杉山Drの知っていますか?認知症当会副代表理事の杉山孝博Drによる連載です。全52回、毎週日曜日と水曜日に新しい記事を追加します。


公益社団法人認知症の人と家族の会副代表理事・神奈川県支部代表

公益社団法人日本認知症グループホーム協会顧問
川崎幸クリニック院長

杉山 孝博

今回から認知症の原因について考えてみたい。

認知症の原因には、脳そのものの病変による一次的要因と、脳以外の身体的、精神的ストレスによる二次的要因がある。

まず一次的要因には、脳萎縮性変化(アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など)、血管性変化(血管性認知症)、内分泌・ 代謝性・中毒性疾患(甲状腺機能低下症、アルコール性認知症など)、感染性疾患(クロイツフェルト・ヤコブ病、脳梅毒による進行麻痺)、手術による効果が 期待できる正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍といった疾患がある。このように認知症を起こす原因はたくさんある。

早期診断・早期治療により症状が改善する場合があるので、できるだけ早く専門医に診てもらうことが必要だ。

二次的要因には、環境の変化や人間関係、不安、抑うつ、混乱、身体的苦痛などがある。

入院や転居といった環境の変化で認知症が出現することや、骨折や貧血など体の変化により認知症がひどくなることがよくある。配偶者の死や定年退職をきっかけに認知症が始まった例も少なくない。

二次的要因を見つけて適切な対策をとるのが実は最も重要で有効な方法である。

主な一次的要因について説明してみたい。

アルツハイマー病あるいはアルツハイマー型認知症では、大脳の神経細胞の萎縮と「老人斑」と呼ばれる変化が見られるのが特徴だ。原因は不明だが、ベータアミロイドというタンパク質の老廃物が多量に蓄積し神経細胞や神経のネットワークが破壊されることが分かっている。

頭部CTなどの検査をすると、中年期以降に大脳、とくに記憶中枢のある側頭葉の海馬と呼ばれる部分の萎縮が認められる。

物忘れから始まって徐々に進行する。運動神経は侵されないので初期には体はよく動く。進行が緩やかになることはあっても、次第に大脳機能が喪失して寝たきりになっていく。

40歳後半から65歳未満に発症した場合をアルツハイマー病、65歳以降に発病した場合をアルツハイマー型認知症と呼ぶ。認知症の原因として最も多い。

初期の段階であれば記憶力を改善する塩酸ドネペジル(商品名アリセプト)などが使われるようになったが、脳の萎縮そのものを治すものではない。認知症が進行すれば、数年で薬の効果は期待できなくなる。


杉山孝博:

川崎幸(さいわい)クリニック院長。1947年愛知県生まれ。東京大学医学部付属病院で内科研修後、患者・家族とともにつくる地域医療に取り組もうと考えて、1975年川崎幸病院に内科医として勤務。以来、内科の診療と在宅医療に取り組んできた。1987年より川崎幸病院副院長に就任。1998年9月川崎幸病院の外来部門を独立させて川崎幸クリニックが設立され院長に就任し、現在に至る。現在、訪問対象の患者は、約140名。

1981年から、公益社団法人認知症の人と家族の会(旧呆け老人をかかえる家族の会)の活動に参加。全国本部の副代表理事、神奈川県支部代表。公益社団法人日本認知症グループホーム協会顧問。公益財団法人さわやか福祉財団(堀田力理事長)評議員。

著書は、「認知症・アルツハイマー病 早期発見と介護のポイント」(PHP研究所)、「介護職・家族のためのターミナルケア入門」(雲母書房)、「杉山孝博Drの『認知症の理解と援助』」(クリエイツかもがわ)、「家族が認知症になったら読む本」(二見書房)、杉山孝博編「認知症・アルツハーマー病 介護・ケアに役立つ実例集」(主婦の友社)、「21世紀の在宅ケア」(光芒社)、「痴呆性老人の地域ケア」(医学書院、編著)など多数。


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