介護保険制度への提言 要介護認定の廃止など利用者本位の制度に

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新たな合意体制でサービス決定を

「家族の会」理事・介護保険・社会保障専門委員会委員 田部井康夫

●介護保険を充実発展させる立場

「家族の会」は、2012 年の介護保険制度改正に向けて、要介護認定の廃止とそれに代わる手続きを骨子とする「提言」を、6 月の総会において決定

改めて、この「提言」の趣旨を述べます。
まず、「提言」は、次のような考え方の上に立ってまとめました。
1. 介護保険制度を、これからも充実発展させるべきものと位置づける

2. 制度の主人公は、税金、保険料、利用料の財源を拠出している国民である

3. その立場が尊重され、制度が信頼され評価されてこそ持続可能になるこの考えに基づいて、こうあってほしいという利用者の立場からの率直な願いを具体化したのがこの「提言」です。

●現行認定制度の問題点

では、なぜその中心に、要介護認定の廃止とそれに代わる手続きの提案を据えたのでしょうか。
制度が発足して以来、「家族の会」は、要介護認定は制度本体と不可分のものと理解し、より実情に即した結果が得られるよう一貫して努力してきました。しかし、要介護認定のシステムそのものに限界があり、別の道を探る必要があるのではないかと感じたからです。
転換の大きな契機となったのは、2009 年4 月の要介護認定システムの改定です。
認知症にかかわる調査項目の削減提案から、要介護認定の見直しに係る検証・検討会の終結までの一連の流れの中で、強く感じたのは次のようなことでした。
(1)コンピュータによる判定基準は、さまざまな意図によって恣(し)意い的に操作されていること、(2)それによって介護度の客観的指標としての意義は著しく低下したこと、(3)この傾向は財政の逼迫を理由にますます強まるのではないかということ、(4)適切なサービスの決定には別の手続きも検討してみる価値があること、(5)会議の中で利用者の立場に立った意見は少なく、利用者の利益は利用者団体が積極的に発言してゆくことによってしか守られないこと。
その結果として、「家族の会」は、検証・検討会の終結に当たって「要介護認定の廃止も含め抜本的な見直しを図ること」を申し入れたのです。

●より利用者の実情に即した方法へ

そして、要介護認定に代わり、手続き的に負担が増えることなく、より利用者の実情に即した合理的な手続きのあり方について検討を重ねました。その結果、私たちが得た結論が、「ケアマネジャー、 主治医、事業者に保険者が加わった新たなサービス担当者会議において、利用者、家族の状況と要望をふまえた上で、合議によって必要なサービスの中身と頻度を決定すること」から制度の利用が始まるとするのがもっとも合理的である、ということでした。
本来の趣旨からすれば、「ケアマネジメント会議」とすべきだと思いますが、イメージしやすいように現実に稼動している「担当者会議」という用語を使いました。ここに保険者が加わることに大きな意味があります。保険者も利用者の状況を把握した上で必要なサービスを判断することができます。同居家族がいることにより一律に訪問介護の家事援助を認めない、などの形式的な対応をなくすことができます。会議への参加の際の負担も、これまで新規申請の場合には、保険者が調査に赴くのが原則でしたから、負担が大幅に増えることはないはずです。
利用者も、要望が通らない場合でも、その決定の場に参加することにより制度の主人公として立場を実感することができます。
複数の眼で見て合議によって判断することにより、極端な恣意的要求を抑制し合理性を担保することができます。また、直接状態を確認するため現実と大きくかけ離れた結論が出ることはなくなります。コンピュータでは10 年経った今でも現実と乖離した結論が出てしまうことを、システム設計者は“恥”とすべきです。
状態像を端的に表現する指標としては、介護度に代わってこれまでも使われてきた障害高齢者自立度、認知症高齢者自立度を使用することができます。これも合議で決めるために従来のように調査員と主治医の結論が極端に異なる結果を調整することができます。

●冷静で真摯な議論を

要介護認定廃止の提案に対して、冒頭述べたようにさまざまな意見が出されています。また、介護家族の立場からの不安や懸念も示されています。新しいことが始まるときには不安や懸念があって当然です。私たちは制度の専門家ではないので、その全てに明確な回答をもっているわけではありません。特に利用者の立場からの不安や懸念に対しては今後も真摯に検討してゆく必要があります。
しかし、これまで把握している強い反対意見は制度を持続させるために必要だという観点からのものであり、利用者の利益を守るために必要だという意見は見受けられません。これは、2009 年4月改定に関する検証・検討会で受けた利用者の立場から発言してくれる人がほとんどいないという印象とまったく一致しています。したがって、私たちの意見に修正を迫るものではありません。むしろ、過剰と思われるような反応は、逆に私たちに確信を深めさせる結果になっています。
要介護認定の廃止の提案を唐突だと感じる向きもあるかもしれません。私たちも2009 年4 月改定の経緯を経るまでは思い及ばなかったことですから、無理からぬことかもしれません。また、要介護認定のシステム確立に携わった人たちにしてみれば、自分たちの努力を無にされたようで不快に思う向きもあるかもしれません。しかし、要介護認定10 年の役割は認めた上でより望ましい姿を求めての提案であることを理解していただき、冷静で真摯な議論がなされることを希望するものです。

(つづく)

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公益社団法人認知症の人と家族の会 機関誌「ぽ~れぽ~れ」2010年8月号 10,11ページより