どうするつもりか介護保険法=次期改正の動きレポート#16

介護保険・社会保障専門委員会

 はじめに~介護保険サービス個々の検討に入る~

厚生労働省社会保障審議会介護給付費分科会第179回(給付費分科会)が、7月8日に実施されました。今回も「オンライン会議」形式で、午後3時から30分延長し6時まで、会議中の時間帯のみライブ配信という形で公開されました。議題は、令和3年度介護報酬改定に向けて(定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護、看護小規模多機能型居宅介護、特定施設入居者生活介護)でした。

グループホームの人員基準緩和をの声、対する入居者の安全とケアの質確保の主張

認知症対応型共同生活介護(グループホームGH)についての発言が印象に残りました。自ら施設を経営していると言う医療系団体の委員からは、特養等の施設は2ユニット一人を基準としているが、GHのみが夜勤者をユニットごとに一人配置を義務付けている事に疑問を呈し、見守りセンサーを導入すれば、連絡体制(オンコール)を整備して一人は在宅宿直、という体制で2ユニットの夜勤を認めるべき、と主張しました。この基準が作られたのは、2006年に長崎県のGHで火災があり7人の方が亡くなる事故が発端でした。施設系団体の委員からは、2015年以降GHもスプリンクラー設置の義務付けされたことから、一人基準の根拠が無くなったのではないか、と基準の緩和を求める意見が出されました。これらの意見に対し、看護系団体の委員から、緊急時の対応など在宅宿直への危惧が示され、別の医療系団体の委員からは、ユニットケアの理念からも、介護の質を確保する意味からも1ユニット一人は必要ではないか、との発言がありました。GHは、「地域における認知症ケアの拠点として、その機能を地域に展開していくことが期待される」と認知症施策推進大綱に書かれ、「介護離職ゼロ」に向けた基盤整備の対象サービスの一つです。厚生労働省平成30年度介護給付費等実態統計によれば、事業所数は全国で13,904か所、利用者数は257,400人、給付費用額6,827億8,900万円です。配布資料6の末尾には「論点」として①「都市部や中山間地域等のいかんにかかわらずサービスを受けることができるようにする観点」➁「医療ニーズへの対応や在宅支援機能の強化を図る観点」③「介護人材の有効活用や業務の効率化を図る観点」と、三つが示されています。この日の審議は③に集中していたことになります。

鎌田松代事務局長の発言要旨

コロナ禍の失業増でも介護現場には応募がないのはなぜ?

「介護人材の確保・介護現場の革新」で人材の確保についてですが、どのサービスの課題にも限られた介護人材の活用・効率化が記載されています。しかし、その介護人材がこのコロナ禍での経済不況の中で失業者が増えているにも関わらず、介護の現場に来てくださる方はないようです。

施設管理者にお聞きしましても、応募者が増えてはいない。危機的な状況と話されています。特に認知症の人は馴染みの関係の中での暮らしで、症状の安定と進行予防が出来ます。家族はその本人の安定した笑顔を見て、介護職員さんとの二人三脚の介護に喜びを感じています。

なぜ仕事がない現状の中で、介護現場に来られないか。これまで人材確保の課題はずっと議論されていますが、なぜ仕事を求めている方が介護現場に応募されないのか、その理由などの調査はされていますか。介護人材確保のさまざまな取り組みの成果の数字や、介護現場に仕事を求めている人が応募しない理由の調査がありましたらご報告をください。

前回も申しあげましたが、介護労働者の給与をめぐり、介護職員処遇改善加算があり、さらに特定処遇改善加算が追加されましたが、事業所の申請が半分くらいという現状が報告されています。新型コロナウィルス対策として、介護労働者にもひとり最低5万円の慰労金が支払われることになっていますが、こちらも申請するかどうかは事業所の判断に委ねられています。事業所が申請するのではなく、介護労働者みずから申請する方法はないのでしょうか?

これには回答がその場であり、「事業所単位での申請となっているので、そのようにお願いします」とのことでした。

介護労働者による、精神障害に関する労災申請が増えているのはなぜ?

 介護人材の定着についてですが、「職場の人間関係」がもっとも多く「結婚・出産・妊娠・育児のため」と「他に良い仕事・職場があったため」が続くと報告があります。しかし、2019年の労災補償の資料をみると、「精神障害に関する事案の労災補償状況」は、「医療、福祉」がトップです。「医療、福祉」の細目をみると「介護サービス職業従事者」が3割をしめています。精神的なつらさを抱え、労災保険の申請をする介護労働者が増えているのだと理解しますが、なぜ、介護労働者の精神障害に関する労災申請が増えているのか、その理由を知っている範囲で結構ですので、お教えください。

「介護ロボット」は利用者にどんな影響があるのか?

 

ロボットやICTの活用が言われていますが、介護を受けるほうも、介護職員の健康が維持され、介護の負担軽減になるのは大いに進めていただきたいのですが、なかなか設置が進まない理由はなんでしょうか。調査結果があればお示しください。また介護労働者の負担の軽減になるのかも知れませんが、利用者にどのような影響があるのか、調査されたことがあるのでしょうか?

転倒予防の機器が設置され、夜間に何度も訪室され、睡眠が妨げられたり、移動リフト、などの操作での事故などはないでしょうか。

 調査があるのであれば出していただきたいと思いますし、調査していないのであれば、大変重要なテーマと思いますので、調べていただきたいと思います。

               (まとめと文責 鎌田晴之)

会議資料などは下記のアドレスで閲覧できます。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126698.html

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