私が望む社会保障の姿と負担のあり方

「高福祉応分の負担」を考える


今回は、鹿児島県支部世話人(介護家族) 中村知敏氏


■ 世界第2位の経済大国に見合う社会保障を


経済合理主義による競争社会の結果は、強者と弱者のあらゆる格差を生み出しました。加えて社会保障へのかかわり方も自己責任という風潮を生みつつあり、老老介護、認認介護、虐待、孤独死など、弱者の問題は片隅に追いやられようとしています。


戦後、日本は核家族社会に変質し、弱者や高齢者を家族で支えることには限界が生じ、社会で支えなければならなくなったことに社会保障の原点があると思います。


社会で支える以上、強者も弱者も応分の負担をして差別なく社会保障の恩恵を受けるのは当然の権利であり、国にはそれを守ってくれる責任があります。中福祉中負担という議論をする人もありますが、こんな中途半端なことは論外です。中福祉は弱者を切り捨てる議論です。高福祉、応分の負担が王道です。


高福祉の要件は医療と介護の場合、量と質を確保することの2点に尽きます。医療や介護の必要が生じた時にいつでも質の高いサービスが受けられるようにすることです。


そのためにまず必要なことは、医療、介護の現場における人材の養成であり、その要件は待遇改善です。例えば、同じ職種は何年経っても同一賃金でなく、実績と経験に応じて年々昇給していく給料表があってしかるべきです。そういう視点での給付加算があっても少しもおかしくないと思います。志をもって働く人が将来の生活設計を描くことができて、使命感を持って働ける職業にならないと利用者の安心も得られません。


■ 消費税率アップは不平等


社会保障は国民の相互扶助で成り立つもので、応分の負担がなければ成立しません。


福祉目的に限定した消費税率アップの議論がすぐ出てきますが、低所得者ほど負担が重くなる消費税率アップは不平等であり反対です。必要な財源は所得税、法人税の増額で補完すべきです。今の高額所得者の最高税率40%は優遇し過ぎです。


税率引き上げの余地はあると考えます。法人税についても福祉負担の視点で見直すべきです。


個人や法人の所得は本人の努力の結果に違いないですが、多くの人に支えられた利益ですから、応分の還元をすることは格差是正の点からも必要なことではないでしょうか。


ちなみに財源を理由に、現在の介護保険の自己負担1割を引き上げるようなことをしてはなりません。介護家族の生活は破綻します。例えば私の場合、要介護5の妻を在宅介護していますが、月20日ぐらいのサービス利用で平成16年は自己負担2万4千円ほどでしたが、17年の見直しで3万7千円ほどになり、自己負担は1割と言っておきながら、実質自己負担は1割5分ほどになっています。


この他、おむつ代など1万5千円ほど支出があり、年金暮らしには限界を超えています。


社会保障制度がこのままではいけないことは明白です。早急に道筋をつけて、経済大国を実感できる100年安心の社会保障制度を確立すべきです。


2009年10月25日発行会報「ぽ~れぽ~れ」351号より

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