新年のごあいさつ

代表理事 高見国生

結成30周年の年を迎えました。会員のみなさん、ご支援いただいているみなさまに、新年のごあいさつを申し上げるとともに、みなさんにとって幸い多い年であることを願っています。

さて、ふり返れば30年ひとすじの道でした。ひたすら認知症の人と家族の幸せだけを求めてきたひとすじの道――。

行政施策は皆無、社会的理解は低くむしろ誤解や偏見が強かった時代に立ち上がった家族は、勇気をふるって実情を語り、介護の社会化の必要性を訴えました。仲間の輪は徐々に全国に広がり、認知症の問題を社会の問題に押し上げてきました。

結成20年を経て、介護は社会的に支えるべきとする機運が盛り上がり、介護保険が誕生。2004年には、認知症の本人が語りはじめ、差別的な「痴呆」の言葉が廃止され、認知症への理解が飛躍的にすすみました。

しかしその後、政治の流れもあって社会保障が後退、介護保険も費用負担や使いにくさが増しました。「家族の会」はこれに抗し、要望や提言で改善を求めてきました。

「家族の会」がひとすじの道を歩み続けられたのはなぜか。それは活動が一貫してぶれなかったからです。活動の基準を、常に認知症の人と家族の幸せにおいてきたことです。

その第一は、家族どうしが励ましあい助けあうこと。事態は何も変わらなくても、同じ苦労をする仲間がいることを知ることで、孤立を防ぎ介護への勇気をわかせました。30年の間にどれだけの人が「家族の会」で力を得て介護を続けられたことか。

第二は、本人と家族の力だけではどうにもならないことは、社会の仕組みをよくするように求めたこと。制度の充実によってこそ、本人も家族も尊厳と希望を持って生きられるのだという主張を通してきました。そのことを、特定の政党や個人に頼ることなく正面から国や自治体にぶつけてきました。

第三は、自分だけの幸せ、会員だけの利益を求めなかったこと。誰にも適用される施策の実施を求め、少しでも対策がすすんだ時には心から喜びました。解決されるべき課題は山積しているとはいえ、30年前と比べると目覚ましい制度の充実を促しました。

第四は、私利私欲なく、「ぼけても安心して暮らせる社会」を求める働き手をつくってきたこと。個人の介護体験を自分のことだけに終わらせず、他の家族のために生かし、社会の関心と理解をすすめるために働き、制度の前進を求めることに力を注ぐ人たちを育てました。全国で800人を超える支部世話人たちはその中心です。

さらに第五は、認知症の人を大切に思い続けてきたこと。介護の中から、「ぼけても心は生きている」ことに気づき、認知症の人本人を組織と社会の主人公に位置づけて、病気を持っても尊厳をもって生きられるように取り組んできたことです。

これらのことを、“30年一日”のごとくかたくなに守り通してきたことが「家族の会」の誇りです。昨年、30年目にして「家族の会の理念」を定めました。曰く、「ともに励ましあい助けあって、人として実りある人生を送るとともに、認知症になっても安心して暮らせる社会の実現を希求する」。

結成記念日の1月20日、全国44の支部と本部の事務所に、理念の銘板を掲げました。これからもひとすじの道を歩みつづけることを心に誓って。

ことしも変わらぬご指導ご鞭撻をお願いして、新年のごあいさつといたします。

(なお、30周年記念式典及び記念公開講演会は、6月5日・6日に京都で開催する予定です)

2010年1月25日発行会報「ぽ~れぽ~れ」354号より

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