どうするつもりか介護保険法=次期改正の動きレポート#12

介護保険・社会保障専門委員会

はじめに ~「意見」から「指針」へ~

第90回厚生労働省「社会保障審議会介護保険部会」(部会)は、2月21日に「ベルサール飯田橋駅前」(東京都千代田区)で午前10時から行われました。

議題は(1)基本指針について(2)医療被保険者番号履歴を活用した介護情報と医療等情報の連結の仕組みの検討状況(報告)(3)令和2年度介護保険納付金算定に係る諸係数について(報告)、でした。「基本指針」とは、3年ごとに各都道府県が作る「介護保険事業支援計画」と各市町村が作る「介護保険事業計画」のガイドラインの役割を果たすものです。前回(第89回)の「部会」で決定された「介護保険を見直す意見」を「基本指針」としてまとめる審議が行われました。

 

第8期に向けた今後のスケジュール

 市町村の動きですが、1月から7月まで「計画作成のための調査分析・準備作業」で、サービス給付実績などを分析・考察します。8、9月は「サービス見込量などの設定作業」で、サービス対象者の増減など勘案して設定します。10月から12月には「サービス見込量、保険料の仮設定」が行われます。翌年の1月から3月にかけて「介護保険事業計画を議会に報告」「介護保険条例」の改正が行われ、4月から第8期介護保険事業がスタートします。この間都道府県は、厚生労働省から「基本指針」の提示を受け、市町村への情報提供や国との調整、市町村との調整を行いながら、「介護保険事業支援計画」を議会に報告します。

認知症施策はどのように扱われるか

介護保険事業計画作成にあたって、厚生労働省が「記載を充実させる事項」とした6項目の中に「5 認知症施策推進大綱を踏まえた認知症施策の推進」があり、そこには「共生と予防を両輪とした認知症施策について5つの柱に基づき記載」「教育等他の分野との連携に関する事項について記載」という二つの小項目が書かれています。今回配布された資料では、「5つの柱」すべてに「認知症の人と家族の視点重視」という「棒」がかぶせられています。これらの事がどのように、市町村の計画に盛り込まれていくか注視しながら注文もしていく必要があると思います。

花俣ふみ代副代表の発言要旨

 今回も膨大な資料を読み込みながら、5~6分という限られた発言時間を駆使して行われた発言を要約してお伝えします。文中の「資料」は、このレポートの最後に記されたURLでご確認ください。

「ボランティア」について

資料1の6ページには、「6. 地域包括ケアシステムを支える介護人材確保及び業務効率化の取組の強化」とあります。具体的内容として、総合事業等の担い手を確保するために、「ポイント制度や有償ボランティア等について記載」するとあります。また、26ページには「総合的な介護人材確保対策」として、「さらに講じる主な対策」の2番目に「ボランティアポイントを活用した介護分野での就労的活動の推進」とあります。介護保険部会で『有償ボランティア』の定義がはっきりしない、また、「就労的活動」という表現もとてもあいまいなものだと思います。

注 この点については、「見直し案とりまとめ」の第89回「部会」で、花俣副代表が修正意見を出しました。「介護保険部会で『有償ボランティア』の定義がはっきりしないなか、安易に有償ボランティアの呼称を使うことには慎重である必要があり、せめて、カギカッコ付きにするべきと考えます」という意見に応じて、最終案では「いわゆる有償ボランティア」とされた経過があります。

(当「次期改正の動きレポート#10」をご参照ください)

ホームヘルプ・サービスについて

資料1の9ページに「2020年度からの地域医療介護総合確保基金のメニューの充実案」があります。「介護離職ゼロのための量的拡充」はぜひ、取り組みをお願いしたいと思いますが、老朽化した特養の改修、介護付き有料老人ホームの拡充、介護職員の宿舎施設整備がポイントになっています。しかし、特別養護老人ホームの利用は原則、要介護3以上になり、介護付き有料老人ホームも一定以上の経済力がないと利用することができません。つまり、要介護1と2で在宅介護をしている人たちの「仕事と介護の両立」は苦しいものがあります。

10ページには同じく地域医療介護総合確保基金の「介護人材分」として、参入促進、労働環境等の改善などが並んでいます。介護人材というのは、ホームヘルパーと施設などの介護職員を指すと思いますが、利用者の多くは在宅サービスを利用しており、なかでも、需要の高いのは、ホームヘルプ・サービスとデイサービスです。特にホームヘルプ・サービスは、ホームヘルパー不足で「有効求人倍率が14倍」という報道もあり、危機的な状況にあるのではないでしょうか。財務省から、「要介護1・2の調理、掃除などは、地域のボランティアなどの資源を利用して、地域支援事業に移したほうが、効率的、効果的と「生活援助」を総合事業に移すことが提案されていると認識しています.しかし、在宅介護の現場で、調理や掃除などを作業ごとに切り離して行うというのは、ましてやボランティアなどに家にあがってもらい、こなしてもらうというのは、非現実的とも言える発想です。日々の暮らしのなかで、途切れることなく、調理や掃除や洗濯などの家事も含めて、介護という行為があると思います。ここにいらっしゃる皆様もわが身の事として実際にそんなことが可能かどうか想像してみてください。これまで繰り返し申し上げてきましたが、ホームヘルパーに支えられて、かろうじて在宅で暮らすことができてきた人たちに、今後も安心して生活してもらうためには、ホームヘルパーが不可欠です。

 「ボランティア」あるいはここで言う「有償ボランティア」ではなく、きちんと研修を受けたホームヘルパーの確保をどうするつもりなのか?!そのあたりを多少は加味された表記もあるようですが、そのための計画等については、よく見えません。

 また、ガイドラインでも人材確保に苦労している市区町村に、有効なプランを示すことを考えていただければと切に願います。

介護関連データベースについて

資料1の24ページに「介護関連データベースの構成」が紹介されています。 介護保険の個人データについては、2009年度から要介護認定情報、2012年度からレセプト情報が収集されているとあります。

 資料2には「介護情報と医療等情報の連結の仕組みの検討状況」とあります。 これは、要介護認定を受けた人、あるいは要介護認定を受けてサービスを利用している人の情報が医療保険の情報と連結されるという理解でいいのか、教えてください。

 なお、マイナンバーカード制度でも、個人情報が流出することやデータが盗まれることが危惧されています。特に高齢者の情報は、特殊詐欺などに悪用されるリスクも高いと思います。ビッグデータの構築にあたって、個人情報はどのように保護されるのか、また、集めたデータはどのようなことに使われるのか、きちんとした情報公開と説明責任を果たしていただくことを強く要望いたします。

 3月16日に予定される「給付費分科会」では、いよいよ次期「報酬改定」の中身の論議が始まります。サービス利用者にとって直接影響のある改定です。介護保険法には、厚生労働大臣は、社会保障審議会(介護給付費分科会)の意見を聞いて定める、とされています。今後も審議経過を注視し、情報提供に努めたいと思います。

次回の「部会」の開催は未定です。

 (まとめと文責 鎌田晴之)

リンク:厚生労働省(部会ホームページ)

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126734.html

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