介護保険・社会保障専門委員会

はじめに~年末の予算化に向けて、具体的な「報酬改定」論議へ~

 

第184回厚生労働省社会保障審議会給付費分科会(分科会)は、9月4日午後1時から3時までの予定で、「オンライン会議」形式で行われ、会議中の時間帯のみライブ配信という形で公開されました。前回までの審議で出された、各サービスの現状や課題に対する意見を整理し、報酬改定の具体的な検討に入る事になります。示されたスケージュール案では、9月以降「更なる検討」を加えて、年末の予算編成に反映させることになります。

議題は、令和3年度介護報酬改定に向けて(今後の進め方、感染症や災害への対応力強化、地域包括ケアシステムの推進)でした。

「感染症への対応力強化」を日常的な課題に

 「更なる検討」をするためのテーマとして、事務局が示した項目に「感染症」が加えられました。検討すべき制度全体の「分野横断的テーマ」として、1感染症や災害への対応力強化、2地域包括ケアシステムの推進、3自立支援・重度化防止の推進、4介護人材の確保・介護現場の革新、5制度の安定性・持続可能性の確保、の5項目が並べられました。

 検討にあたって踏まえる前提として、主な3項目が示されています。

  1 平成30年度介護報酬改定に関する審議報告(平成29年12月18日社会保障審議会介護給付費分科会)

  2 介護保険制度の見直しに関する意見(令和元年12月27日社会保障審議会介護保険部会)

  3 認知症施策推進大綱(令和元年6月18日認知症施策推進関係閣僚会議決定)

認知症に関する「意見」はどのようにまとめられているか~報告資料から

ここに列記されている「意見」は、「分科会」を構成する様々な立場の委員のそれぞれの意見を要約したものを、事務局作成の資料として提示されたものです。「家族の会」の考え方と異なるものもありますが、会議上に出された、認知症に焦点を当てた意見を紹介したいと思います。

分野横断的テーマ

 

1.感染症や災害への対応力強化

〇認知症がある者が濃厚接触者となった場合に、地域での受け入れ先が見つからないという問題が生じており、地域単位でのサービス体制の強化について検討が必要ではないか。

2.地域包括ケアシステムの推進

     <認知症への対応>

○ 認知症の方が増えている中で、横断的な事項として「認知症」を検討すべきではないか。

○ 住民の認知症への理解は不可欠であり、例えば介護事業所等における、住民主体や住民を巻き込んだ取組を積極的に促すことも考えられるのでないか。

○ 認知症の対応力向上研修について、内容の充実を図るとともに、研修対象者について歯科診療所のスタッフにも広げるべきではないか。

○ 認知症に特化しない形でサービス提供を行うことが理想であり、サービスの質を高めていくことが必要ではないか。

〇 認知症ケアとして、ご本人へのケアに加え、認知症の方同士の出会いや、家族同士の出会い、家族への支援を組み合わせた形での支援が世界的にも効果があると言われており、検討の余地があるのではないか。

○ 認知症対応型通所介護について、通所介護事業所よりも料金が高いということで利用者から敬遠されないように、その目的や役割が利用者に伝わる仕組みが必要ではないか。また、通所介護事業所で認知症の者を受け入れている場合も多いことから、地域の実情に応じた弾力のある対応を可能としていくことが良いのではないか。

3.自立支援・重度化防止の推進

〇認知症対応についても、エビデンスに基づきプロセス評価を行い、PDCAサイクルに沿った対応を進めていくべき。

4.介護人材の確保・介護現場の革新

 〇介護職員は、行ったケアで利用者が元気になることや笑顔になることなどが、最大の醍醐味。ICTやロボット、業務効率化は進めるべきであるが、それだけでは人材確保につながらないということも踏まえ検討すべき。

5.制度の安定性・持続可能性の確保

〇制度の持続可能性を議論するに当たっては、負担増や給付削減により、利用者の生活の維持が立ち行かないことがないよう、審議等を行うべき。

各サービス

5.訪問リハビリテーション

〇 認知症の短期集中リハビリテーションに関する加算が設けられていないため、ニーズを踏まえ検討するべきでないか

7.通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護

〇 認知症対応型通所介護について、通所介護事業所よりも料金が高いということで利用者から敬遠されないように、その目的や役割が利用者に伝わるような仕組みが必要ではないか。また、通所介護事業所で認知症の者を受け入れているところも多いことから、地域の実情に応じた弾力のある対応を可能としていくことが良いのではないか。

○ 通所介護事業所の認知症関連の加算の算定率が低いのではないか。通所介護事業所だけでなく他のサービスでも認知症に特化しない形でサービス提供を行うことが理想であり、サービスの質を高めていくことが必要ではないか。

9.通所リハビリテーション

〇短期集中個別リハビリテーション実施加算の単位数が低いことから、認知症短期集中リハビリテーション加算と同じ単位数にするなどの対応を検討すべきではないか。

18.介護老人福祉施設

〇認知症の入所者については、集団でのリハビリテーションも効果があるのではないか。

○認知症で車いすを利用している方が転倒した場合、一律に事故にあたるとはいえないのではないか。ベルトによる固定も身体拘束にあたるため行えない。転倒、転落は老年症候群の1つであり、これらが本当に事故にあたるのか、検討すべきではないか。

「家族の会」の要望書でも強調~報酬体系の簡素化を求める意見~

「家族の会」は、介護保険制度を「充実発展させるべき」制度と考え4項目の「進むべき方向」を2010年に示しましたが、その一つに「わかりやすい簡潔な制度」があります。今回の資料には「5.制度の安定性・持続可能性の確保」の中で、「報酬体系の簡素化」に関する意見が提示されています。20年の積み重ねから出された意見は、対処療法的な取組の限界を示しているように感じます。

〇複雑な報酬体系となっており、サービス利用者にとっても、事業者や保険者に取っても分かりにくいため簡素化し、明快な報酬体系を構築することが必要ではないか。

〇 誰にでも分かるような介護報酬とするため、例えば、期間経過し普遍化された加算は基本サービス費に取り入れるなど、介護報酬の簡素化について検討が必要ではないか。 〇加算は業務量が増加するため、基本報酬で評価するべきではないか。

〇 加算が複雑で事務処理も煩雑なため、人材不足や事業の効率化の視点からも見直しを図るべき。算定率が低い加算はその必要性も含め見直しをするとともに、算定率が高いものは基本報酬に組み込むことや、要件を満たさない場合は、減算することや要件緩和を行うことを検討すべき。

〇 算定率の低い加算について、要件緩和の議論がでているが、加算はあるべき姿に誘導するといった面もあるので、趣旨を損なわないような検討が必要ではないか。

「感染症対応力強化」は、保険料ではなく~

  厚生労働省が新たに提示した「感染症対応力強化」の方向性には、多くの委員が賛意を表すと同時に「そのためには介護報酬の見直しが必要」という条件が出された、と伝えられています。感染症対応力を強化する事の必要性は当然としても、今なお継続中の「特例措置」(デイサービスの2段階上利用料適用可とする)での、「デイが継続されていることに利用者も恩恵を受けているのだから」という厚生労働大臣の発想が、そのままこの「方向性」に重なれば、利用料や保険料への悪影響が懸念されます。様々な福祉関連事業所が

 感染症対応力を強化する事は、車が安全に走れるように道路を整備する事と同様の社会的なインフラ整備です。そこに介護保険財政を充てるのは筋が違うと思います。

 (まとめと文責  鎌田晴之)

議事録・会議資料などは下記のアドレスで閲覧できます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126698.html