どうするつもりか介護保険法=次期改正の動きレポート#4

介護保険・社会保障専門委員会

はじめに

第83回「厚生労働省社会保障審議会介護保険部会」(部会)は、10月9日に「全国都市会館」(東京都千代田区)で午前9時から行われました。議題は(1)介護人材の確保・介護現場の革新について(2)地域支援事業等の更なる推進(3)介護予防の推進、の三点でした。2時間の予定が40分延長され、多くの論点が詰め込まれました。何を急いでいるのでしょうか。

 

高齢者の「活躍促進」?

 配布資料から、気になる「論点」をひろってみます。

(1)今年の5月から開催されている厚生労働省の「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会」による、介護予防の取組の評価指標が示され、中には「住民の幸福感の評価」といった首をかしげる項目もあり、「国は、通いの場等の取組について、エビデンスを構築することも併せて検討」する等、確信の持てない施策の感があります。8月に出された同検討会の「中間とりまとめ」には、介護が必要になった原因のトップに「認知症」をあげながら、「医療専門職の関与」に言及するのみで「ケア専門職」は視野に入っていません。

(2)「参考資料」によると、地域包括支援センター業務の一つである「地域支援事業」の「認知症高齢者見守り事業」は全国34%の市町村ではまだ取り組まれていません

(3)「介護人材の確保・介護現場の革新を進めるため、多様な人材の参入・活躍の促進、働きやすい環境の整備、介護現場の魅力向上等の取組の方策として、どのようなことが考えられるか」と、相変わらずの課題が出されています。『特に、高齢者の地域や介護現場での活躍の促進』を強調する所は、「全世代型」の取組の中で、高齢者への期待の大きさをうかがわせます。「老々介護」が半数を超える状況では働きながら介護をせざるを得ない高齢者の増加という現実も十分予想されます。労災認定を受ける高齢者が増えていることを合わせて考えれば、高齢者の介護現場での活躍には多面的な配慮は必要です。

花俣副代表の発言要旨

 ケアマネジメントは認定者や介護者にとって、介護保険サービスにつながる大切な支援・給付であり、10割給付は維持して頂きたいという事をあらかじめ申しあげたい。総合事業において、課題である「多様なサービス」がどのくらい提供されているかを考える時、例えば、市区町村の数でみると「訪問型」59%、「通所型」66%の実施率であるが、利用者数でみると「訪問型」で18%、「通所型」で17%しか「多様なサービス」を利用していない。視点の違いにより相当な違いがあることを指摘しておきたい。また、厚生労働省が引用したNTTデータ経営研究所の調査報告書には、自由記述の報告が無いにもかかわらず、「軽度者 (要介護2)まで対象を拡大してほしい」等と市区町村が「要介護認定者を総合事業の対象に」と希望しているかのように紹介されている。今後検討予定の「軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方」にも大きく関わることなので、自由記述を抜粋して紹介された目的について、教えていただきたい。「被保険者・受給者範囲」については、現在、40~64歳の第2号被保険者は、認定を受けた人の2%にしかなくわずかな給付の対象でしかない現状を考慮して、時間をかけた丁寧な議論が必要だと思う。また、負担の対象年齢が引き下げになるという情報だけが先行してしまうと、若い世代には「給付と負担」のうち、負担増しかイメージできないことも心配材料であることをお伝えしておきたい。

また財務省が

 年末取りまとめに向けて、ハードなスケジュールで審議を進めている最中の10月9日、 財務省の「財政制度等審議会」が開かれ、「介護保険利用料の2割負担」「ケアプランの有料化」「『軽度者』(要介護2まで)の訪問介護と通所介護を市町村が運営する総合事業(介護予防日常生活支援事業)へと移行」などの「改革案」を、また出してきました。「全世代型社会保障検討会議」の動きと合わせて、介護保険部会包囲網の感を強く感じます。         

次回の「部会」

 次回の「部会」は2019年10月28日に予定されています。(まとめと文責 鎌田晴之)

リンク:厚生労働省(部会ホームページ)

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126734.html

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