どうするつもりか介護保険制度=「改正」の動きレポート#46 【介護給付費分科会】
介護保険・社会保障専門委員会
はじめに ~令和6年度介護報酬改定に関する審議報告案について~
12月18日(月)9:30から12:00まで、九段会館テラス コンファレンス&バンケットバンケットホール鳳凰において参集及びWEBによるハイフレックス形式で開催された、厚生労働省社会保障審議会第236回介護給付費分科会(「分科会」)は、前回に引き続いて、令和6年度介護報酬改定に向けて、審議報告のとりまとめに向けた内容について審議されました。
本会議は令和6年度介護報酬改定に向けた社会保障審議会介護給付費分科会の最終回であり、これまでの議論を踏まえた令和6年度介護報酬改定に関する審議報告案が示されました。審議報告案では、地域包括ケアシステムの深化推進、自立支援・重度化防止、効率的なサービス提供、制度の安定性確保などの基本方針が示され、人材確保・処遇改善、ICT等の活用促進、医療・介護連携の推進などが主要な改定事項として盛り込まれました。委員から前回意見を踏まえた修正点について質問があり、事務局から説明がありました。
その中で、委員として当会より出席した鎌田松代代表理事の発言内容を中心に「分科会」審議の動きをお伝えします。
【資料】
議事次第
社会保障審議会介護給付費分科会委員名簿
【資料1】令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)の概要
【資料2】令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)
社会保障審議会介護給付費分科会委員名簿
最初に古元重和老人保健課長より前回(第235回、12月11日)の審議で各委員から出された意見を踏まえ、修正した審議報告案【資料2】の説明が以下のようにありました。
〇介護現場における生産性の向上に資する取組の促進を図る観点から、介護ロボット・ICT 等のテクノロジーの導入後の継続的なテクノロジーの活用を支援するため、利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会の開催や必要な安全対策を講じた上で、見守り機器等のテクノロジー(※1)を1つ以上導入し、生産性向上ガイドラインの内容に基づいた業務改善を継続的に行うとともに、一定期間ごとに、業務改善の取組による効果を示すデータの提供を行うことを評価する新たな加算を設ける。加えて、上記の要件を満たし、提出したデータにより業務改善の取組による成果が確認された上で、見守り機器等のテクノロジーを複数導入し(※2)、職員間の適切な役割分担(いわゆる介護助手の活用等)の取組等を行っていることを評価する区分を設ける。 |
(※1)見守り機器等のテクノロジーとは、以下のアからウに掲げる機器をいう。
ア 見守り機器
イ インカム等の職員間の連絡調整の迅速化に資する ICT 機器
ウ 介護記録ソフトウェアやスマートフォン等の介護記録の作成の効率化に資する ICT 機器(複数の機器の連携も含め、データの入力から記録・保存・活用までを一体的に支援するものに限る。)
(※2)見守り機器等のテクノロジーを複数導入するとは、少なくともアからウまでに掲げる機器は全て使用することであり、その際、アの機器は全ての居室に設置し、イの機器は全ての介護職員が使用することとする。なお、アの機器の運用については、事前に利用者の意向を確認することとし、当該利用者の意向に応じ、機器の使用を停止する等の運用は認められるものであること。
鎌田松代代表理事は【資料2】令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)41ページ(2)生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくりの➂介護ロボットやICT等のテクノロジーの活用促進の部分について、次のように意見と要望をしました。
注➀ 石田路子委員(高齢社会をよくする女性の会)の発言メモから(一部略)
次に鎌田松代代表理事は【資料2】令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)の43ページ➃生産性向上に先進的に取り組む特定施設における人員配置基準の特例的な柔軟化に関する以下の記述に対し、下記(囲み内)のように疑問と危惧を表明しました。
次に鎌田松代代表理事は【資料2】令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)の43ページ➃生産性向上に先進的に取り組む特定施設における人員配置基準の特例的な柔軟化
〇テクノロジーの活用等により介護サービスの質の向上及び職員の負担軽減を推進する観点から、令和4年度及び令和5年度に実施された介護ロボット等による生産性向上の取組に関する効果測定事業の結果等も踏まえ、利用者の安全並びに介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会(以下「委員会」という。)において、生産性向上の取組に当たって必要な安全対策について検討した上で、見守り機器等のテクノロジーの複数活用((2)③と同じ)及び職員間の適切な役割分担の取組等により、介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減が行われていると認められる特定施設について、以下の見直しを行う。 ア 特定施設ごとに置くべき看護職員及び介護職員の合計数について、「常勤換算方法で、要介護者である利用者の数が3(要支援者の場合は 10)又はその端数を増すごとに 0.9 以上であること」とすることとする。なお、本基準の適用に当たっては、イの試行を行った結果として指定権者に届け出た人員配置を限度として運用することとする。 イ 人員配置基準の特例的な柔軟化の申請に当たっては、テクノロジーの活用や職員間の適切な役割分担の取組等の開始後、これらを少なくとも3か月以上試行し(試行期間中においては通常の人員配置基準を遵守すること)、現場職員の意見が適切に反映できるよう、実際にケア等を行う多職種の職員が参画する委員会において安全対策や介護サービスの質の確保、職員の負担軽減が行われていることをデータ等で確認するとともに、当該データを指定権者に提出することとする。 ウ 安全対策としては以下を実施することとする。 ⅰ 職員に対する十分な休憩時間の確保等の勤務・雇用条件への配慮 ⅱ 緊急時の体制整備(近隣在住職員を中心とした緊急参集要員の確保等) ⅲ 機器の不具合の定期チェックの実施(メーカーとの連携を含む) ⅳ 職員に対する必要な研修 ⅴ 訪室が必要な利用者に対する訪室の個別実施 エ 介護サービスの質の確保及び職員の負担軽減が行われていることの確認については、試行前後を比較することにより、以下の事項が確認される必要があるものであること。 ⅰ 介護職員の総業務時間に占める利用者のケアに当てる時間の割合が増加していること ⅱ 利用者の満足度等に係る指標において、本取組による悪化が見られないこと ⅲ 総業務時間及び当該時間に含まれる超過勤務時間が短縮していること ⅳ 介護職員の心理的負担等に係る指標において、本取組による悪化が見られないこと オ 柔軟化された人員配置基準の適用後、一定期間ごとに、エの事項について、指定権者に状況の報告を行うものとすること。また、届け出た人員配置より少ない人員配置を行う場合には、改めて試行を行い、必要な届出をするものとする。なお、過去一定の期間の間に行政指導等を受けている場合は、当該指導等に係る事項について改善している旨を指定権者に届け出ることとする。 |
以上の記述に対し、下記のように疑問と危惧を表明しました。
続いて鎌田松代代表理事は【資料2】令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)49ページ3の(2)生産性の向上等を通じた働きやすい職場環境づくりのに関する以下の記述に対し、下記(囲み内)のように、ケアマネ一人当たりの担当件数を増やす前に、ケアマネ不足を解消するための人材確保策を明記するよう求めました。
⑮介護支援専門員1人当たりの取扱件数(報酬) 【居宅介護支援】 居宅介護支援事業所を取り巻く環境の変化を踏まえ、ケアマネジメントの質を確保しつつ、業務効率化を進め人材を有効活用するため、居宅介護支援費について、以下の見直しを行う。 ア 居宅介護支援費(Ⅰ)(ⅰ)の取扱件数について、現行の「40 未満」を「45未満」に改めるとともに、居宅介護支援費(Ⅰ)(ⅱ)の取扱件数について、現行の「40 以上 60 未満」を「45 以上 60 未満」に改める。 イ 居宅介護支援費(Ⅱ)の要件について、ケアプランデータ連携システムを活用し、かつ、事務職員を配置している場合に改めるとともに、居宅介護支援費(Ⅱ)(ⅰ)の取扱件数について、現行の「45 未満」を「50 未満」に改め、居宅介護支援費(Ⅱ)(ⅱ)の取扱件数について、現行の「45 以上 60 未満」から「50 以上 60 未満」に改める。 ウ 居宅介護支援費の算定に当たっての取扱件数の算出に当たり、指定介護予防支援の提供を受ける利用者数については、3分の1を乗じて件数に加えることとする。 ⑯介護支援専門員1人当たりの取扱件数(基準) 【居宅介護支援】 基本報酬における取扱件数との整合性を図る観点から、指定居宅介護支援事業所ごとに1以上の員数の常勤の介護支援専門員を置くことが必要となる人員基準について、以下の見直しを行う。 ア 原則 、 要介護者の数に要支援者の数に 1 /3 を乗じた数を加えた数が 44 又はその端数を増すごとに1とする 。 イ 指定居宅介護支援事業者と指定居宅サービス事業者等との間において、居宅サービス計画に係るデータを 電子的に送受信するための 公益社団法人国民健康保険中央会のシステムを活用し、かつ、事務職員を配置している場合においては、 要介護者の数に要支援者の数に 1/3 を乗じた数を加えた数が 49 又はその端数を増すごとに1とする 。 |
続いて鎌田松代代表理事は【資料2】令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)58ページ、Ⅲ.今後の課題 の中の以下の項目に関して、下記(囲み内)のように言及しました。
【認知症の対応力向上】 ○ 新加算の要件で求めている「認知症の行動・心理症状(BPSD)の予防に資す るケアプログラム」について、現在、受講環境が限られている課題があるとこ ろ、より多くの介護職員等に受講いただく観点から、同プログラムの受講環境 の向上の検討を進めるべきである。 ○ 認知症の評価尺度について、今後も更なるエビデンス収集を図り、現場にお ける多様な活用や LIFE における活用を検討すべきである。 【認知症リハビリテーションの推進】 ○ 今回の介護報酬改定で、訪問による認知症リハビリテーションや、介護老人健施設における認知症リハビリテーション実施時の居宅訪問による生活環境の把握を推進することとしたが、その取組の実施状況、効果及び適切なリハビリテーション介入について検証し、今後の認知症リハビリテーションの在り方について検討していくべきである。 |
【訪問介護人材の確保】については、以下の記述に対して、下記(囲み内)のように、訪問介護人材の確保・充実が何より最優先される課題であることを明記するよう求めました。
最後に、このリポートが、審議の全てをお伝えするものになりえないことをご理解いただき、今回のテーマを含め、取り上げていない問題にも、意見・質問がございましたらお寄せください。
(まとめ・文責 介護保険社会保障専門委員会 鈴木森夫)