成年後見制度:パブリックコメントを提出!
公益社団法人認知症の人と家族の会では、「民法(成年後見関係)等の改正に関する中間試案」に対して、2025年8月25日に下記のパブリックコメントを提出しました。
なお、「中間試案」の概略については、ページ下部の「参考1」をご覧ください。
※「家族の会」では、法務省の法制審議会民法(成年後見等関係)部会に花俣ふみ代副代表理事を派遣しています。

民法(成年後見関係)等の改正に関する中間試案に対する意見書
2025年8月25日
公益社団法人 認知症の人と家族の会
当会は、認知症になったとしても、介護する立場になったとしても、人としての尊厳が守られ、日々を穏やかに暮らし続けていきたい、という思いで1980年から活動を続けている認知症の人と家族及びその支援者による公益社団法人です。
民法(成年後見関係)等の中間試案に対して以下の通り意見を述べます。
1.法定後見開始の要件及び効果等
第1の1(1)において乙1案に賛成します。以下理由を述べます。
理由:乙1案は、①判断能力が不十分である者、②特定の事項について保護する必要、③原則として本人の同意を要件として、成年後見人等に当該本人に必要な特定の事項について、代理権・取消権を(個別に)付与する類型の法定後見を開始するとあります。
私たちは、現在の成年後見制度における後見類型の権限は広すぎると考えています。認知症の人は判断能力が不十分であるとしても、一人一人置かれている状況、症状は様々で、必要な支援の内容も異なります。類型を設けず、一人一人を個別に検討し、本人の同意のもと、必要な範囲で代理権・取消権を付与することが、自己決定の尊重の観点からも必要であると考えますので、乙1案に賛成します。
乙2案は、判断能力が常にないと思われる人に対して、現行の後見類型よりも狭い権限であるとはいえ包括的な一定の権限を付与する類型を置くことになっています。
現在の後見制度においても、類型を決める際、申立人や支援者側の意向が強く反映され、包括的な権限のある後見類型により申立てがなされる傾向があります。認知症の人は、症状が進行しても自らの意思を持っています。「判断能力を欠く常況」であると決めるのではなく、その意思を丁寧にくみ取っていただくことを求めます。
2.法定後見の終了
第1の1(1)において乙1案を支持し、保護する必要がなくなったときにおいて法定後見を終了することを可能とする案に賛成します。以下理由を述べます。
理由:現状において、成年後見制度を利用しないで認知症の本人を家族が様々なサービスを利用しながら支援しているケースは一定数あります。しかし、本人名義の不動産の売却や、相続の手続きが必要になり、本人が判断することが難しい場合は、成年後見制度を利用することになります。手続きが終われば制度を利用する必要性はないと思われる場合でも、現状では制度の利用を止めることができず、利用することに負担感を覚えるという声を会員から聞くことは少なくありません。必要な時に利用でき、必要がなくなったときに終えることができる制度となることを求めます。
3.成年後見に関する期間
第1の1(1)において乙1案に賛成します。以下理由を述べます。
理由:現行の制度においては、成年後見制度を利用すると原則死亡するまで、利用は継続します。乙1案は家庭裁判所が法定後見を開始する際に期間を定め、その更新がない限り、期間満了時に終了するものとする。保護担当者は、期間満了前の一定期間代理権・取り消しの更新の賛否を家裁に報告しなければならないとあります。環境の変化(施設入所等)などにより本人の状態が変わることは少なくありません。一度審判がなされたら権利を制限される側面のある成年後見制度を継続するのではなく、期間を定め、本人の意思を可能な限り確認し、関係者でその間の状態把握に努めることで、制度利用の必要性や代理権・取消権の見直し等をすることが必要であると考えます。
乙2案に関しては、法定後見の必要性について報告することを義務付け、必要性がなくなったときは法定後見を終了させるとありますが、終了に関して消極的になることが懸念されるので乙1案によるべきであると考えます。
4.成年後見人の解任(交代)
第1の1(1)において乙案に賛成します。以下理由を述べます。
理由:乙案は、現行法の解任理由がない場合であっても、本人の利益のために特に必要がある場合を念頭に、新たな解任事由を設ける案とされています。例えば、本人や関係者との適切な関係が築けず、それにより本人の支援が適切になされていない場合でも、現行法では解任事由にあたらないので、後見人を交代させることは困難です。欠格事由に至らないが、本人にとって適切とはいえない状況がある場合に対応する解任事由を設けることで、本人にとって適切な後見人が選任されることになると考えます。
意見
意見:2024年1月「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が施行されました。その基本理念として、認知症の人が基本的人権を享有する個人として自らの意思によって、日常生活及び社会生活を営むことができるようにする。全ての認知症の人が社会の対等な構成員として、地域において安全かつ安心して自立した生活を営むことができるようにするとともに、自己に直接関係する事項に関して意見の表明をする機会及び社会のあらゆる分野の活動に参画する機会の確保を通じて、その個性と能力を十分に発揮することができるようにすること等、権利が示されています。
成年後見関連法が、この理念にもとづき認知症の人の意思が尊重され、安心して地域社会で生活できるよう、改正されることを求めます。
以上
民法(成年後見関係)等の改正に関する中間試案に対する意見書(PDFファイル)
参考1
「民法(成年後見関係)等の改正に関する中間試案」においては、主に下記のような複数の案が出されています。また、それぞれの甲乙案に対して、より詳細な「甲1案」「乙2案」などの案が出されています。詳細は該当案の本文をご覧ください。
1.後見開始の審判における本人の同意
【甲案】:後見開始の審判において、本人の同意を必須としない案。
【乙案】:後見開始の審判において、本人の同意を原則として必須とする案。
2.後見制度の期間と終了
【甲案】:現行制度と同様、原則として後見の期間を定めない案。
【乙案】:後見の期間をあらかじめ定め、更新制を導入する案。
3.解任の手続き
【甲案】:現行通り、家庭裁判所が職権または請求により解任する手続きを維持する案。
【乙案】:本人や家族が、より簡易な方法で後見人の変更を申し立てられる手続きを設ける案。
参考2
「民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案」(令和7年6月10日)の取りまとめ
https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00295.html
「民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案」に関する意見募集|e-Govパブリック・コメント 意見募集は終わっています
【他団体意見書】
日本弁護士連合会:民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案に対する意見書
https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2025/250821.html
提言・意見 | 公益社団法人 成年後見センター・リーガルサポート
https://legal-support.or.jp/general/activity/proposal/






