支部だよりにみる介護体験

長崎県支部版(09年7月号No.348)


“人生を生ききってほしい”夫に寄り添って


長崎県支部 神原千代子


●「疲れたナー」と思う日々…


本日…2009年9月9日。


今朝、6時過ぎに起きて、夫のベッドを見に行く。「お早う!」と声をかけると、うっすらと目を開けて「お早う!」と目で合図をしてくれた。すぐにオムツを交換し、身体を右に左に動かしながら服の着替えを済ました。体重が80kg近くあるので、これぐらいでも身体が下に下がりベッドから足がはみ出してくる。庭の水撒き等を済ませ、7時半頃、また様子を見に行くと何やら臭ってくる。「うんちが出てよかったね!」と言いながら排便の処理をしていると、今度は、シーツまで水浸しになってしまった。2回目の着替えを済ませたらもう8時を過ぎていた。デイサービスの迎えが9時前後だから早く朝食を食べさせなければ…と焦る気持ちを抑え、ベッドからずり落ちそうになっている夫の身体にリフト用のシートを装着し、リフトを操作して車椅子に移動させた。顔から玉のような汗が湧いて出る。かなりパワーを吸い取られたので「疲れたナー!」と思うが、次の作業が待っている。食事を全介助し、服薬、髭剃りを済ませてデイサービスの迎えを待つ…の日常である。


●頑張ってしまって身体が悲鳴…


夫は66歳。6年前にアルツハイマーと診断を受け、現在は要介護5となっており、自分では何もできないレベルになっている。デイサービスを介護保険の枠を超えて毎日利用している日々である。


何とか在宅で看ていきたいとの思いも強く、急激に心身が衰えていく夫に、客観的判断ができにくくなっているであろう62歳の妻である。ついつい介護を自分で頑張ってしまっている。例えば、利用している介護施設の薦めでリフトとベッドの利用を数ヵ月前より始めたが、それ以前は本人の身体の機能低下を少しでも遅らせたいと思い、布団に寝かせて介助しながら寝起きさせていた。


これが、結果的に私の身体に負担をかけることになり足に水が溜まったり、手のしびれやひどい肩こりでの激痛となった。


どこに治療に行っても「今まで無理をしましたね!」と言われる。折々に整形外科で水を抜いてもらい、針、マッサージ、整体等でしのいでいる現状である。


介護は、頑張りすぎてはいけない!時々息抜きしないと潰れるよ!と周囲から注意をうける。自分もそうだ!そうだ!と思い計画的にショートステイに預けて、旅行したり関東と東北にいる娘や孫に会いに行ったりもしているが、なにしろ、しんどいナーと思うとき交代要員がいないので、いつのまにか疲労が蓄積してくる。


●在宅介護だからできる寄り添い…


言葉がほとんどなくなった夫であるが、目がしっかり話をしている。時々、私が繰り返し言うと「わかっとる!」と言われてしまう。ベッドの傍に行くと「あー…よかった」と笑顔で安心してくれる。現在、整体師の施術や歯科衛生士のブラッシングを定期的に受けている。在宅介護だからできることでもある。


“人生を生ききってほしい”と切に願いながら、悲喜こもごもの思いで夫の傍に寄り添っている妻である。


2009年11月25日発行会報「ぽ~れぽ~れ」352号より

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