どうするつもりか介護保険制度=「改正」の動きレポート#53
【介護給付費分科会】編
介護保険・社会保障専門委員会
志田信也
第247回社会保障審議会介護給付費分科会
~厚労省の報告に対する意見要望(志田発言)~
当会を代表し委員として出席した志田は、以下の資料4つについて厚生労働省からの説明及び報告を受け、以下の資料について意見及び要望を発言しました。

【資料1-3】(3)一部の福祉用具に係る貸与と販売の選択制の導入に関する調査研究事業(案)
【資料1-4】(4)介護現場における生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくりに資する調査研究事業(案)
【資料2】介護人材確保に向けた処遇改善等の課題
【資料3】通信機能を備えた福祉用具の取扱いについて(報告)
【資料4】科学的介護情報システム(LIFE)について(報告)
。
資料1-3 一部の福祉用具に係る貸与と販売の選択制の導入に関する調査研究事業(案)についての発言内容。
懸念事項
・自費負担の問題
福祉用具販売を選択した場合、修理や廃棄処分の費用が利用者の自費になる懸念があります。
・ケアマネジメントの欠如
福祉用具販売以外の介護給付を利用しない場合、ケアマネジメントが受けられないことも問題です。
情報提供の重要性
認定者や介護家族に選択制を説明する際には、メリットだけでなくデメリットも詳細に伝えることを必ず行ってもらいたい。そして、何よりも利用者や介護家族が正確に情報を理解することがなによりも大切です。
資料1-4 介護現場における生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくりに資する調査研究事業(案) についての発言内容
介護テクノロジーの活用状況・現在の利用状況
調査票問2「介護テクノロジーの活用状況」の「現在の利用状況」では、「現在、機器を利用していない理由」の選択項目があります。 「2.職員が使用を拒否したため」と「5.利用対象としていた利用者・家族が拒否したため」のふたつは大変重要です。
また、「機器を導入したことで効果を感じられた導入時の目的」では、「職員の身体的・精神的負担軽減」、「業務の効率化」の選択項目があります。
介護テクノロジーの活用は、まだスタートしたばかりですので、初動期のいまだからこそ、効果だけでなく、リスクを調査することが、今後のより効果的な活用につながると考えます。
これらの項目の要因については、今後のヒアリングで把握する予定とうかがっています。 介護職員や利用者・家族がなぜ、拒否したのか、そして、介護職員の負担が増加していることはないのか、負担増の原因はなにか、それらの要因がきちんと把握される調査にしていただくことを希望します。
利用者への影響
「介護テクノロジー」の導入により、事業所や介護労働者の事務負担が軽減され、離職率が低下する、あるいは人材確保につながるという効果が確認されるのは、利用者や介護家族にとっても大変歓迎すべきことです。
一方で、見守り機器など利用者への直接的なケアに使われる「介護テクノロジー」については、利用者に与える身心への影響を把握することも非常に重要だと考えます。
今回の調査では無理だとしても、今後において介護保険制度における「利用者本位」の理念にもとづき、調べていただくことを希望します。
資料3 通信機能を備えた福祉用具の取扱いについて 2021年4月1日 (報告) についての発言内容
認知症の人と家族の不安
当会「認知症の人と家族の会」が把握しているだけでも、介護家族が気づかないうちに、外に出かけた認知症の人が行方不明になり、本人も家族も大きな不安にかられるという事例は全国各地にあります。警官から「なぜ、GPS機能を装着させていなかったのか」と問われたという事例もありますが、費用面で利用を躊躇する家族もいます。
よって、「通信機能を備えた福祉用具」が給付対象になるのは、大変ありがたいと思います。
ただし、一方で、「監視されたくない」という強い拒否感を抱く認知症のご本人もいます。
その点を踏まえて、運用方法の詳細については、十分な検討が必要だと考えます。
要介護度による利用制限の撤廃
現状でも「認知症老人徘徊感知機器」は給付対象ですが、原則として「要介護2~5」が対象と制限があります。「要支援1・2」、そして「要介護1」でも、医師やケアマネジャーの意見書にもとづき、利用できるとなっています。
しかし、認知症の確定診断を受けていない方でも、外出して道に迷い、警察などのお世話になるケースはたくさんあります。そして、不幸にしてお亡くなりになる方もいます。
「認知症老人徘徊感知機器」、そして今回の「通信機能を備えた福祉用具」については、要介護度による制限を取り払い、必要な方が利用できるようにしていだたきたい。
認知症の本人や介護家族の意見の重要性
5ページに「利用者・家族等、必要に応じて福祉用具貸与事業者等が通知を受け取ることが可能」とあります。しかし、ひとり暮らしや高齢夫婦世帯の認知症の人の場合、通知を受け取ることができないケースもかなりあるでしょう。
また、通知を受け取ったとしても、その後の対応をどうするのでしょうか。
8ページには「頂いた意見を踏まえ、事務局が関係団体と協議の上で、改正通知やQ&Aの発出に向け検討する」とありますが、関係団体との協議にあたっては、ぜひ、認知症の本人や介護家族の要望や意見を織り込むため、ヒアリングなどを実施していだたくことを強く要望いたします。
資料4 科学的介護情報システム(L IFE)について(報告) についての発言内容
利用者や介護家族の理解不足
科学的介護情報システム(LIFE)、つまり、認定者の個人情報をデジタル化し、介護・医療関係者が閲覧できるという仕組みそのものを、ほとんどの利用者や介護家族、あるいは被保険者は理解していません。
わからない仕組みに加算があり、利用者負担があるという実態は、全くもって好ましくありません。
わかりやすい説明の必要性
科学的介護情報システムだけでなく、「介護情報基盤の整備」を含めた、いわゆる介護DXについて、利用者本人や介護家族にも理解できる、具体的で、わかりやすい説明をするためのしくみを検討することを希望します。
(まとめ・文責 介護保険社会保障専門委員会 志田信也)



