どうするつもりか介護保険法=次期改正の動きレポート#10

介護保険・社会保障専門委員会

今号は第88回(12月16日)第89回(12月27日)のレポート合併号です。 長くなっていますが、最後までお付き合いください。

はじめに~第8期(2022~24)改正の方向性出される~

第88回厚生労働省「社会保障審議会介護保険部会」(部会)は、12月16日に「ベルサール神田」(東京都千代田区)で午後1時から行われました。

議題は(1)地域共生 社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会(地域共生社会推進検討会)の検討状況報告 (2)「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会」取りまとめ (3)取りまとめに向けた議論、の3項目でした。主要議題は(3)で、第8期改正の方向性が示されました。

認知症の「予防」について、「偏見への配慮」を明記

議事資料として、「介護保険制度の見直しに関する意見(素案)」が用意されました。 最重要課題の「給付と負担」については、「平成 29 年の~介護保険部会における議論や、「新経済・財政再生計画 改革工程表 2018」(平成 30 年12 月 20 日経済財政諮問会議決定)等を踏まえた諸課題について検討を行った」とされ、内閣府の意向に大きく影響されている様子が伺えます。認知症施策の項には「(*予防の定義の)誤った受け止めによって新たな偏見や誤解が生じないよう、取組を進める上で配慮が必要である」と書かれています。6月に出された「認知症施策推進大綱」の「予防」の中には無かった表現です。「大綱」発表以降に、「家族の会」などの当事者団体から発信された意見を受け止めた結果でしょうか。

検討八項目の内、六項目が継続に

この日の部会に用意された、いくつかの資料の中に「資料4『制度の持続可能性確保』があります。副題が「これまでの検討と議論の整理の方向性」というものです。それぞれの項目に対する「方向性」を確認しておきます。

(1)被保険者範囲・受給者範囲¬=「引き続き検討を行うことが適当」 

(2)補足給付に関する給付の在り方¬=「所要の見直しを行ってはどうか」

(3)多床室の室料負担=「引き続き検討を行うことが適当」

(4)ケアマネジメントに関する給付の在り方=「引き続き検討を行うことが適当」

(5)軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方=「引き続き検討を行うことが適当 」

(6)高額介護サービス費=「所要の見直しを行ってはどうか」

(7)「現役並み所得」「一定以上所得」の判断基準=「引き続き検討を 行うことが適当」

(8)現金給付=この資料には記載無く、12月5日の87回部会資料で 「現金給付について、介護者の介護負担そのものが軽減されるわけではなく、介護離職が増加する可能性もあり、慎重に検討していくことが必要との意見があり、現時点で導入することは適当ではなく、『介護離職ゼロ』に向けた取組や家族支援を進めることが重要」 と書かれています。  

(2)と(6)の項目の「見直し」を提案したことになり、残りは継続審議という扱いになったわけです。「見直し」の内容は、同資料で説明されていますので、詳しくはこの「レポート」末尾のアドレスから資料を開いてください。また、後述する「緊急アピール」にも要点が書かれています。

花俣ふみ代副代表の発言要旨

事前資料は空欄のまま、なぜか内容が会議前に報道される!?

事前資料では、利用者や家族にとって、今後の介護生活に大きな影響を与える「給付と負担」について、(2)から(7)*までは「今後追記」と書かれ、空欄のままのものであった。しかし、先週、(2)の補足給付について「特養利用の一部、負担増 介護保険見直し素案 厚労省」と。(7)の「現役並み所得」「一定以上所得」の判断基準については、「介護負担拡大先送り 高齢者への影響に配慮」、「介護保険 2割・3割負担となる対象者の拡大は見送りで調整」という報道もあったが、なぜ、介護保険部会の委員に、素案の文章が示される前に、あいついでマスコミでこのような先行報道がなされるのか、仮に先行報道が常態化しているとしても、到底納得できないところである。    

(*(2)補足給付に関する給付の在り方 (3)多床室の室料負担 (4)ケアマネジメントに関する給付の在り方 (5)軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方 ⑥高額介護サービス費 ⑦「現役並み所得」「一定以上所得」の判断基準)

「素案」全体について~各文末にある結論の用語法への疑問     

文章の最後に「必要である」「重要である」という表現が多用されている。また 「適当である」という言葉もあり、「必要」と「重要」と「適当」では違いがあるの か?さらに、「留意が必要」「検討が必要」という表現もあり、これもどのように理解すべきか教えて頂きたい。

要介護認定を受けると不利益が?    

 「要介護認定を受けると、それまで受けていた総合事業のサービスの対象とならなくなる」という文章があるが、要介護認定を受けることが、総合事業のサービスの対象である人には不利益を与えているように受け取れる。私たちは、市区町村事業として実施される総合事業ではなく、認定を受けた人への個別給付を守っていただきたいとお願いしてきた。市区町村事業から、個別給付として受給権が認められているサービスに移ることが、不利益であるかのような表現には、とても違和感をある。違和感の解消にはならないが、せめて、「総合事業のサービスの対象とならなくなる」という否定的な表現ではなく、「総合事業のサービスが継続できなくなる」という表現にしていただきたい。

地域ケア会議に利用者や家族の参加保障を 「地域ケア会議の積極的な活用などケアマネジャーが専門家と相談しやすい環境の整備が重要である。介護報酬上の対応についても検討が必要である」とある。これでは、ケアマネジャーが専門家と相談して、ケアプランを決めてしまうことができるような印象を与える。ケアマネジメントのどの項目に入れることが適当かはご判断いただくとして、<u>「地域ケア会議には利用者や家族などの介護者の参加を保障することも重要である」</u>という文章を入れていただきたいという点と、さらに併せて「地域ケア会議に参加する専門家は、アドバイスしたケアプランについて利用者や家族などの介護者から、質問や疑問点が出された場合には、ケアマネジャーに任せるだけではなく、自ら説明をすることも考慮する必要がある」と追加していただきたいと思います。

被保険者の個人データ活用には説明責任の明記を

「データ利活用の推進」ですが、個人情報も取り扱う重要なデータ整備になるわ けだから、保険者である市区町村には、被保険者に対して充分な説明をする責任がある。神奈川県のデータ流出事件も大きく報道され、国民には不安が広がっている。ビッグデータの取扱いについて、充分配慮していただくとともに、被保険者に対する説明責任について明記していただきたい。

「介護離職」の実態調査を

「『介護離職ゼロ』に向けて、介護施設の整備を進めるとともに、在宅支援サービスの充実を図り、在宅限界を高めていくことが必要である」という文章で言う「在宅支援サービス」とは、在宅サービスと地域密着型サービスを指すのか?また、「介護離職ゼロ」を目指すためには、働きながら介護をしている人たちの実情を把握する必要がある。非常勤で働く人たちも含めて、介護する人たちの実態調査が必要であることを、加えていただきたい。

「医療・介護の連携」の分かりやすい説明を

介護が必要な暮らしには、医療もまた重要なわけだが、「医療・介護の連携」は利用者や介護する家族には、なかなか理解が及ばない取り組みである。総論のところでもいいが、少し説明を入れていただきたい。また、「看取りを適切に推進する観点」とあるが、「看取りを適切に推進する」という点をもう少し具体的な内容についての説明が欲しい

 「応能負担」原則を推進するのであれば、負担額1割以下もあるはず

負担の割合だが、第1号介護保険料の負担段階は、第1段階の0.3から第9段階の1.70まで、9段階が設定されている。現行でも、1割の利用料が払えず、サービスを利用していない、それどころか認定の申請をしていない人もいるはず。「応能負担」を検討するのであれば、負担能力が低い人には、1割未満の利用料の設定があってもいいのではないか。これは意見として申しあげる。

ケアマネジメントに関する給付は、10割給付の維持を

すでに制度は浸透しているという意見もあるが、介護が必要になる人、介護する家族は、常に新しく登場する。サービスを利用する入り口で、ケアマネジャーに相談支援してもらうときに、有料だから止めてしまう認定者が出ることは、避けていただきたい

要介護1と2の人は「軽度者」ではない

要介護1と2の人は「軽度者」ではないと繰り返し申し上げてきたがご理解いた だくに至らず大変残念な思いでいっぱいである。それでも、文章に表記するのであれば、せめてカギカッコをつけていただきたい!

いずれ当事者となるやもしれぬ委員の皆様には、我が事としてご理解を

介護保険部会の議論では、総合事業の基盤整備が中途なので、移すのは時期尚早 というご意見もありました。しかし、総合事業が充実したとしても、認定を受けてサービスを利用する権利を得て、個別給付を受ける権利を得た方たちを、市区町村の事業に移すことは、到底、受け入れることができません!医療と介護の連携のところで、「在宅限界を高める」という表現がありましたが、生活援助こそが「在宅の限界点」を高めるための必要不可欠なサービスです。介護離職をこれ以上増やさない、ごみ屋敷や孤立死を増やさない、そして、 介護を必要とする人や介護する家族の不安を減らす。そのためにも、生活援助の個別給付は維持していただきたいと強く要望いたします。ひたすら実態をお伝えしている利用者の立場からの発信が、的外れかどうか…そのあたりは、いずれ当事者となるやもしれぬ皆様に、我が事としてご理解いただけることに期待したいと思います!!

「補足給付」「高額介護サービス費」の見直しに反対するアピール

 認知症の人と家族の会は、この日の部会で示された「見直し案」(部会資料4『制度の持続可能性確保』の中に「考え方」として提示)に反対するアピールを、12月25日午後、厚生労働省において記者会見を開き発表しました。表題は「消費税増税の上に、さらに利用者を苦しめる介護費用の負担増は許されない  補足給付、高額介護サービス費の見直しに断固反対する緊急アピール」というものです。当会ホームページの「ホーム」画面より「提言・要望・主張」の「最近の発表内容」欄にありますので、ぜひご一読ください。

第89回介護保険部会~介護保険法改正の方向性決まる

12月27日午後2時から、「ベルサール九段」で行われました。議題は、介護保険制度の見直しに関する意見(案)について、でした。12月16日の「第88回部会」で示された「介護保険制度の見直しに関する意見(素案)」に対して出された意見を踏まえて「加筆修正」を行った「最終案」を、異論が出される中、「介護保険制度を見直す意見」として決定されました。

花俣ふみ代副代表による「修正意見」~多くが最終案に反映される

 花俣副代表は、「介護保険制度を見直す意見(案)」に対して、ポイントを絞った「修正意見」を18項目提出しました。介護保険制度改正に直結する「意見書」ですから、「見直し案」のどこに問題があるのか、その問題をどのように考えるべきか、を明確にしている「修正意見」ですので、要約せず全文を載せる事で、「改正の動き」の実像をお伝えすることになると思います。ただ、修正提案箇所のみの「原文」紹介ですので、分かりにくい場合もあると思いますが、末尾の「介護保険部会」のアドレスから「意見書」本文を参照して頂ければと思います。以下、項目を追って「修正意見」を紹介します。修正案の赤字が修正文案です。

Ⅰ 介護予防・健康づくりの推進(健康寿命の延伸)

1 一般介護予防事業等の推進  

修正案 1 :「一般介護予防事業等により、要介護認定を受けていない高齢者等を対象とする介護予防の取り組みを推進していくことが必要である。」

原文 : 「一般介護予防事業等による介護予防の取り組みを推進していくことが必要である。」

修正理由:介護保険制度では、要支援認定・要介護認定を受けていない被保険者は個別給付の対象になりません。また、地域支援事業の介護予防・日常生活支援総合事業は、要支援認定者と「基本チェックリスト」の該当者が対象です。一般介護予防事業は、認定を受けず、「基本チェックリスト」にも該当しない、いわゆる「元気高齢者」を対象とする事業だと理解しています。この理解に誤りがないのであれば、被保険者ひいては国民に、誰を対象とする事業なのか明記する必要があると考えます。

結果 :「対象を明確にすべき」という意見は取り上げられず、原文修正は行われませんでした。(鎌田)

修正案2:「いわゆる『有償ボランティア』

原文: 「有償ボランティア」 修正理由  「有償ボランティア」とは、介護保険がスタートする前、高齢者の日常生活の支援などに少額の謝礼を得て取り組む活動を指すようになった造語です。ボランティアとは対価を求めない自発的な行為を指します。ボランティア活動団体でも議論が未整理の現状で、また、介護保険部会で「有償ボランティア」の定義がはっきりしないなか、安易に有償ボランティアの呼称を使うことには慎重である必要があり、せめて、カギカッコ付きにするべきと考えます。

結果: 「いわゆる有償ボランティア」と修正されました。

2 総合事業

修正案3:「総合事業の対象者の弾力化にあたり、介護予防支援、居宅介護支援(以下、「ケアマネジメント」という)を通じて適切な事業と、個別給付の利用が担保されること」 原文 「総合事業の対象者の弾力化にあたり、居宅介護支援(以下、「ケアマネジメント」という)を通じて適切な事業の利用が担保されること」

修正理由:居宅介護支援という表記は、 要介護認定者を総合事業の対象者に弾力化するといいう意味で記述されているのだと思いますが、総合事業と個別給付の利用には認定者ひとりひとりの状況にもとづく判断が必要とされます。総合事業にのみ重点を置く表記では、被保険者あるいは国民に誤解を与えます。また、要支援認定であっても第1号訪問型事業と第1号通所型事業以外は、個別給付を利用することができます。あわせて、正しい理解をしてもらうために修正をお願いします。(下線鎌田)

結果:総合事業のサービスは、被保険者の権利としての「個別給付」とは異なるという問題の指摘は取り上げられず、修正されませんでした。(鎌田)

3 ケアマネジメント  

修正案4: 「インフォーマルサービスも盛り込まれた居宅サービス計画(以下「ケアプラン」という。)の作成を推進していくことが必要である。また、インフォーマルサービスへの信用の確保のために、国、都道府県、市町村はケアマネジャーへの情報提供など必要な支援をすることが必要である。

原文:「インフォーマルサービスも盛り込まれた居宅サービス計画(以下「ケアプラン」という。)の作成を推進していくことが必要である。」

修正理由:介護保険の指定事業所であっても、利用者や介護者は事業所の選択に迷います。インフォーマルサービス事業所ではなおさらです。インフォーマルサービスには、介護保険の指導監査も「介護サービスの情報公表制度」もありません。ケアマネジャーも推薦する判断基準に困ることがあるでしょう。一方的にケアマネジャーに委ねるのではなく、国、都道府県、市区町村の支援が必要と考えます。

結果:「インフォーマルサービスも盛り込まれた居宅サービス計画(以下「ケアプラン」という。)の作成を推進していくことが必要である。なお、インフォーマルサービスへの信用の確保のために、国、都道府県、市町村はケアマネジャーへの情報提供など必要な支援をすることが必要であるとの意見があった。」➡という表現ですが、今後の見直しでは無視できないという事でしょうか。(鎌田)

Ⅱ 保険者機能の強化(地域保険としての地域のつながりの機能・マネジメント機能の強化)

2 保険者機能強化推進交付金

修正案5 :「現場で必要な介護サービスが受けられない事態は避けることが前提となる。」

原文: 「~現場で必要な介護サービスが受けられなくならないよう配慮が必要で ある。」 

修正理由: 「受けられなくならないよう」では表現がやわらかすぎると思います。介護保険の個別給付は認定を受けた者に対する権利であり、はっきりとした表現にしていただきたいと思います。

結果:「要介護者等が必要なサービスを受けられなくならないようにすることを前提に取り組むことが必要である」と修正されました。「配慮」と「前提」では全く違うと思います。(鎌田)

Ⅲ 地域包括ケアシステム推進(多様なニーズに対応した介護の提供・整備)  

 2 医療・介護の連携

修正案6:「なお、医療療養病床から介護医療院への移行については、各保険者の介護保険財政、ひいては被保険者負担の軽減の観点から保険者への財政支援の検討が必要である。」  

原文:「なお、医療療養病床から介護医療院への移行については、各保険者の介護保険財政、ひいては住民負担の軽減の観点から保険者への財政支援の検討が必要である。」 

修正理由:なぜ、「住民」と表記されているのか理由がわかりません。

結果:「ひいては被保険者負担の軽減の観点から保険者への財政支援の検討が必要である。」と修正されました。

Ⅳ 認知症施策の総合的な推進  

[総論]

修正案7: 「『予防』とは『認知症にならない』という意味ではなく、『認知症になるのを遅らせる』『認知症になっても進行を緩やかにする』という意味であり『共生』に包括されるものである。誤った受け止めによって新たな偏見や誤解が生じないよう、取組を進める上で配慮が必要である。」

原文:「『予防』とは『認知症にならない』という意味ではなく、『認知症になるのを遅らせる』『認知症になっても進行を緩やかにする』という意味であり、誤った受け止めによって新たな偏見や誤解が生じないよう、取組を進める上で配慮が必要である。」

修正理由:「予防」が独り歩きしないように、他の委員のご発言にもありましたが、ていねいな説明にしていただきたいと思います。

結果:「~新たな偏見や誤解が生じないよう、『共生』を基盤としながら取組 みを進める等の配慮が必要である」と修正されました。 認知症施策推進大綱」で「予防」と「共生」が両輪とされたことへの 違和感は払しょくできませんが、「共生を基盤としながら」という表現は、前進かなと思います。(鎌田)

[認知症バリアフリー]

修正案8:「認知症になったとしても、できる限り住み慣れた地域で普通に暮らし続けていけるよう」

原文:「認知症になってからもできる限り住み慣れた地域で普通に暮らし続けていけるよう」

修正理由:表現をする時には、当事者や家族に対する配慮ある文章にしてください。

結果:認知症になったとしても~」と修正されました。

Ⅴ 持続可能な制度の構築・介護現場の革新   

1 介護人材の確保・介護現場の革新

修正案9: 「介護職員の処遇改善を中心に、多様な人材の参入・活躍の促進、働きやすい環境の整備」

原文:「介護職員の処遇改善、多様な人材の参入・活躍の促進、働きやすい環境 の整備」

修正理由:介護労働者の労働環境についてはさまざまな議論がありますが、賃金を引き上げることも重要だが、質の向上も大事だという構造に終始するなか、人材不足が加速してきていると思います。処遇改善が第一であることを強調してください。 

結果:原文のまま修正されませんでした。

2 給付と負担

[現状・基本的な視点]

修正案10: 「こうした状況の中で、要介護状態等に関し、必要な保険給付を行うとともに、軽減・悪化の防止といった制度の理念を堅持し~」

原文:「こうした状況の中で、要介護状態等の軽減・悪化の防止といった制度 の理念を堅持し~」 修正理由  介護保険法第二条一項は必ず入れてください。

 「介護保険は、被保険者の要介護状態又は要支援状態に関し、必要な保険給付を行うものとする」(介護保険法第2条の1項)

結果:「こうした状況の中で、要介護状態等の軽減・悪化の防止に資するよう、必要な保険給付等を行うと同時に~」、と加筆されました。

(2)補足給付に関する給付の在り方

修正案11: 「また、見直し後は、利用者にとって過度な負担となっていないか検証を行うことが必要である。」

原文:「また、見直し後は、利用者にとって過度な負担となっていないか検証 を行うことが求められる。

修正理由 :低所得者への負担軽減策を抑制する以上、検証は必要不可欠であり、検証結果にもとづく見直しが必要と考えます。

結果:「~検証を行うことが必要である」と修正されました。

(5)軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方

修正案12:「『軽度者』」      

原文:「軽度者」

修正理由:要介護1と2の認知症の人は概ね「軽度者」で一括りにする様態ではありません。このことは多くの認知症の介護者の反発を招きます。文案すべての軽度者という表記にはせめて「」を付けていただきたい。

結果:どの該当箇所も原文のままでした。

修正案13:「この改正により、要支援1・2の者の訪問介護と通所介護が、個別給付から総合事業へと移行された。」

原文:「この改正により、要支援1・2の者の訪問介護と通所介護が総合事業 へと移行され」

修正理由:被保険者に対して、ていねいな説明にしてください

結果:「~、個別給付から総合事業へと移行された」と加筆されました。    

要支援1・2の訪問介護と通所介護は介護保険の給付から外され てしまいましたが、訪問看護や福祉用具・住宅改修などの給付の  権利がある事を明示する大事な表現です(鎌田)

修正案14:「訪問介護における生活援助サービスは身体介護とあわせて一体的に提供されることで有用性が発揮され、利用者の生活を支えており、要介護度にかかわらず同量のサービスを受けている。」

原文:「訪問介護における生活援助サービスは身体介護とあわせて一体的に提供されることで有用性が発揮され、利用者の生活を支えており、軽度者も重度者も同量のサービスを受けている。」 

修正理由:上記12の理由と同じですが、生活における困難とは、要介護度によって「軽度」「重度」と測れるものではないと考えます。

結果:「、要介護度にかかわらず同量のサービスを受けている」と修正案文通りに修正されました。修正理由には、介護保険制度のそもそも論が述べられていると思います。(鎌田)

修正案15: 「『軽度者』の生活援助サービス等に関する給付の在り方については、地域包括ケアシステムの理念を踏まえ、総合事業の実施状況や介護保険の運営主体である市町村の意向、利用者への影響等を踏まえながら、引き続き検討を行うことが適当である」  

原文:「軽度者の生活援助サービス等に関する給付の在り方については、総合事業の実施状況や介護保険の運営主体である市町村の意向、利用者 への影響等を踏まえながら、引き続き検討を行うことが適当である」  

修正理由:「地域包括ケアシステムの推進」は、あらゆる見直しに照らす必要があると考えます。  

結果:原文のまま修正されませんでしたでした。総合事業は事業主体である市区町村の裁量次第ですから、その「裁量」に「理念」の縛りをかける必要があります。(鎌田)

(6)高額サービス費

修正案16:「なお、高額介護サービス費の見直しについては、介護サービ ス利用者の負担増となることが懸念され、扶養家族がいるケースも あり、見直し後の影響について調査を行うとともに、負担能力を踏 まえた議論が必要との意見もあった」

修正理由:制度の見直しについては、あらゆる項目で影響の調査は当然、行 うべきであり、実情にもとづく不断の再検証が必要と考えます。

果:「~扶養家族がいるケースもあり、見直し後の影響について調査を行うとともに、負担能力を踏まえた議論が必要との意見もあっ た」と修正案通りの修正になりました。

Ⅵ その他の課題 

1 要介護認定制度

修正案17:「なお、状態が重度化・軽度化した場合の区分変更申請については、認定者や介護者に対して周知を徹底し、適切に行われるようにすることも重要である」

原文:「なお、状態が重度化・軽度化した場合の区分変更申請が適切に行われるようにすることも重要である。

修正理由:認定者や介護者は有効期間内に変更ができることを知らない場合、あるいは市区町村や地域包括支援センター、ケアマネジャーが説明していない場合もありますので、注意深い表記にしてください。

結果:「~区分変更申請については、認定者や介護者に対して周知を徹底し、~」と修正案通りの修正になりました。

おわりに

修正案18:「介護保険制度は、高齢者の尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう必要なサービスの給付を行うことを目的とし、要介護状態等の軽減・悪化の防止に資することを目指すものである。」

原文:「介護保険制度は、高齢者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう支援することや、要介護状態等となることの予防、要介護状態等の軽減・悪化の防止を理念とするものである。

修正理由:介護保険法第一条の「尊厳の保持」は省略しないでください。また、理念とは「根本の考え」です。「要介護状態等の軽減・悪化の防止」を理念とするかどうか、介護保険部会で議論を深めたとは思えません。また、「要介護状態等の防止」という予防の考えは、すでに要介護状態等になっている人たちを排除、差別する論理にすり替えられる危険性が高いものです。せめて、現行の法文にあわせた表現にしていただきたいと思います。

結果:「介護保険制度は、高齢者の尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常 生活を営むことができるよう支援することを理念とし、要介護状態等の軽減・悪化の防止に資するよう、必要な保険給付等を行うものである」と修正され、修正理由を踏まえた修正になりました。

この「部会」での花俣ふみ代副代表の発言要旨~介護保険制度のそもそも論はどこへ    

〇各委員からの多岐にわたる、多様な意見を丁寧にまとめられ、また、我々~当事者からの切実な声にも、それなりの御配慮を頂き、事務局である厚生労働省のみなさまには、感謝申しあげる。    

〇しかし、この「意見(案)」は、介護を必要とする方、また介護者にとっては、当初より、訴えてきた通りの、いずれも厳しいものであることを、あわせて申しあげなければならない。    

〇「介護予防・健康づくりの推進(健康寿命の延命)」について。介護保険制度は、残念ながら健康寿命を伸ばすことができなかった人に、給付を用意している制度であったはずにもかかわらず、「意見(案)」では最初から「介護予防」や「高齢者の活躍促進」が語られている。一般介護予防事業というのは、要支援認定と要介護認定を受けていない人たち、もっと言えば「基本チェックリスト」の対象にもなっていない、元気な高齢者のみなさんを対象とする事業である。介護が必要になっても、地域で安心して暮らしていくことができるように支えるのが、介護保険制度のメインテーマではなかったか?     

一般介護予防事業の取組は、介護を必要としない人達に、あたかも予防をすれば、介護保険の給付を必要とすることなく死ねますよと言っているかのようである。どんな時にでも、私たちは病気や障害に出会うことがある。あらゆる世代に必要な介護保険をめざすのであれば、それこそ“全世代をカバーする社会保障”を構想するのであれば、必要とする人に必要な給付をするのが、介護保険の最大の使命だと思う。     

 さらに現役介護者の立場から伝えたい~    

〇「給付と負担」の検討事項8項目の内(2)「補足給付」と(6)「高額介護サービス費」が「見直し」(=修正)となり、特に(2)は暮らしへの深刻な影響を心配されている方たちに代わり緊急アピールを発出したところでもある。    

〇(1)の被保険者範囲・受給者範囲と(8)の現金給付は、継続テーマということで、議論を深めることはなく、残りの4項目は、(3)の相部屋の家賃の新設、(4)のケアマネジメントへの利用者負担の新設、(5)の「軽度者への生活援助サービス等」の地域支援事業への移行、(7)の「現役並み所得」、「一定以上所得」の判断基準のことだが、これらも継続審議になったとはいえ、私たちの不安が消えることなく、むしろさら不安が増したといっても過言ではない。

〇「制度の持続可能性」のために、これまで「給付の抑制と利用者負担増」ばかりが前面に出された、度重なる改正であったのではないか?介護される人が増え、介護する人が減っていく中、ソロバン勘定を合わせるがごとくの方向性による改正は、ある意味もう限界なのではないか? とかく、受益者と負担者が対比されるが、これは順送りです~負担者もいずれは受益者になるわけであるし~地域共生社会の実現・健康寿命の延伸…これらは課題のすり替え、先送りでしかないように思えてならない。様々な観点から、もっと知恵を出し、中長期的なしっかりしたビジョンが示され、介護保険制度創設時の理念に沿った、根本的な見直しの議論がなされることを切に願う。

「全世代型社会保障検討会議」のねらいは?~

12月19日に出された、全世代型社会保障検討会議の中間報告案の中に、「予防・介護」というテーマで、「持続可能性の高い介護提供体制の構築」のために、「介護報酬、人員基準の見直し」を行うという一文があるが、

1 介護保険部会で「引き続き検討する」とされた、先の4つのテーマは、来年(2020年)、本格化する介護報酬の改定の議論のなかで、ふたたび取りあげられることになるのか?

2 法律の改正をしなくても、介護報酬や運営基準の見直しを検討することで、この4つのテーマを実施する可能性があるのかどうか、教えて頂き待って報告します(鎌田)

議論は「給付費分科会」へ  

法改正の方向性が出され、今後は「見直し」項目等の具体的な制度設計が議論の中心になるため、鎌田松代事務局長が参加する「給付費分科会」に注目していきたいと思います。                            (まとめと文責 鎌田晴之)

次回の「給付費分科会は」

 次回の「給付費分科会」は2020年1月24日に予定されています。(まとめと文責 鎌田晴之)

リンク:厚生労働省(部会ホームページ)

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126734.html

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