「緊急要望書」を全国会議員に送付しました
2026年4月3日に「社会福祉法等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、現在会期中の特別国会に上程されています。
「介護保険法一部改正案」については昨今、社会福祉関連法案と共に「社会福祉法等の一部を改正する法律案」の中に含まれているので、多くの方々が気付かない現状であるかもしれません。
「介護保険法一部改正案」では、社会保障審議会介護保険部会で審議されてきた「中山間・人口減 少地域」という名称が「特定地域」と変更され、全国大半の自治体(市町村)が対象となる見込みです。 そして、「特定地域サービス」と「特定地域居宅サービス等事業」の創設が法律案に示されており、法案 が通れば「特定地域」に暮らす介護が必要な人は、訪問介護や通所介護、短期入所生活介護そして居宅介護支援を、人員配置基準を緩和した事業所にお願いすることになります。スタッフを減らした事業所に、新たな利用者を受け入れる余力はあるのか甚だ疑問です。また、要介護 1~5 の人への給付サービスも、新たな地域支援事業である「特定地域居宅サービス等事業」に移るかも知れません。認定を受けた人は、全国どこでも必要なサービスが利用できるはずだったのが、「特定地域」の市町村に 暮らす人は、別のサービスや事業になるかも知れません。
また、法案には「新たなケアマネジメントの創設」があり、住宅型有料老人ホームに入居する利用者に対し、現行無料であるケアマネジメントの利用者負担を求めるとあります。
これらの法改正案は、最終的に多くの要介護者とその家族等、皆様も不利益を被ることになる恐れ があります。長年訴えてきている「介護のある暮らし」が脅かされるということです。
わたしたち認知症の人と家族の会は、第 1 回社会保障審議会介護保険部会及び第 1 回社会保障審議会介護給付費分科会より委員として出席し、今日まで全国介護保険利用者を代表する立場として意見や要望を訴え続けてきております。よって、このような改悪に繋がる節目に、何もせずに静観するわけにはまいりません。
今回の「社会福祉法等の一部を改正する法律案」の国会審議は、衆参両院の「厚生労働委員会」で専門的に審査され、その後「本会議」で最終決定する二段階の手続きとなります。「厚生労働委員会」で審査する委員も、「本会議」で討論や採決にかかわる人も、全て国会議員となります。
そこで、衆参両院国会議員全員に対し緊急要望書を提出し、国会の「厚生労働委員会」及び「本会議」で、「社会福祉法等の一部を改正する法律案」に含まれる「介護保険法一部改正案」の懸念点について理解していただき審議に活かしてもらいたいと考えています。
「厚生労働委員会」での審査は5月半ばからではないかと見られています。そして、同委員会での審査は 2 週間程度と見込まれますので、早急な行動が必要となります。
そこで、衆参全ての国会議員あてに5月11日要望書を一斉送付いたしました。 同時にマスコミ各社へも要望書を5月12日配布いたしました。
以上、皆様へお知らせいたします。
介護保険・社会保障専門員会
理事会
介護保険法改正案についての緊急要望書
国会議員のみなさま
2026年5月12日
公益社団法人認知症の人と家族の会
共同代表理事 和田誠・川井元晴
介護保険・社会保障専門委員会委員長 志田信也
介護保険制度は、日常生活で助けが必要となった際に必要なサービスを保障し、全国の介護を必要とする本人や家族を支える重要な社会基盤である保険です。しかし、現在国会で審議されようとしている「社会福祉法等の一部を改正する法律案」に含まれる「介護保険法の一部改正案」には、制度の根幹を揺るがしかねない懸念すべき内容が含まれています。
改正案では、人口減少地域を「特定地域」と定め、介護職員の人員配置基準を緩和することや、訪問介護・通所介護・短期入所生活介護などといった介護生活に不可欠な在宅サービスを保険給付から市町村事業へ移行できるとしています。しかし、高齢化が進む中で80代以上の認定率が6割を超える現状を鑑みれば、たとえ人口が減っても介護を必要とする方々は増え続けるのが実態です。
人員不足を理由とした基準緩和や給付からの事業移行が行われれば、居住地域によってサービスの質や保障に格差が生じ、どこで暮らしても等しいサービスを保障するという介護保険の理念がなし崩しになる恐れがあり、私たちは大きな不安を覚えます。苦境にある事業所への支援が必要であれば、それは法改正による恒久的な措置ではなく、臨時的・応急的な公的支援によって解決されるべき課題です。
また、現在は全額給付によって利用者負担のないケアマネジメントについて、住宅型有料老人ホームの入居者を対象とした新たなケアマネジメントを創設し、利用者負担を求める方針も示されています。これまで自宅や賃貸住宅と同様に扱われてきた居住形態に対し、特定の支援形式を導入して負担を強いることは、制度の公平性を損なうだけでなく、利用者の生活を直接的に圧迫するものです。
少なくとも現在の「介護のある暮らし」を継続し、誰もが安心して老後を迎えられる社会を維持するために、以下の要望をいたします。
介護保険法改正案についての要望
- 『「特定地域」を創設し、事業所の介護職員を減らす』のではなく、必要な介護職員を確保するための見直しを行ってください。
- どの地域に住んでいても、どんな場所で暮らしていても、全国の認定者に、公平、平等な給付を維持するための見直しをしてください。
- 『「特定地域」を創設し、事業所の介護職員を減らす』のではなく、必要な介護職員を確保するための見直しを行ってください。
「社会福祉法等の一部を改正する法律案概要」には、「1.地域の実情に応じた包括的な支援体制の拡充」として、①中山間・人口減少地域での地域の実情に応じた配置基準や、②包括的な評価の仕組みが導入可能となる特例介護サービスの類型(「特定地域サービス」)の新設、③地域のサービス提供主体が少ない場合に市町村が事業として居宅介護サービス等を実施できる「特定地域居宅サービス等事業」の創設とあります。
しかし、法律案には「中山間・人口減少地域」はなく、「特定地域」とあります。
また、「特定地域サービス」は、予防給付も含めて、居宅サービス(訪問介護、訪問入浴、通所介護、短期入所生活介護、福祉用具レンタル、ケアマネジメント)が対象で、介護保険3施設も「特定地域介護保険施設」として、人員配置基準の緩和が可能になります。
要支援(要支援1、2)だけでなく、要介護(要介護1~5)の認定者も対象となる「特定地域居宅サービス等事業」もまた、居宅サービスが対象で、市町村の地域支援事業と位置づけられ、保険者として支払い義務のある給付費ではなく、予算に上限があり市区町村の裁量で決められる事業費が報酬になり、地域間格差も懸念されます。
都道府県の推計では、2022年から2040年にかけて、約57万人の新たな介護職員が必要とされています。
一方、介護保険制度があってもなお、孤立死や介護殺人、高齢者虐待などが社会問題化しています。また、「介護離職」する家族も減ることがありません。
深刻な社会問題に歯止めをかけ、安心した介護生活を続けるには、人員配置基準の緩和や給付の事業化ではなく、安定的な人材確保施策にこそ注力し検討をしてください。 - どの地域に住んでいても、どんな場所で暮らしていても、全国の認定者に、公平、平等な給付を維持するための見直しをしてください。
介護保険制度は、全国約7,800万人の被保険者が納める保険料で支える社会保険方式であり、その根幹は「誰もが必要なサービスを平等かつ公平に受けられること」にあります。
住む市町村により受けられる介護サービスの内容差や、自宅や住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅といった住まいの形態よる負担に差が生じることは、制度の信頼を揺るがしかねません。どのような「居宅」に暮らしていても、被保険者が平等かつ公平に給付を受けられる体制を維持するための施策を検討してください。
以上
<連絡先> 公益社団法人 認知症の人と家族の会
〒602-8222 京都市上京区晴明町811-3 岡部ビル2F TEL 050-5358-6580 FAX 075-205-5104 E-mail:office@alzheimer.or.jp

