介護保険・社会保障専門委員会

はじめに

第186回厚生労働省社会保障審議会給付費分科会(分科会)は、9月30日午後3時から6時までの予定でオンライン会議が行われ、会議中の時間帯のみライブ配信という形で公開されました。議題は、令和3年度介護報酬改定に向けて(1)介護人材の確保・介護現場の革新(2)制度の安定性・持続可能性の確保、でした。

鎌田松代事務局長の発言要旨 

 「介護職員処遇改善加算」などの取組検証には当事者の声を

これまでにも介護労働者を確保するためにさまざまな取り組みが行われてきましたが、介護職員処遇改善加算など直接、給与引き上げに関わる取り組みをのぞいて、さまざまな方策について効果の検証は行われているのでしょうか。検証結果があるのなら、提示していただきたいと思います。

資料の37頁に法人としての効果評価の結果はありますが、職員側からの評価調査はないようです。ぜひ、職員の評価調査もしてください。私たち介護家族や本人は職員さんに笑顔でやりがいをもって介護の仕事に従事したいただけることを願い、負担をしています。加算の検証をされる際には対象当事者である職員の声の調査をお願いします。

*今回の資料によると、直接の給与引き上げによらない、介護労働者の確保につなげようとする対策の調査が示されていますが、職員からの生の声が伝わってこないものばかりです。
1 サービス提供体制強化加算 「質の高い」サービスにインセンティブを用意する加算
2 ハラスメント対策 ハラスメントの実態把握や事業者向け対策マニュアルの作成
3 介護現場の革新 「介護現場の生産性向上」=ロボット導入などテクノロジー活用
4 文書に係る負担軽減 「書面・対面・押印」の慣行見直しなど(2020骨太の方針)

2 取得率の低い「加算」の原因究明を

33ページでは、介護職員処遇改善加算は加算Ⅰを取得している事業所の割合が、訪問介護、通所リハビリテーション、介護療養病床、介護医療院、地域密着型通所介護で低調になります。また、42ページの介護職員等特定処遇改善加算でも、こちらは取得率そのものが大変低調ですが、加算Ⅰを取得している割合が3割未満のサービスが、訪問介護、訪問入浴、通所リハビリテ―ション、介護療養病床、介護医療院、地域密着型通所介護とあります。いずれの「加算」も同じサービスで取得割合が低くなっています。取得率が低いのは要件が厳格すぎるのか、申請手続きの複雑さで取得率が低いのであれば、原因を追究し取得率をあげていただければと思います。

「介護職員処遇改善加算」の「加算Ⅰ」は、5段階ある加算の中で最高額(月額3万7千円相当)のものです。取得要件も多く①任用要件と賃金体系を整備②研修の実施又は研修の機会を確保③昇給する仕組み又は定期に昇給を判定する仕組み設置④賃金改善を除く、職場環境等の改善、となっています。「介護職員等特定処遇改善加算」は、昨年10月から新設実施された加算で、「勤続年数10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行う」ことを基本にするものです。介護職の賃金は、資料の19頁によると、この5年間で少しずつ増えていますが、依然として全産業平均より月額8万5千円、年収にすると102万円低くなっています。

3 制度の安定・持続可能性の名の元で作られる、負担増・給付削減の流れは反対

この介護職員処遇改善加算のように道理が通る、公平な内容であればと、私たち利用者は、負担してきました。しかし現在のような制度の安定・持続可能性での名の元で作られる、負担増・給付削減の流れは反対です。

私たちは上がった介護保険料や消費税を払っています。それはそれに見合うだけの安心の介護サービスが受けられることを期待しているからです。しかし、介護保険制度施行20年を経過し、当初の介護の社会化、自己選択などが制度の安定・持続可能性を理由として、崩れてきています。サービス利用の制限が増えています。10月中旬に公布予定(来年4月施行予定)の要支援者が要介護認定になった時の総合事業の継続もそうです。要介護1,2の人を要支援者と同じように介護保険サービスから外そうとしているとしか思えないです。「利用者が希望すれば」と一見、本人の意思が尊重されているような言い回しですが、実態は6月の特例措置(デイサービス等の利用料2段階アップ)での「同意」条件と同様に「感染予防や利用者の安全確保などの予防対応で事業者が大変だから」と本人・家族は同意しているのですが、これは利用者の意思のようにみえながら、実態は違います。利用者が事業者を慮ってのものです。

4 負担すべきは今までもしてきた、それに見合う安心の制度を

ここでの議論ではないですが、社会保障全体のありよう、給付と負担について国がどう考えるのか、基本的な考えが示されたうえで、制度の安定・持続可能性が検討され、報酬改定につながるのではないでしょうか。国の考えを明確に示していただきたいです。

また、報酬を増やすのなら利用者の負担は増えます。負担できない人には相応の対策の検討もしていただきたいです。私たち利用者が介護保険料や自己負担を納得して払えるような信頼を築くことで、初めて「制度の安定・持続可能性」を高めることが出来ると考えます。

パイの大きさが決まっている中でどこに重点をおくのか、その事を考え検討する資料がないように思います。負担すべきは今までもしてきました。それに見合う安心の制度でありサービスの給付であってってほしいです。住み慣れた家で、認知症でも一人暮らしでも暮らしていけるようにしていただきたいです。昨年度の「家族の会」の調査では、認知症の人は自宅での介護を望んでいました。

厚生労働省は、介護人材の問題で「勤務継続にあたり重要と思うもの」という設問に対する回答の1位に「仕事へのやりがい」が挙げられている事を紹介しました。福祉労働は、教育社会学研究者の本田由紀さんが名付けた「やりがい搾取」につながりやすい職業です。くれぐれも介護職の精神的な満足につながる“やりがい”であることを願います。

                (注記、まとめと文責  鎌田晴之)