整交付金の在り方(論点⑦): 保険者の責めによらない保険料水準格差を平準化する普通調整交付金について、2040年に向けた人口動態の変化をより精緻に反映させるため、現行の3区分(65〜74歳、75〜84歳、85歳以上)から、5歳刻みの7区分に変更することが提案されています。 • 多様なニーズに対応したサービス基盤の整備(論点⑧): サービス需要が急増する大都市部において、24時間365日の見守りを前提とした効率的なサービス提供のあり方が検討されています。その一環として、機能が類似・重複しているとの指摘があった夜間対応型訪問介護を廃止し、定期巡回・随時対応型訪問介護看護に統合することが検討されています。夜間対応型訪問介護の利用者の多くが日中の訪問介護を併用していること、また多くの事業者が定期巡回サービスも運営していることから、統合は有効と考えられていますいます。 |
| 2.地域包括ケアシステムの深化(介護予防・日常生活支援総合事業等) | 1. 総合事業の充実と多様な主体との共創 総合事業を地域づくりの基盤と位置づけ、高齢者の尊厳と自立した日常生活を継続できるよう、サービスの充実と多様な主体の参画を推進します。 • サービス利用の弾力化: 高齢者の選択肢を広げるため、多様なサービス・活動(サービスA)の活動例を提示し、継続利用要介護者(介護給付を受ける前から総合事業を利用している要介護者)もサービスAの利用を可能にするよう弾力化しました。 • 多様な主体参画の推進: NPOや地縁組織などの参画を促すため、市町村が総合事業の対象者以外の参加者への活動について、対象経費の一部を定額で補助できる枠組みを導入しました。 • 支援体制の強化: 地域住⺠や民間企業を含む多様な主体との連携を深めるため、生活支援コーディネーター(SC)が中心となり、タウンミーティング等から事業実装までを支援する**「住⺠参画・官⺠連携推進事業」を創設しました。また、多様な主体が交流し、高齢者を支える生活支援の取組を共創する基盤として、「生活支援共創プラットフォーム」**を国と都道府県で構築・運用します。 • 効果検証の具体化: 総合事業の評価(分析・評価は市町村の努力義務)を推進するため、高齢者の視点や保険者の視点に立った評価指標の例が提示されています。また、介護予防効果検証のため、サービス・活動C(短期集中予防サービス)の実施状況等を介護レセプトとして収集する新たな仕組みの構築が検討されています。 2. 介護予防の推進と地域特性への対応 高齢者の社会参加と自立した日常生活の促進のため、介護予防の取組が推進されます。 • 「通いの場」の強化: 高齢者の社会参加を促す**住⺠主体の「通いの場」**の取組を支援し、地域共生社会の実現につなげます。 • 多機能拠点の整備: 特に中山間・人口減少地域を中心に、高齢者の介護予防を主軸とし、障害、子育て、生活困窮分野の支援も一体的に実施する**「介護予防・地域ささえあいサポート拠点」**の整備・運営を推進するためのモデル事業が実施されています。 • 伴走的支援: 中山間・人口減少地域など、総合事業の推進に課題を抱える市町村に対しては、都道府県による伴走的支援がより重要であるとされています。 3. 認知症施策の推進と家族介護者支援 認知症基本法(令和6年1月施行)に基づき、「認知症の人本人の声を尊重し、**『新しい認知症観』**に基づいて施策を推進する」ことが基本理念です。 • 計画策定と本人参画: 都道府県・市町村に対し、基本法を踏まえ、認知症の人本人の参画・参加を推進しながら認知症施策推進計画を策定すること(努力義務)が求められています。 • 診断後支援の強化: 認知症の人が診断直後から抱える不安を軽減するため、ピアサポート活動や本人ミーティングといった診断後支援の枠組みを、モデル実施も含め段階的に構築していくことが検討されています。 • 家族介護者への支援: 複雑化・複合化した課題に対応するため、また「新たな就職氷河期世代等支援プログラム」における仕事と介護の両立支援を踏まえ、家族介護者支援に係る相談員の配置や、家族の働き方に配慮した相談体制の整備など、家族介護者支援事業の再編・充実が検討されています。 |
3.地域包括ケアシステムの深化(高齢者向け住まい) | 有料老人ホームの規制強化と質の確保(論点①) 事前規制の導入: 入居者保護と安全性の確保のため、特に中重度の要介護者や医療ケア、認知症の方を対象とする有料老人ホームについて、登録制といった事前規制の導入を検討し、人員・施設・運営等に関する一定の基準を法令上設ける必要があります。 指導監督の強化: 事業運営の質を維持するため、更新制の導入や、不正行為で行政処分を受けた事業者に対しては一定期間の開設制限を検討します。 情報開示の義務化: 全ての有料老人ホームに対し、契約書に入居対象者(要介護度、医療の必要性、看取りの可否など)を明記し、公表するとともに、自治体に提出する事業計画への記載を義務付ける必要があります。 囲い込み対策と透明性の向上(論点①, ③) 契約の透明化: 入居契約と重要事項説明書について、消費者保護の観点から、契約前の書面での説明・交付を義務付ける必要があります。 ケアマネジメントの中立性確保: 「住宅型」有料老人ホームなどで見られる囲い込み(過剰サービス提供)対策として、ケアマネ事業所やケアマネジャーの独立性を担保する体制(指針の公表、研修等)を確保します。また、特定の介護サービスやケアマネ事業所の利用を契約条件とすることなどを禁止する措置を検討します。 経営の独立: 有料老人ホーム運営事業者と介護サービス等事業者が同一・関連法人の場合、両事業の会計を分離独立して公表し、収支を確認できるようにする必要があります。 紹介事業の透明化: 高額手数料などが問題となっている入居者紹介事業者について、事業者団体による届出制度を前提に、公益社団法人等が優良事業者として認定する仕組みを創設します。紹介手数料の算定方法等(月当たり家賃・管理費等の居住費用をベース)を公表・明示するよう促します。 低所得者向け住まいと住宅・福祉の連携(論点②, ③) 養護・軽費老人ホーム: 居宅生活が困難な低所得者の受け皿である養護老人ホーム・軽費老人ホームについて、認知度向上と活用促進を図ります。運営費の独自改定が進んでいない自治体に対し、都道府県による伴走的支援を強化し、経営の安定化を支援します。 住まいと生活の一体的な支援: 令和7年10月1日施行の改正住宅セーフティネット法を踏まえ、高齢者の居住安定化を図るため、自治体の住宅部局と福祉部局の連携を強化します。介護保険事業(支援)計画と「賃貸住宅供給促進計画」との調和を図り、住宅確保要配慮者が必要な介護サービスを受けられる体制を確保します。 自治体による実態把握: 市町村が介護保険事業計画を策定する際に、「住宅型」有料老人ホームやサ高住といった外付けサービスの利用実態に関する情報を把握できる仕組みを構築することが重要とされています |
| 4.その他 |
以上、第128回社会保障審議会介護保険部会(令和7年11月10日開催)の概要になります。引き続き、「認知症の人と家族の会共同代表・和田誠からの意見・質問」、「担当者からの回答」を介護保険次期時期改正の動きレポートに掲載しているのでご覧ください。



