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Alzheimer's Association Japan |
若年期(65歳未満)認知症について
三宅貴夫(京都南病院老人保健施設「ぬくもりの里」医師)
社団法人呆け老人をかかえる家族の会は、会の名称からもわかるとおり、発足当初、専ら認知症の老人の介護家族が相互に助け合い、さらに介護家族への社会的な理解と援助を求めました。
しかし、家族の会の活動を続けるなかで老人でない認知症の人の介護家族からの相談がいくつかあり、初めてそうした患者がいること、またその介護に日々明け暮れている家族がいることを知りました。しかしそうした家族からの相談があっても、家族の会として個別的に対応していました。
こうしたことが増えるなかで老人でない認知症の人の介護は、認知症の老人とは違った困難な問題があることを家族の会として少しづつ理解するようになりました。
家族の会が発足して間もない時期に認知症の老人の家族の介護の全国的な実態調査をしましたが、それと同様に老人でない認知症の人とその家族の介護や生活などの実態をより詳しく把握するために会員を対象に1991年にアンケート調査を行いました。これも老人でない認知症の人と家族についての全国的な初めての調査でした。その結果から経済的問題、家族内・対社会の問題、制度利用の問題などが明らかになりました。
この結果をもとに家族の会は、1992年、厚生大臣に要望をしました。その主旨は「認知症の老人と同等の社会的援助」でした。こうした家族の会の活動は、老人でない認知症の人とその家族への社会的な関心よび、また厚生省に「初老期における認知症対策検討委員会」が設置されて、委員会としての提言が出され、それに沿って老人保健施設などで「初老期認知症」の人も利用できるようになりました。
その後、家族の会としてこの課題を積極的取り上げることがあまりありませんでした。しかし(社)家族の会の奈良県支部での「初老期認知症家族会」の活動 東京都支部や愛知県支部での集いなど、再び(社)家族の会で老人でない認知症の人とその家族についての関わり強くなり始めました。
こうした時期にあって、(社)家族の会の会員の方々に、高齢期でない認知症とその人、その介護家族について正しい理解をし、援助の現状とそのあり方を考え、(社)家族の会としてどのような活動を行ったらよいか検討する参考に今月から「初老期認知症」の連載を始めることにしました。
1)名称について
老人でない人の認知症については「初老期認知症」とか「若年性認知症」などいろいろな呼び方、用語が使われ、未だ一定した名称がないのが現状です。「認知症」「ぼけ」と同じように言葉の意味が正しく力していないと共通の理解ができないし、議論や検討が成り立たないので、最初に例をあげてこの用語を取り上げます。
(1)初老期認知症
最も広い使われていつ用語です。しかし初老期とは高齢期の始め頃という意味、即ち現在では65才から70才未満の時期とも解釈できるし、辞書によると初老とは40才と書いてあります。医学用語としての初老期認知症は、英語のpresenile
dementia(直訳すると「前老年性認知症」)の訳語で、一般的に40才、50才代の認知症として使われているようです。これでは20才代、30才代の認知症が除かれることになります。
2)若年性認知症
若年性認知症とは、文字通り若い時期の認知症ということになり、20才、30才の認知症を意味することになります。実際「若年性糖尿病」は、生まれつきの10代から20代にかけての糖尿病を言います。これでは40代、50代の人が除かれることになります。もっとも若年性認知症という場合、老人より若い人の認知症という意味が込められていようです。この用語については英語でも一定したものはなく最もよく使われのはYounger
Dmentia(Young Dementiaではない)です。若年性認知症がこれに該当するかもしれませんが、正確な用語とは考えません。
(3)非高齢期認知症
「初老期認知症」が問題とされるのは、現在の認知症の老人対策にみられるように60才以上、65才以上、あるいは70才以上の人の認知症が対象になっているために、それより若い認知症の人が対策の対象からはずされているのです。これは介護保険にもみられるように我が国の「縦割り行政」と同時に年齢で区別・差別される「横割り行政」によるものです。従って65才未満のすべての認知症を含める用語として「非高齢期認知症」が最も正確と考えます。
(4)早発性(型)認知症
これは英語で使われているearly onset dementia(初期認知症を意味するearly
dementiaとは異なる)の訳語として使われることがあります。国際的に使われている精神障害の診断基準であるDSM-Wではアルツハイマー病を65才未満で発病したのを早発型アルツハイマー病と定義しています。
これらの4つの用語のどれがよいかいろいろな意見があると思われ、今後議論され広く認められた用語が定めまることが必要でしょう。
なおこの連載ではとりあえず「初老期認知症」の言葉を使います。
2)初老期認知症の原因となる病気と症状
(1)アルツハイマー病
初老期認知症のなかで最も多いのがアルツハイマー病です。最近、65才未満で発病する場合を早発型アルツハイマー病と呼ぶことがあります。65才と以上で発病する場合は晩発型アルツハイマー病といいます。
症状はどちらの型も同じで、いつとはなしに発病し、最初に目立つのが物忘れ(記憶障害)です。その後、仕事ができにくくなったり、日常的なことで間違いが多くなったりして一人では生活できなくなります。
症状は時にゆっくり、時には急に進み、失禁、徘徊、普通口にしない物を食べようとしたりします。さらに進むとそれまで残っていた感情もかなり乏しくなり、意欲もなくなり、一日中ぼんやりしたり、寝たきりのような状態になります。末期には自分で食べることも飲み込むこともできないなってしまいます。
このアルツハイマー病は、早発型の一部に遺伝による場合があります。しかしアルツハイマー病の原因や成り立ちがかなりわかってきていますが、遺伝、環境、加齢など複合的原因で発病すると考えられています。 アルツハイマー病は初老期認知症を代表する病気ですが、アルツハイマー病そのものは年をとればとるほどなりやすい、むしろ高齢者に多い病気なのです。
(2)脳血管障害(脳卒中)
脳血管障害は、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の3つの脳の血管の病気を総称したものです。脳血管障害による認知症を脳血管性認知症と、また単に血管性認知症と呼ぶこともあります。
脳血管性認知症は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血のいずれでも起こりうるわけで、65才未満で脳血管障害を発病し認知症になれば初老期認知症と呼びます。
脳血管障害は、普通、突然に発病し、多くの場合は左側または右側の手足が動きにくくなる運動麻痺が現れ、認知症だけの症状ということは稀です。しかし朝起きた時、手足はどうもないが、家族の名前が出てこない、電話をどうかけてよいかわからないといった事が起き、始めから脳血管性認知症にることはあります。しかし多くの場合、脳血管障害を繰り返すなかで認知症が現れ進んできます。 この脳血管性認知症も特に初老期に多いというものでなく、高齢者の認知症の約半分を占めています。
(3)ピック病・前頭葉型認知症・前頭葉型認知症
ピック病(ピック先生が報告した病気)は、アルツハイマー病や脳血管性認知症と比べ初老期に多い認知症と言えます。しかしピック病は、始めからもの忘れなどの認知症の症状が出てくることは少なく、性格の変化や
日常的な行動の変化として始まることが多い病気です。穏和な人だったのに短期になる、几帳面に仕事をしてたのに休むことが多くなる、下着が汚れても気にしなといったことで家族がおかしいと気づくきます。病気の最初の頃は記憶は比較的しっかりしているので「なまけている」とかと思っているうち、あまりに自分中心的で家族の言うことを聞かないので相談されることが多いようです。病気が進むと、認知症の症状が目立ちます。
この病気は頭のCTを撮ると、大脳の前の方(前頭葉)だけが萎縮していることがわかり病気の診断の重要な参考になります。
従って、ピック病は、広く「前頭葉型認知症」の一部とも考えられいます。
「前頭葉型認知症」あるいは「前頭葉側頭葉認知症」では、自発性の低下、緩慢な行動から始まり、病気が進むと言葉の障害や同じことを何度も繰り返すといった行動が目立つのよになります。
これらの病気の原因は不明です。
(4)レビー小体病
大脳の皮質(一番表面の部分)にレビー小体(レビー先生が発見した)が認められるこの病気は、記憶、思考、判断、言語、簡単な作業などが障害されます。人によっては幻覚やパーキンソン病のように身体が硬くなったりすることもあります。
原因は不明です。
(5)頭部外傷
交通事故やボクシングで頭を強く打ち硬膜(頭蓋骨の内側の膜)の下に血のかたまり(血腫)ができて認知症になることは少なくありませんが、血腫がなくても頭の強い打撲や頻回な打撲で認知症になることがあります。慢性硬膜下血腫は高齢者に多いこの病気の一つですが、30、40才代の若い人でも頭の外傷の程度によっては認知症になることがあります。
(6)クロイツフェルト・ヤコブ病
一昨年、イギリスの牛の肉を食べて認知症になり、「狂牛病」として騒がれたことがありましたが、これがクロイツフェルト・ヤコブ病(簡単にヤコブ病と呼ぶ。クロイツフェルト先生とヤコブ先生が報告した病気)と同じと言われています。わが国では、脳外科で使う他人の硬膜から感染してこの病気になった人が少なからずおり、薬害のひとつとして裁判になっています。
原因はプリオンで、ビールスより小さい病原体で伝染する認知症で、病気の進行は早い。
(7)その他
この他に、手がふるえ身体が硬くなる「パーキンソン病」が進んだ場合、身体が踊っているような症状の「ハンチントン病」が進んだ場合、片側の腕や指の運動がうまくできなったりする「皮質基底核変性症」でも認知症がでることがあります。「脳腫瘍」でも腫瘍の場所や程度によっては認知症が現れます。また「エイズ」でも認知症になることがあると言われます。「ダウン症候群」の人が中年期になるとそれまでの知的障害に加え、認知症の症状が現れるこがあります。また心筋梗塞などで一時的に心臓が止まって脳に血液が行かなくなって脳の神経が死んでしまい、心臓は動き始め一命は取り留めたとしても認知症(低酸素脳症)になることがあります。一酸化炭素中毒でも脳が同じような状態になることがあります。
我が国での65才未満の初老期認知症の人がどの程度いるかは、正確には分かっていません。その理由の一つは認知症の性老人より関心が薄く研究者が少ないことがあります。また実際に調査しようとしても130万人と言われる認知症の性老人よりはるかに数が少なく、患者が「まばら」にしたいないために「疫学」調査が行いにくく正確な数がつかみにくくしています。
こうした限られてなかで、(社)家族の会が1991年10月に行った全国の実態調査から、40才から64才までの年齢の認知症の人が全国で8.3万人のいると推計しました。最近では、1998年に厚生省の研究班による若年性認知症の実態調査では18才から64才までで全国で2.6万人の認知症の人がいると報告されています。
(社)家族の会と研究班との数字を大きな開きの原因は、調査方法が全く異なることにより、どちらがより実態に近いかは明らではありませんが、実数は両者の間に入るのではと考えます。
ちなみにイギリスのアルツハイマー病協会の報告によると、同国で40才から64才までで認知症の「有病率」は人口1000人に対して1人で、全国で約1.7万人と居るとしています。
この友病率を我が国に当てはめてみると、40歳から64歳までの人口が3600万人ですから、初老期認知症は3.6万人になると推測されます。しかしこれはあくまでもイギリスの場合であり、我が国でより詳しい調査が待たれます。
初老期認知症の医療は、認知症の原因によって異なりますが、一般的に医療は限られたものであり、治癒につながる治療になるとさらに限られていると言えます。
(1)アルツハイマー病
アルツハイマー病の原因は解明されつつありますが、病気の全体の姿が分かったわかけではありません。しかしアルツハイマー病の病気の状態のひとつとして、脳内の神経に関係した物質の一つのアセチルコリンが脳の特定の部分で減少していることが以前から発見されています。このアセチルコリンを増やせば、アルツハイマー病がよくなるのではと考え開発された薬が、発売された順序でいうと、「コグネックス」「アリセプト」「エキセロン」の3つです。基本的にはどれも同じように脳内のアセチルコリンを増やす薬ですが、
「アリセプト」は我が国のエーザイが開発され、1日1回の服用でよく、副作用が少ないなどのため欧米を中心に最も広く使われています。但し、実際にはすべてのアルツハイマー病に効くわけではなく、軽度から中程度のアルツハイマー病に有効とされています。できるだけ早く時期に使えてば使うほどよいとも言われています。しかしこの薬でアルツハイマー病が治るわけではなく、一時的に知的機能を改善したり、進行を遅らせる働きに限られています。この薬の効果の限界を知りながら適切に使われべきもとと思われます。
10年前には全く薬が何もなかったのと比べるとアルツハイマー病の治療の大きな進歩であり、この種の薬がより治癒につながる薬、さらには予防方法につながる発見がなされるかもしれません。
ところで「アリセプト」は日本に製薬会社エーザイが開発した世界的な薬であるにもかかわらず、アメリカに始まっってヨーロバに拡がり、隣の韓国まで使われるようになっていながら我が国は未だ承認されていません。遅くとも来年始めまでには厚生省の承認が得られ日本のアルツハイマー病の人に使われるようになるのでしょう。その時に大切なことはアルツハイマー病の正確な診断です。この薬はアルツハイマー病にしか有効でないのです。
(2)脳血管障害(脳卒中)
脳血管障害による認知症(脳血管性認知症)の医療は、老人と同様に根本的な治療の方法はありません。しかしアルツハイマー病と違い、脳血管障害の原因と思われる高血圧、糖尿病、高脂血症などの治療や管理を適切に行い、脱水などにも注意することです。
一般的にアルツハイマー病と比べ、
脳血管性認知症は進行することなく知的機能も横這いのことも少なくなく、また通常の理学療法や作業療法などあるいは「生活リハビリ」などを試みるなかで知的機能が改善することも稀ではありません。
最近評判が悪い「脳代謝賦割剤」「脳代謝改善剤」は認知症の中心症状を改善することは少なく、実際にあまり期待できない薬と考えます。もっとも試みに使用することまで否定はしません、脳血管性認知症への多面的な医療の一部として限られて使われもでしょう。。
忘れてはならないことは脳血管性認知症の予防です。高血圧など脳血管障害になりやすい状態や病気をきちんと治療することで脳血管性認知症のかなりのものは予防できるはずです。
(3)ピック病・前頭葉型認知症・前頭葉側頭葉型認知症
これは原因も不明で治療の方法も全く分かっていません。病気が稀なこともあり、アルツハイマー病ほど脚光を浴びていないので原因や治療の研究も限られた医師や医学者達でしか行われていません。
(4)レビー小体病
これもピック病と同じです。治療についてはほとんど手がつけれられていません。この病気については我が国の優れた研究者が出ていますが、医学界でも社会的にも注目されていません。
(5)頭部外傷
一度症状が出てからの治療が困難です。治療より予防。交通事故、労働災害、ボクシングなどで頭を頻回に殴られることを避けることです。
(6)クロイツフェルト・ヤコブ病
これはプリオンという伝染性の病原体で発病し、グルメが過ぎて哺乳類の脳を食べるのは辞めて方がよいでしょう。プリオンに感染した肉で感染するかもしれません。また以前は人の脳の硬膜を移植して感染させられた人もありましたが、現在はないはずです。この病気も治療より予防です。
(7)その他
@パーキンソン病
パーキンソン病には、多種多様な薬があり、手のふるえや体が固くなる「神経症状」は軽減され、病気の進行を遅くすることができますが、病気そのものを治すわけではありません。病気が進行してでてくる認知症の症状を改善する治療の方法はないのが現状です。
Aハンチントン病
体が意志に関係なく動いてしまい、踊っているような動き認知症がでてくるこの病気も治療法がありません。
B皮質基底核変性症
片側の腕や指の運動がうまくできなったり認知症も伴う「皮質基底核変性症」も治療方法がありません。
C脳腫瘍
症状が認知症だけという脳腫瘍は稀ですが、認知症に気づき脳腫瘍を早期に発見して脳外科的な治療で認知症が治ることはあります。
Dエイズ
エイズについては最近いくつかの有効は薬があり、進行をかなりくい止めらようになり、認知症状態になる人は少ないようです。
Eダウン症候群
この病気の認知症についての治療はよくわかっていません。
F低酸素脳症
エイズと同様に予防が重要ですが、一度低酸素の状態で脳の神経細胞が破壊されると後いくら脳に酸素を送っても再生することは殆どありません。
これまで述べてきたように初老期の認知症も高齢期の認知症と同様にたとえ良くなることはあっても治ることは難しい病気が多く、アルツハイマー病のように進行するものも少なくありません。従ってこうした初老期認知症には介護が中心となります。
しかし初老期認知症は病気の種類が多く、その病気の特徴、進行の仕方、や程度によって介護の方法も異なってきます。アルツハイマー病にはアルツハイマー病の状態にあった介護があり、ピック病にはその障害にふさわしい介護の方法があります。
ただ、どの病気にも言える介護の基本的は、病気によってどのような認知症の状態にあるのか、認知症の人は何ができて何ができにくいのかを正しく知っておくこと、即ち病気と病気の人を知ることです。また認知症の老人と同様、初老期認知症の人も知的機能は障害されていても人としての感情は残っていることが多いことも介護をするうえで注意しておきたいことです。さらにパーキンソン病のように手がふるえるといった神経の症状などが伴うことが多いので身体面でもどのような状態にあるか知っておくことも大切です。
しかしながら、初老期認知症に詳しい医師など専門職が少なくのが現状で介護家族は何処で誰に相談してよいか戸惑います。(社)家族の会ではこの面での取り組みを始めたばかりです。
初老期認知症の介護についてはよく分かっていないこともあり、原因となる病気によってどのような介護がふさわしいのかもっと介護家族の経験を聞いておく必要もあります。
ここでは初老期認知症の代表的な3つの病気について述べます。
1)アルツハイマー病
アルツハイマー病の介護は高齢期と基本的には同じでが、初老期の男性では会社での仕事に失敗が多くなるとか、女性では毎日していた料理が下手になるとか、初めの時期は本人が混乱して悩んでいても、周囲の人は怠けているとか、疲れていると誤解することがあり、注意されると本人は一層混乱してうことがあります。うつ状態と見分けておく必要もあり、発病に早く気づくこと、早い時期の正しい診断を受けることが大切です。できにくくなった仕事は少しづつ少なくし、できる範囲での仕事を続けてもらいましょう。初老期のアルツハイマー病の人で対応に困るのが車の運転です。キイーをどのように取り上げたらよいか、車を運転できないようにどうしたらよいか、免許証を取れないようにする法的なことも考えならないこともあります。しかし我が国ではこの点の検討はほとんどされていません。もっとも私の知る限り幸いアルツハイマー病の人の交通事故は意外に少ないようです。介護家族がいろいろ工夫されているためでもあるからでしょう。アルツハイマーが一層進み、外出して家に帰れなくなる、失禁をするなどの状態では高齢期と同様です。初老期のアルツハイマー病は、一般に高齢期と比べ進行が早いようです。
まだ限られてはいますが社会的援助をうまく利用しながらできる範囲で在宅での介護を続けるとよいでしょう。しかし在宅でみれなくなった場合の施設といえば精神病院など限られており、しかもそこで初老期のアルツハイマー病の人を適切にみてくれるかどうか心配はあります。
2)脳血管性認知症
初老期認知症でアルツハイマー病と同様に多い脳血管性認知症も介護の基本は高齢期と同様です。脳血管性認知症では「まだら認知症」が目立ち、できることとできないことをよく見分けておきます。また感情の動揺も多いのですがそのまま受け止めてあげるのがよいでしょう。アルツハイマー病と比べ脳血管性認知症はあまり進まないか、よくなることも稀ではありません。精神面に配慮すると同時に、高血圧や脱水など体の面にも注意するようにします。
3)ピック病
ピック病は初老期認知症のもっとも特徴的な病気と言ってもよいでしょう。既に述べたようにこの病気は初期には記憶など知的機能の低下は少なく、性格の変化が目立ちます。それまで熱心にしていた仕事を無断で休んだり、几帳面にしていた家事がだんだんルーズになったりします。説明、説得しても分かったような返事をしても、また同じことを繰り返したリ、頑なに自分の決めた方法や生活を守ろうとします。言い張ることは一見筋が通っており、説得はあまり効果が少ないでしょう。介護の基本は、まずは相手の生活習慣を受け入れてあげることにあると思います。そのなかで本人の注意が行き届かないところは気を配り、失禁があるとそれとなくトイレに連ていってあげたり、入浴を嫌がり体が汚れてくると、それとなく風呂を勧めるかシャワーで済ませるか、下着をそれとなく変えてあげるようにします。ピック病の人はデイサービスや短期入所を嫌がることが少なくありませんが、介護者のためにも試みに利用してみましょう。
期認知症の患者と家族の置かれている状況は、基本的には認知症の老人と同じかもしれません。しかし(社)家族の会の調査でも明らかになった以下のいくつかの特徴を指摘することができます。
1)家族の精神面や関係について
働き盛りの50才代半ばの夫、結婚していない娘のことを気にしていた50才過ぎの妻、子供にしてみれば頼りにしていた父や母が初老期認知症になることは家族にとって考えてもみなかったことで、その悲しみは計り知れないでしょう。
認知症といえば高齢者のこと、もっと先のことと思っていたが、話したこともすぐ忘れてしまうひどい物忘れで会話がまともにできない、トイレでの失敗が多くて部屋での失禁もあり家中を臭くしていまう夫。あるいは夫や子供の顔も忘れ、昼間は落ち着きなく家中をうろうろし、夜間は大声を上げて「おあかーさーん」と泣き叫ぶ妻。こうした姿を毎日毎日見る家族は、その変わり様を嘆き悲しむでしょう。
「おかしい」と思い病院に連れて診察を受け「アルツハイマー病です。治りません。」と言われ、やはりそうだったのかとの落胆と救いようのない気持ちと将来の不安が募ります。診断が間違っているのではないか、治る病気ではないかと病院や医者をいくつか巡る家族もいます。結果的に不治の病と分かっても、どうして夫や妻がこうした悲しい病気にならなければならいのか納得できないでしょう。80才も過ぎた高齢者であれば分からないでもないが、周囲に同じ年代で元気に働いている多くの人達を見れば見るほど辛い気持ちになります。さらに親は、そうした姿を子供にどう説明しようかと思い悩みます。
初老期認知症の人の場合、まだ在学中の子、結婚していない独身の子がいるでしょう。幼い子供がいると、初老期認知症の親の姿を見ることは子の成長に好ましくないかもしれません。また結婚の話があっても初老期認知症の親のことで縁談がまとまらないことも起こるかもしれません。あるいはアルツハイマー病は遺伝するとの誤解のなかで社会的な偏見や差別を受けるかもしれません。
2)経済な問題について
初老期認知症の人の大きな問題に経済的なことがあります。同じアルツハイマー病でも90才の人と50才の人では、その家族への経済的な影響はかなり異なります。50才頃アルツハイマー病を発病すると、仕事で失敗が多くなり、自分でもおかしいを思いながらも、家族に隠して、自分なりに注意して仕事を続けてようとします。しかし失敗は重なるばかりで上司から忠告を受け、配置転換されたものの、やはり失敗が続き、退職せざるをえなくなります。退職金は受け取ったものもその後の月々の収入は激減し、家族の生活は困窮するでしょう。自営業者でも同様です。妻は介護のため働きにいけず、子供に学校をやめさせ働かせたという家族もいます。
専業主婦が発病した場合は少し事情が異なりますが、やはり家族への経済的な影響はあります。物忘れがひどくなり、頼んだことをほとんどしてなかったり、勤めから帰っても夕食の用意をしてなかったり、勤めに行こうとしても妻は不安がって出勤を嫌がることもあります。このため夫の勤務に支障をきたすことが多くなり、勤めを続けるべきか、妻を入院・入所させるかを決めなければならなくなります。会社を辞めて介護に専念することになれば、収入は断たれるかもしれません。娘に勤めを辞めさせて親の介護にあたらせても同じことでしょう。
家での介護ができないと、どこか−その多くは精神病院のようです−で看てもらうにしても面会や身の回りの用意などで出費はかさむでしょう。こうした家族への経済的な支援は限られた制度のなかでしか利用できない現状があります。
3)制度利用の制限について
認知症の老人と家族に対しては「認知症の老人対策」として、ここ10数年の間にさまざまなサービスや制度がかなり増えてきました。サービスのメニューは、ほぼ出そろったと言ってもいいくらいです。その多くが認知症の老人を対象にしたもので、初老期認知症の人とその介護家族を対象にしたものではありません。初老期認知症だけを対象にした制度などはないのです。このため介護家族は、初老期認知症の人と生活を続けるうえで必要な社会的な援助を受けることが極めて困難な状況に置かれています。 これは我が国の保健・医療・福祉の制度が、その対象疾患などにより縦割りの区別・差別されていると同時に年齢による「横割り」の区別・差別があるのです。介護保険もそのよい例でしょう。従って同じ認知症であっても65才以上と65才未満では、受けられるサービスが異なってしまいます。もっともサービスによっては「おおよそ65才以上」という基準で60才でも利用できる場合がありますが、50才代となると利用はかなり制限されてしまいます。
しかし(社)家族の会の働きかけなどもあって制度として例えば老人保健施設などで初老期認知症の人が利用できるようになっています。しかし実際にはなかなか利用しにくいのが現状です。高齢者の認知症の人と初老期の認知症の人とを同じ施設で同じように介護することは難しく、結果的に利用を拒まれることがあります。
限られているとはいえ、初老期認知症の人でも利用できるサービスはあります。通常の外来診療、往診、一部のデイケア、あるいは手当、障害年金などですが、これらを上手に利用していく工夫も必要でしょう。
また(社)家族の会は、集いなど初老期認知症の介護家族への取り組みを始めています。各支部でとにかく、2月に1回でもよいから初老期認知症の集いを定期に開催しましょう。専門職は少ないかもしれないが、探して集いに参加してもらいましょう。さらに集いが内輪の集まりだけにしないで、マスコミなどに知ってもらい、初老期認知症の問題を社会に訴えていく努力も欠かせないと思います。こうすることが介護家族の精神的な支えと共に社会的な支えが拡がり、社会的な援助の充実につながることが期待されます。
初老期認知症の人と家族への社会的サービスが年齢的に制限されていること、また初老期認知症へ独自のサービスはないことは述べました。
既にある認知症の老人と家族への多くの社会的サービスのなかで初老期認知症の人も利用できるものがあるかどうか点検してみたいと思います。もっとも私自身全国くまなく調べたわけではないので内容に間違いがあれば教えてください。
@老人精神保健相談
保健所で行われいる相談です。一応、老人が対象ですが、初老期認知症だからといって断られことはありません。精神科の医師や保健婦とのつながりも出来るのでおおいに相談の利用を勧めます。ただし保健所によって熱心でないところもあるかもしれません。
A老人性認知症疾患センター
これも一応老人の認知症を対象としていますが、初老期認知症だからと断られることはないはずです。初老期認知症の鑑別診断から治療や介護や生活の相談にのってくれます。もっともこのセンターは1都道府県に数カ所しかなく、遠方の人は利用しにくいかもしれません。
B保健婦の訪問
市町村と保健所の保健婦の地域での活動に精神保健があり、特に保健所の保健婦が行っています。そのなかに当然、初老期認知症も入っています。保健婦は訪問していくれるので、認知症の人を連れていくにくい場合などの時に訪問を依頼してみましょう。
C外来診療
外来診療といっても初老期認知症の外来診療は全国的にも極めて少ないのが現状です。「もの忘れ外来」「認知症外来」などで初老期認知症の人の診療は行われています。また精神科、神経内科などでも初老期認知症を診ている場合がありますが、専門医が少ないのが現状です。また外来に連れてゆくのが難しいのは老人以上かもしれません。こうした実状に配慮した外来診療が望まれます。
D往診・訪問診療
往診は患者や家族の希望で緊急または不定期に医師が訪問して診察することで、訪問診療は患者・家族の了解のもとに医師が定期的に訪問して診察することを言います。通院が困難な場合は、こうしたサービスが利用できますが、認知症に詳しい医師は少ないでしょう。もっとも往診や訪問診療が必要な初老期認知症の人は身体的な障害が重くなている人が多いのでので必ずしも認知症に詳しくない内科の医師でも十分対応できると思います。
E訪問看護
最近は訪問看護ステーションからの看護婦の訪問が多くなっています。医師の指示が必要ですが、通院が困難な初老期認知症の人への訪問看護も往診の場合と同様に大いに利用したいサービスです。当然のことですが訪問看護婦にも初老期認知症に理解を求めたいものです。
Fデイケア
病院や診療所のデイケアでは年齢制限があり、利用は困難と思われますが、病院や診療所へ相談してみましょう。利用できる場合もあるようです。またこれとは別に精神科デイケアで初老期認知症の人が利用できます。後者は精神科診療所や精神病院で行われていますが地域によっては利用しにくいかもしれません。
初老期認知症の人が通所できる様な心身の状態であるかどうかもサービス利用を左右します。
また、たとえ利用できることになっていても、実際に高年齢の老人と一緒にみてくれるのか、みてくれることがよいのか、また精神科デイケアでも若い別の精神障害の人の一緒に過ごせるのかといった問題があります。いずれにせよ現在のデイケアには初老期認知症を念頭においてサービスを提供しているところは皆無と思われます。
G入院
入院については認知症そのものの診断や治療のために入院する場合と認知症に合併した他の身体の病気の治療のために入院する場合があります。 前者の場合は、総合病院・一般病院では内科、神経内科、脳外科などに入院する場合が多い。これは認知症の老人と特に変わりなく入院には一般に困難なことが多く、家族が付き添ったり、個室に入れられたりということになります。精神症状が強い場合、精神病院に入院する必要がありますが、この場合は老人性認知症疾患治療病棟や療養病棟で対応される場合の他は、一般の精神病棟で治療を受けることになります。
正確な情報ではありませんが、初老期認知症の人の多くは、在宅生活が困難で他に診てくれ病院や施設がない理由で精神病院に入院している人が多いと思われます。一昔前の認知症の老人のように。
H老人保健施設
老人保健施設で認知症棟のある施設では初老期認知症の人が入所できます。これは私たち(社)家族の会が厚生省へ働きかけて実現したと考えているサービスです。しかし現実には50才のピック病の人と90才の脳血管性認知症の人とが同施設で療養できるかという現実的な問題があります。このため対応が困難と思われる場合は老人保健施設が初老期認知症の人の入所を断っていることがあるようです。老人保健施設でのショートステイもデイケアも同様です。
I老人ホーム
特別養護老人ホームや養護老人ホームで初老期認知症の人も利用できることにはなってはいますが、実際には老人保健施設と同様に対応が困難な場合は断っているようです。これはやむをえないことと思われます。長期入所、短期入所などで老人保健施設や老人ホームでの初老期認知症の人をどのようにみるかは何処も経験が少なく、今後の緊急な課題として取り組まなければならないことです。
Jショートステイ(短期入所)
老人ホームのショートステイも初老期認知症の人と介護家族は利用できることにはなっていますが、高齢者との共同生活は実際には困難であり、利用は制限されているようです。
K老人デイサービスセンター
先に述べたデイケアと同様で高齢の認知症の老人と若い初老期認知症の人と同じデイサービスセンターでみるのは難しいでしょう。デイケア、デイサービスセンターでの初老期認知症への対応のついては積極的に検討すべき課題です。
Lグループホーム
現在全国的に普及しつつあるグループホームには、公的援助を受けている所とそうでない所があります。
前者の場合のグループホームでは初老期認知症の人はみてくれません。後者の場合はみてくれるところがあります。しかし、小規模家庭的で施設らしくない施設で認知症の老人と初老期認知症の人とが一緒に生活することには多くの問題があります。デイサービス、デイケア以上に難しいと思われます。
M宅老所・託老所
これは公的な援助を受けない民間団体が自主的に運営しているところなので、利用者の年齢制限は基本的にはありません。初老期認知症の人でも利用できますが、先に述べたデイケア、デイサービス、グループホームと同様の問題がありますが、利用できる宅老所・託老所は積極的に利用してみましょう。
Nホームヘルパーの訪問
初老期認知症の人の家にホームヘルパーが訪問することは認められていないはずです。しかし初老期認知症の人が身体障害を併せもっていると対象となります。初老期認知症だけでは対象にならないのは他の精神障害者と同様ですが、こうした年齢制限も廃止すべきです。
O在宅介護支援センター
この支援センターは高齢者の在宅介護の要ですが、活発なことろとそうでないところがあるようです。一応、高齢者の在宅介護を対象としていますが、初老期認知症の人の家族が相談してもかまいません。相談をどんどんしてその地域で受けられ援助にどのようなものがあるか知っておくのがよいと思います。とにかく相談に行き、センターの職員と知り合いになり、直ぐには援助が得られなくとも初老期認知症の人が家族のことをよく知ってもらいましょう。
P介護手当
介護手当にはいろいろあります。そのうち「特別障害者手当」は国の制度として以前からあり、重度の身体障害の他に精神障害をも対象として、その介護にあたる家族に支給されます。現在月額2万円程度です。当然、初老期認知症も対象となっていますが自分で日常生活を営むことが困難で常時介護が必要をされる状態とかなり重症でないと手当は支給されません。この制度はについては市区町村の福祉担当課に相談してみましょう。初老期認知症の場合は、申請に必要な診断書は精神科医が書くことになっているようです。
これとは別に 市区町村独自の制度としてねたきり老人介護手当、介護激励金などの介護手当があります。このほどんどは65才以上の「ねたきり老人」「認知症の老人」を対象と年齢制限がされており、初老期認知症が対象となってはいません。
Q障害年金
年金給付年齢になる前に心身の病気で退職した者で「厚生年金」に該当する被保険者に障害年金が支給されます。障害の重症度も関係しますが、軽度でも就労が不可能となれば対象となり、死ぬまで支給されます。なお「国民年金」にはこの制度がありません。
R精神障害保健福祉手帳
比較的最近できが国の制度で、精神障害者の社会生活を援助する制度の一つです。初老期認知症の人も受けることができます。しかし手帳を受けても身体障害者手帳と比べ納税控除など特典は限られています。この手帳については、保健所が扱っています。
S徘徊老人早期発見システム
全国的に普及しつあるこのシステムは、「徘徊老人」となっていますが、初老期認知症の人も利用できます。
徘徊が頻繁になるようであれば地元の警察に相談しておきましょう。未だ全国すべての地域を網羅したシステムはできていないので、生活する地域によっては利用できなかもしれません。
(21)納税控除
初老期認知症の人の家族も特別障害者控除の対象になります。福祉事務所に相談して証明証を受けるか、精神障害保健福祉手帳を提示するか、医師の診断書を添えれば控除が受けられます。もっとも税務署によっては初老期認知症のことを知らないこともあるかもしれません。そのようなことがあれば(社)家族の会に相談してみましょう。
(22)家族の会
社団法人呆け老人をかかえる家族の会((社)家族の会)とは別に認知症の老人を対象とした家族の会が全国各地にあります。しかしそのほとんどが初老期認知症を取り上げてはいないので、家族が参加するのは難しいようです。(社)家族の会の支部でも初老期認知症に取り組んでいる支部は少なくこれからの課題です。しかしどの支部も年齢に関係なく初老期認知症についての相談には大いにのっているので、支部や本部に遠慮なく相談してみましょう。
(社)家族の会と初老期認知症については、この連載の最後に少し詳しくふれたいと思います。
来年の4月から実施される公的介護保険は本来65才以上の身体的精神的障害があり介護を要する高齢者に対する制度です。
しかし介護保険の制度化が検討されれれるなかで40才以上65才未満の人(これらの人を第2号被保険者と呼びます)の一部も介護保険の給付の対象となりました。
もともと介護保険は65才以上の高齢者にしか介護保険が受けられないという年齢制限を少しでも緩和するために、また保険料を払う年齢が40才からであるが実際に介護給付を受けられるのが65才からであり25年間は保険料を払うだけというのでは被保険者の介護保険への不満が強くこれを少しでも和らげるために40才から64才までは少しでも給付を受けるようにしたものと思われます。
しかもこの一部というのが不思議な条件で「加齢に関係した疾患や障害」となっているのです。障害があり介護が必要な40才以上のすべての人が介護保険の給付を受けられるわけではありません。65才以上でではこうした病気や障害の制限はありません。されにこうした制限の背景には障害者にかかわる縦割り的な制度の現状もあると思われます。
「加齢に関係した疾患や障害」はかなり曖昧は定義で、あまり医学的な根拠はありません。交通事故による身体障害は含まれません。具体的には、次にあげる15の病気や病気群です。
筋萎縮性側索硬化症、
後縦靱帯骨化症、
シャイ・ドレーガー症候群、
初老期における認知症、
脊髄小脳変性症、
脊柱管狭窄症、
早老症、
糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症、
脳血管障害、
パーキンソン病、
閉塞性動脈硬化症、
慢性関節リウマチ、
慢性閉塞性肺疾患、
両側の膝関節または股関節に著し
この15のなかに「初老期における認知症」が含まれたいます。
この初老期認知症の定義もまた曖昧で初老期に特に多い認知症(初老性認知症)なのか単に初老期の認知症なのかがはっきりしません。前者とすれば高齢にあればなるほど多いアルツハイマー病は含まれないし、ピック病だけになってしまいます。でも実際には「アルツハイマー病、ピック病など」となっています。「など」となっているので、アルツハイマー病やピック病だけでなないようです。脳血管性認知症やレビー小体病も含まれるはずです。しかし加齢に関係する疾患ですから、交通事故の頭部外傷による認知症は加齢とは関係ないので含まれない。でも同じ頭部外傷でも慢性硬膜下血腫は高齢者に多く、加齢が無関係とは言えないので該当するかもしれません。やはり「初老期における認知症」は曖昧ですが、範囲をより広く理解しすべきでしょう。
しかし初老期認知症が介護保険の対象となることをよく知っておくかなけれなりません。45才以上65才未満でも認知症があれば介護保険を利用できるのです。
しかし問題は実際にサービスを受けようとする時でしょう。未だ介護保険のサービスが始まったはいないので推測の域を出ませんが、初老期認知症の人が実際にサービスを利用できるのでしょうか。まずは高齢者を対象のサービスが優先されかねないので、初老期認知症の人の家族も出来るだけ早く介護保険の申請をしておきたいものです。
申請した後は、市町村の職員らによる調査が行われます。調査員も初老期認知症のことを知らないことがありますし、初期のアルツハイマー病やピック病は軽いと見間違われることがありますから、過去1月の状態をありのままに話して理解を求めましょう。この調査をかかりつけ医の意見書が添えなければなりませんが、これも簡単に書いてくれないかもしれない心配なことです。初老期認知症について正しく理解し適切に意見書を書いてくれる医師が近くに居ればよいのですが、これで介護保険の利用が遅れてしまうかもしれません。
介護認定審査会で判定が行われますが、審査委員が初老期認知症のことをよく知っているかもまた心配です。無理解や誤解のために要介護度が低く判定されるかもしれません。
認定後、本人と家族の希望を尊重してケアプランが作成されることになっていますが、ここでも初老期認知症について正しい理解をしたあケアマネージャー(介護支援専門員)が計画を作成してくれるか心配です。初老期認知症をよく知らなかったり、初老期認知症の人へのサービスが少ないと初めから制限されたケアプランが作成されては困ります。
実際に、ホームヘルパー、デイサービス、ショートステイなどのサービスを利用できることになっても現場の介護職員が老人性認知症は理解していても初老期認知症には理解が乏しいかったり、かなり80代半ばのアルツハイマー病の方と50代半ばのピック病の人とが同じデイサービスセンターで過ごすことができるかなど現実には難しい問題が横たわっています。
しかし介護保険で認められている初老期認知症の人のサービスを積極的に受けるようにし、サービスを受けながらこうした問題を解決する方法を職員と共に考えていくことが大切です。初めから遠慮していたのではせっかくの権利を放棄することになるし、初老期認知症への理解が遅れるし広がらないことになります。
10月から申請が始まりました。申請の受理からサービスを受けるまでさまざまなハードルがあるかも知れません。独りで悩まないで、(社)家族の会の支部の人、本部の人に相談しましょう。相談の内容によっては市区町村の人とまた厚生省にも対応してくれでしょう。
認知症の老人の人権等に関する制度が整備されつつありますが、初老期認知症の人も同様の扱いになります。こうした制度や法律には年齢制限はありません。従って認知症の老人と同様です。簡単に説明しておきます。
1)成年後見制度
認知症の人の残存能力を個別的にみながら自己決定権を尊重しようと民法を改正して従来の禁治産制度に変わる新たな成年後見制度が始まろうとしています。これについても初老期認知症の人と家族はおおいに関係します。法定後見については障害の程度に応じて、補助、補佐、後見に分けられます。補助は新しい制度です。初老期認知症の人と家族が利用しやすいような成年後見制度が求められます。
2)地域福祉権利擁護事業
今年の10月から市町村で開始した新しい制度です。対象者は認知症の老人、知的障害者、精神障害者等となっており当然初老期認知症の人も含まれます。
事業の内容は、相談と援助で、援助は日常生活支援サービスと日常的金銭管理サービスとがあります。実施主体は原則的には市町村の社会福祉協議会です。本人、家族、代理人などが相談、申請します。これに応じて相談、調査等を行い、支援計画を作成し、契約を結びます。これに応じて生活支援員が実際の援助にあたります。援助は金銭管理にとどまらず福祉サービスなどの内容の確認も含まれます。
3)介護保険施設での身体拘束の禁止
厚生省は4月から始まる介護保険に絡めて介護保険の対象となる施設である介護保険施設−現在の特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養型病床群−での老人の身体的拘束を禁止する通達を出しています。当然のことながら介護保険施設で生活する初老期認知症の人も対象となります。初老期認知症の人は老人と比べ、身体が元気で行動も活発な傾向にあり、身体的拘束などの拘束がより頻繁に、より強く行われるのではと心配です。
人権に配慮した施設の理念と実践、・工夫、拘束がなくてすむ施設の介護環境、実効性のある行政指導が強く望まれます。
初老期認知症の調査研究は、老人性認知症と比べかなり遅れていると言えます。これは既に述べたことですが、対象者が少ない、問題がまだまだ社会的に十分に認知されていない、研究者も少ないなどが理由でしょう。こうした傾向は日本だけではなく、欧米でもみられます。
こうしたなかで我が国ではピック病など初老期認知症の基礎的また臨床的な研究者が少ないが居ます。
また1970年後半から散発的に初老期認知症の実態調査は医療機関を中心して行なわれてきました。1996年からは厚生省の初老期認知症の研究班は全国実態調査を行っており、初老期認知症の原因や介護実態を明らかにしおります。その後一部の医学者による研究は続けられています。
調査研究として(社)家族の会が1991年と1992年に会員を対象に行った調査があり、特に介護実態についての我が国で初めての調査であり、いくつかの初老期認知症の人と介護家族の置かれたいる状況を明らかにしました。
初老期認知症の文献も、我が国では少なく、単稿本としては未だなく、精神科関係の専門雑誌で稀に特集で取り上げられる程度です。例えば、老年精神医学雑誌(発行:ワールドプラニング)では「初老期認知症の臨床」(1993年5月号)、「若年期の認知症」(1998年12月号)などがあります。
いずれにせよ認知症の老人の調査・研究と比べ初老期認知症の調査・研究の遅れは歴然としており、患者数が少ないなど調査研究の難しさはありますが、今後の充実をおおいに期待したいものです。
初老期認知症については各国とも問題とはなっていても必ずしも大きな問題とはなっていなようです。
(社)家族の会が加盟している国際アルツハイマー病協会でも、初老期認知症が取り上げられたのは1992年ベルギーでの国際会議が初めてで、その後も必ずしも継続的に取り上げられるいるわけではありません。
こうしたなかでいくつかの国での取り組みが知られたいます。そのうちイギリスとオーストラリアの現状を紹介しましょう。また今年出版された初老期認知症の専門書と報告書についても紹介します。
1)海外の取り組み
(1)イギリス
イギリスのアルツハイマー病協会は1996年に「初老期認知症の人の権利宣言」を提出しています。
この概要は以下のとおりです。
1.早期の診断、評価、紹介(一般医がこれに関わるべきである)
2.専門的なサービスの利用(初老期認知症のためのデイケア、施設、カウンセリングなど)
3.相応しい経済的な援助(介護に伴い出費を補う経済的な援助)
4.適切な雇用関係(必要であれば早期の退職と年金を支給)
5.教育、研修、情報(医療、福祉等の祉関係者への教育)
またイギリスのアルツハイマー病協会は初老期認知症の人の自助援助グループを作り、また週2,3回程度のデイケアも行っています。
また神経疾患国立病院はCANDID(Counselling And Diagnosis in Dementia)という援助を1995年に始め、電話や電子メールのよる初老期認知症の相談を受け、また一般医らへの専門的な助言を行っています(DEMENTIA
WEBのホームページ:http://dementia.ion.ucl.ac.uk)
(2)オーストラリア
オーストラリアのニュー・サウス・ウエールズ州のアルツハイマー病協会では、前頭葉認知症(ピック病)の支援グループがあり、毎月集いを開催し、学習や交流を行っています。
また初老期認知症の配偶者の支援グループもあり、毎月つどいを開催しています。(ホームページ:http://www.alznsw.asn.au)
2)出版物と報告書
(1)専門書”Younger
People with
Dementia”
初老期認知症の現状、疾患別の解説、初老期認知症の人と家族の理解、支援体制の構築が主な項目で大学の教官、臨床心理士、ソーシャルワーカー、建築家などが実践をもとに分担執筆しています。
初老期認知症の有病率については、1980年と1990年にヨーロッパの8カ国で行われた全年齢の認知症の有病率の調査報告によると30才から64才までが0.1%(1000人に1人)で、60才から64才までが1.0%です。また1993年にニューマンらがイギリスで行った調査では45才から64才までの初老期認知症のうち47.2%がアルツハイマー病、16.0%が脳血管性認知症、36.8%がその他です。
この本の共著の一人であるコックスは、初老期認知症に対しては患者中心の対応が重要であり、これに介護家族にも関わり複数の専門職と複数の機関の連携のとれた支援の必要性を論じています。
この本のユニークな点のひとつとして初老期認知症の人とのインタビューの報告があります。物忘れがひどく状況の判断が出来なくて困惑していたり、焦燥的になったりする感情についての個別的なインタビューの内容を紹介しています。そのなかで認知症といっても人によっては知的機能は異なり残存機能を評価し認めていくことが重要だとしています。こうした視点は大切であり認知症の老人についても老人自身の能力、感情について耳を傾け、その心を推し量ることは我が国ではあまりされていないように思います。いつも介護家族の側からの話であり、介護の話であり、認知症の老人対策ではないでしょうか。中心となる認知症の老人自身を知し、彼らが何が求められてかを知ることが援助の基本ではないかと考えされられます。
初老期認知症の人と介護家族への支援のあり方ついては、共著のコックスとキディは、認知症の人はできるだけ地域で生活できるようにすべきであり、入院や入所を避けるためにも連携のとれた地域的なケアが推進されるべきであり、医療と社会的サービスの長期の計画がありその内容が検討されなければならない。またこうした計画のために既存の社会資源を手直しするための財政的な援助が必要であるなどしています。
具体的には、24時間の情報提供、専門家や専門的サービスを利用すること、緊急を要する場合の地域的な対応、自宅での援助を基本として多様なサービス、代替ケア、自宅を中心としてながらも多様な地域生活支援などをあげています。
この例としてイギリスでの初老期認知症の人のグループホームを紹介しています。3,4人が協同で生活する住居が6戸から8軒戸が同じ土地に立てられています。認知症の人が普通の生活が遅れることもできるし、家族と一緒に住むこともできます。。これに24時間の世話する有給の職員を置いています。
この本の著者がそれぞれの専門職として初老期認知症にかかわっているが、理論的な部分が多く、具体的な援助の紹介は限られています。この理由としてイギリスでは既存のサービスで利用できる部分があるにしても、社会的サービスが必ずしも進んではいないことがあると思われます。
(編著:Sylvia
Cox & John Keady.出版社:Jessica Kingsley
、Publishers,London,UK.アマゾン価格:30ドル)
(2)報告書”Young Onset
Dementia”
この報告書は、イギリスの国立神経・神経外科病院の認知症研究グループのリチャード・ハーベイらがインターネットを通して1999年に公表したものです。ハーベイらが2年半かけてロンドンの二つの地域で行った調査に基づく報告書で初老期認知症の疫学、臨床症状、家族の負担、支援、結果などから成っています。
疫学調査から30才から64才までの年齢では10万人につき67.2人(1000人に対して0.67人)に認知症を認めています。先の本で紹介した調査より少ない値です。。このうちアルツハイマー病が32.3%、脳血管性認知症が16.2%、前頭側頭葉認知症が13.9%です。
初老期認知症の人の症状として、知的機能の低下の他に幻覚や妄想や攻撃的行動が半数近くに認めています。
介護上の経済的な負担にいては、認知症の老人より高く、イギリス全体で初老期認知症に約200億円が使われていると推計していますが、初老期認知症の人は地域的な社会資源を使うことが少なく費用のかかる施設入所の傾向が強いことが高くついている原因の一つとみています。
イギリスで認知症の老人の地域ケアが進められデイケアや代替ケアが普及してきたとはいえ、これらのほとんどが老人のためのものであり、たとえ初老期認知症の人がデイケアを利用できたとしてもそこでは20才、30才も年寄った人と一緒に過ごさなければならず、利用者にかえって精神的負担になります。
介護家族の負担については、約55%に何らかの問題を認め、これは男性より女性に女性多い。また精神状態では、うつ状態、不安を多く認め、相対的に後者が多い。介護負担は夫婦の人間関係の善し悪しに関係すると報告しています。
この報告書は実態調査の報告が主であり、初老期認知症の人と家族への具体的な支援の報告は極めて少なく、先月述べたイギリスのアルツハイマー病の支部が行っているデイケア、自治体が初老期認知症のためのデイケアと小規模施設、CANDIDの活動などの紹介に限られています。 ,
しかし初老期認知症の調査の難しさと我が国のこれからの初老期認知症への取り組みを考えると、特定の地域における横断的・縦断的な疫学調査とその地域での介護家族の実態、精神的経済的負担、さらにはサービスの利用状況などの把握の方法論についてこの報告書は価値あると思います。(報告書はホームページDementia Web
http://dementia.ion.ucl.ac.ukから入手できます)
今回は初老期認知症に(社)家族の会がどのようにかかわったらよいかについて、既にこの連載のなかでふれてはいますが、改めてまとめて意見を述べ提案してみたいと思います。
1)(社)家族の会と初老期認知症
(社)家族の会は、発足して間もない頃から老人でないぼけの人の家族からの相談を受けるなかで、初老期認知症の問題は認識してはいましたが、具体的な取り組みは、1991年の2度にわたる初老期認知症の介護実態調査に始まります。この調査結果をもとに初老期認知症の人と介護家族へのサービスの改善を求めて、1992年に厚生大臣に要望書を提出しました。また同年厚生省内に発足した「初老期認知症対策検討委員会」に田部井康夫氏(現:(社)家族の会理事。群馬県支部代表)を委員として送りました。また初老期認知症の調査結果は1994年の国際アルツハイマー病協会国際会議(ブリュッセル)で発表しました。
しかしその後継続的な取り組みはなく、奈良県支部での初老期認知症家族会の取り組みがきっかけとなり、(社)家族の会として再び意識的に取り組みが開始し、初老期認知症についての情報提供、各支部での取り組みの情報交換などを行い、昨年の総会の分科会でも初老期認知症を取り上げました。これに前後して千葉、東京、愛知、長野、富山、京都、兵庫などの支部で初老期認知症の人の介護家族の集いを開催しています。
また本部では昨年11月の介護保険の緊急要望のなかでも初老期認知症へのサービスを充実を合わせて厚生省に要望しました。
しかしこの間の活動を経験し、初老期認知症の実態を知るなかで(社)家族の会として本部でも支部でも認知症の老人とは違って取り組みが容易ではないことも認識を新たにしたと思います。
2)初老期認知症の取り組みを困難にしていると思われる背景
初老期認知症へ(社)家族の会として取り組みを困難にしている背景について考え、それを踏まえて活動のあり方について提案してみます。
(1)患者が少ない・分散している
我が国では初老期認知症の患者は3万人とも8万人とも言われ実際どれくらいいるのか正確にはわかっていません。しかし10万人を超えることはないようです。認知症の老人が140万人と言われる数字と比べると10分の1以下です。即ち最大限見積もっても10万人都市で100人ほどになります。患者が少ないことは大いに喜ぶべきことですが、少ないことは取り組みを困難にするという事実もあるわけです。また患者さんは特定の地域で生活しているわけではなく、分散していることも取り組みを難しくする要因と言えます。このため集いにもデイケアにも集まりにくいでしょう。このため集いは定期に開催しながら電話相談や会報など他の手段で介護家族への支援が必要になります。
なお初老期認知症が増えているかのような週刊誌の記事をみることがありますが増えているかどうかは初老期認知症の実数さえわからないので不明です。私自身の印象では増えているようには思いません。
(2)症状・状態が多様である
老人の認知症ではその多くがアルツハイマー型認知症か脳血管性認知症かどちらかなので症状が似通っており、集いなどで介護家族は互いに理解しやすく、話しやすいでしょう。しかし初老期認知症も多くはアルツハイマー病や脳血管障害が原因ですが、ピック病や頭部外傷や低酸素脳症の人などの介護家族も参加されます。それぞれ症状も違うし、介護の苦労も異なり、それに従い介護方法も様々です。このため集いでの話しがかみ合わないことがあるかもしれません。このため参加者に不満が残るかも知れません。これを少なくするには集いの進行役の人がそれぞれの病気についてある程度知識をもち、話し合いがスムーズにいくように、不満が残らないのような集いの進行に心掛ける必要があります。これは容易なことではないかもしれません。
(3)社会的認知が弱い
老人の認知症と比べ初老期認知症がなにか特別の病気のように思われ、社会的な認識が低く、行政も医療関係者も福祉関係者も関心が薄いのが現状です。
これについては、(社)家族の会が本部も支部も取り組まなければならない社会的な啓蒙の課題であり、活動によっては成果は期待できます。
(4)関心ある専門職が少ない
ここ20余年、アルツハイマー病や脳血管性認知症など老人性認知症の基礎研究、臨床医学、介護方法、福祉施策など実に多くの専門職が関わり、このことが我が国の認知症の老人と介護家族へのサービスの向上に役割を果たしてきました。それに比べ初老期認知症の専門職はあまりに少ない。専門職と言われる医師も数えるほどしかいません。患者が少なく分散し病気の原因が多様であり、社会的関心が低ければ研究もしにくいのででょう。このため介護家族の集いを開いても助言してもらえる専門職がなかなか見つかりません。20年前の(社)家族の会の集いのようです。
これに対しては身近に専門職を探し関心をもってもらい初老期認知症の勉強してもらうように働きかけていかなければならないでしょう。
3)どのように取り組むか
認知症の老人と同様に本部と支部との役割分担があると思います。本部は国内外の情報収集と会報での除法提供、支部などの各地の活動の情報交換、国への働きかけの役割があります。
支部は、定例の集いを中心に電話相談、支部だよりでの介護家族への情報提供、可能なら宅老所などでの初老期認知症の人と家族への具体的な支援を地道に模索していきます。
なお既存のイケア、デイサービスセンター、老人保健施設、老人ホームでの初老期認知症の人の受け入れや介護は簡単ではないでしょうが、取り合えずこうしたサービスを利用できるように働きかけながらよりよいサービスの方法を共に考えていってはどうでしょうか。
初老期認知症について12回にわたり情報供と私の意見を述べてきました。最終回は、これまで(社)家族の会が関係する資料の抜粋を情報として提供します。なおこの連載はこれが最後ですが、来年度からは新しい企画で初老期認知症と取り上げる予定です。
1)(社)家族の会調査報告書
(社)家族の会は1991年の3月から4月に会員の介護家族を対象に初老期認知症の介護実態調査を行いました。回答数は87人で、原因別ではアルツハイマー型認知症が67.8%、脳血管性認知症が28.7%でした。生活の場所は在宅が74.0%、老人病院が11.5%、総合・一般病院が9.2%で、介護している人は配偶者が82.8%、子供が23.0%でした。介護上困ったこととしては、排泄介助、徘徊、初期の対応の仕方がわからなかったなど多い。経済的な面では、仕事に出れない、介護手当がもらえない、生活保護をもらわざるをえなかったなどがあり、家族間のこととしては、身内の人の無理解、子供への影響が心配などをあげ、サービスの利用については、利用できたものとして、上位3つは通院、保健婦の訪問、入院、利用できなかったものとして上位3つは、デイサービス・デイケア、介護手当、老人ホームの入所でした。
(社)家族の会では、同年1991年10月に初老期認知症と老年期認知症との介護を比較する調査も行い、その結果を1992年の5月に発表しました。調査の回答総数は337人がこのうち26人が初老期認知症でした。65才以上の老年期認知症とくらべ、初老期認知症は原因としてアルツハイマー型認知症が多い、精神病院入院が多い、介護者の年齢は40歳代、50才代に多い、続柄では配偶者が多い、家族構成は1世代が多く、利用しなかったサービスとしては老人精神保健相談、ショートステイなどでした。
なお両調査の報告書は(社)家族の会の本部事務局にあります。また2回目の調査結果は会報1992年5月号(No。142)から1993年8月号(No.157)で紹介しています。
2)(社)家族の会の要望書
(社)家族の会は1992年8月初老期認知症の人と家族に関して厚生大臣に要望書を提出しました。その主な内容は以下のとおりです。
@初老期認知症の人と家族の置かれている実態を把握すること。
A総合的対策をとること。
B認知症の老人対策のすべてを初老期認知症も対象とすること。
C所得保障、障害年金を拡充し、特別障害者手当や特別障害者納税控除の周知させること。
D初老期認知症についての偏見・差別をなくすように知識の普及と啓蒙を進めること。
E介護家族へホームヘルパーの派遣、デイサービスやショートステイの利用を促進すること。
F医療機関、福祉施設において初老期認知症の人が正しく理解され、適切なサービスが受けられるようにすること。
G保健所、福祉事務所が等の行政機関の担当者に適切な指導・教育を行うこと。
H初老期認知症の発生、治療、予防、介護についての総合的な研究を行うこと。
なお要望書の全文は、会報1992年9月号(No.146)に掲載しています。
3)「初老期における認知症対策検討委員会」の報告書
厚生省は1992年8月に省内に「初老期における認知症対策検討委員会」(大谷藤郎委員長)を設けました。これには(社)家族の会から田部井康夫氏(家族の会理事・群馬県支部代表)が委員として加わっていました。委員会はその検討結果を1994年7月に報告書としてまとめました。主な内容は以下のとおりです。
1)初老期認知症とは65才未満のすべての認知症とする。
2)患者数は5万人から10万人と推計するが、より専門的な調査が必要である。
3)初老期は、社会的にも重要で責任も大きく、子供の教育についても経済的な負担が重く、また子供の進学・就職・結婚、親の病気や死亡などの時期であり、こうした時に初老期認知症を発病することは混乱が大きい。
4)収入の減少、結婚や就職の際の不利益、介護による疲労などが生じる。
5)現行の認知症の老人対策が十分に活用され、適切な医療や相談、介護教室の充実、国民への啓発普及をとおして偏見の除去、原因解明・治療・介護・予防の確立が必要である。
6)初期対応として、保健所、市町村、福祉事務所などの対応を充実させ、また都道府県内にネットワークを整備する。担当者への情報提供・研修も行う。
7)診断・専門医療については、老人性認知症疾患センターの拡充と精神病院の病棟の整備と精神科医の専門医としての関与が必要であり、医師らへの一般研修を実施する。
8)在宅・施設施策として、保健所の老人精神保健相談、精神科のデイケアの利用には制限がなく、ホームヘルプ、ショートステイ、デイサービスまた市町村の訪問指導についても初老期認知症を対象とするようになった。施設については、精神病院の利用は年齢制限がなく、老人保健施設についても65才未満のアルツハイマー病とピック病については利用できるようになったが一層の整備し、特別養護老人ホームの利用には今後施設の整備が必要である。
10)研究・調査については、認知症の老人が中心であるが、一部初老期認知症の疫学調査が行われいる。
11)啓蒙・研修については、認知症の啓蒙の一環として保健所、精神保健センターなどで進める。また研修は、老人性認知症疾患保健医療指導者研修や認知症の老人処遇技術研修などが行われているが初老期認知症を対象とした研修も必要である。
12)今後引き続き初老期認知症については検討を要する課題である。
なお報告書の全文は、会報1995年3月号(No.176)から1995年7月号(No.180)に掲載しています。
(終り)
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社団法人認知症の人と家族の会
<旧呆け老人をかかえる家族の会>