どうするつもりか介護保険法=次期改正の動きレポート#14

介護保険・社会保障専門委員会

新型コロナウイルス感染症感染拡大、緊急事態宣言による外出自粛により4月に2回予定されていた給付費分科会は中止となりました。5月11日はZoomを使用してのオンライン開催との連絡が4月下旬にあり連休前にはそのシステムでのデモストレーションが順調に実施されました。しかし、開催の前週末の5月8日朝に中止との連絡が入りました。その後に予定した25日も同様となり、結局第177回給付費分科会は6月1日に行われました。諸般の事情があってことでしょうが、万全の準備をされての開催が直前の中止には驚きでした。と同時に2021年度からの介護報酬改定実施は、困難ではないかと思えました。審議時間が現状の予定では十分に確保されていず、すでに4回中止され、またこのコロナ禍の中では、調査も含め十分なことが出来ないことを懸念します。報酬改定の実施の延期が必要との意見を今回提出しました。

第177回給付費分科会の鎌田松代事務局長による報告及び発言要旨

議題(1)平成30年度介護報酬改定の効果及び調査研究に係る調査(令和元年度調査)の結果報告について

介護報酬の「加算」は、自動的に全ての事業所に行われるわけでは無い

 サービスの質の評価に関して、「機能訓練での加算」についての委員の質問と厚労省の回答によると、「ADL維持等加算」や「生活機能維持向上加算」に取り組んでいる事業所が3.1%とかなり低いこと、しかし、実施事業所は「利用者への効果があった」とこの加算を高評価していることが報告されました。委員からは、いいものなのに実施が進まないことへの検証の声がありました。また評価指標Barthel Index*が使用されているが、標準的な評価指標を国が策定してはどうかなどの意見がでました。

*Barthel Index(バーセルインデックス)=日常生活動作における機能的評価を数値化。「食事」「移乗」等10項目を「自立」から「完全介助」まで最大7点を配点して評価。

議題(2)令和3年度介護報酬改定に向けて(地域包括ケアシステムの推進)

コロナ禍で地域の互助がストップし、利用者の心身機能低下がみられる。地域包括ケアシステムでの制度設計に無理があったのではないか

 発言では互助と言いたいところを、間違って共助と言ってしまいました。地域の中で支えあう互助での予防事業は、会場の閉鎖、担い手の外出自粛で実施できず、また、要支援の人はコロナへの不安が強く、自宅に引きこもりました。これまで積み上げてきた地域包括ケアシステムや介護保険制度の制度設計の過程での無理がここにきて露わになってきていると考えます。コロナ収束後は要介護者が多くなるのではと心配します。地域の人々の互いの支え合いの互助制度にだけに頼るのでなく、そこに公的なサービスを含むことが必要なことが重要なのです。

議題(3)福祉用具貸与価格の上限設定について

 業者のパンフレット作成費用や説明などの負担はあったが、概ね順調に実施でき、また介護報酬削減にも効果があったとの報告がありました。今後は3年毎の見直しで実施の方向です。福祉用具の問題と言えば、「住宅改修も含めて要介護2までは自費」という方向性が無くなったわけではありません。

議題(4)介護保険における新型コロナウイルス感染症に関する主な対応(報告)

地域の病院の感染専門の認定看護師が事業所に出向き、その実態に応じた感染対策の指導を

 全国老人保健施設協会や全国老人福祉施設協議会からは、一部クラスター発生などもあったが、適時適切な感染対策などを実施し対応ができたことが報告されました。職員の負担が大きくそこへの報酬、また介護報酬減*への対応への要望がありました。

*資料5p17によると、「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(介護分)4,132億円が計上されています。主旨として『介護サービスは高齢者やその家族の生活を支え、高齢者の健康を維持する上で不可欠』とし予算化されました。

 資料5P18の「事業所への感染知識の普及」で、正しい知識の情報提供をお願いしたいと発言しました。本人はデイサービスに行きたいと言っても家族が感染リスクを恐れ、利用を中止していることもあります。コロナは怖いもの・外出自粛要請で家に引きこもり、社会的交流が減り、活動できないことで筋力低下を起こしています。またヘルパーなどはコロナの医療的知識の研修の機会が少なく、安心して働けないことから離職しているケースもあります。介護人材の確保という観点からも、地域の病院にいる感染専門の認定看護師が地域の事業所に出向き、病院での感染対策でない、その事業所に応じた感染対策マニュアルや生活の方法などの指導*していただけたらと考えます。

*P18には「介護分野における効果的な感染防止等の取組支援事業」の説明があり、2億3,000万円が計上されています。その目的として『介護現場における感染症対応力を底上げしつつ、継続的なサービス提供が可能となるよう、事業者や介護従事者への各種支援をする』と書かれています。

 6月15日に予定されていた第178回給付費分科会も「延期」となり次回は(6月25日)となりました。今回の会議資料は何度か配信されたものが、最終の調整済みで修正されたものは、前々日の5月30日の0時過ぎに届きました。14件の討議資料が全292頁、参考資料として10冊の報告書等全2210頁に及ぶものでした。介護報酬改定の次年度(2021年度)実施をどうしても実施するための拙速な議論が懸念されます。

                         (報告本文 鎌田松代)

                  (注釈及びまとめと文責 鎌田晴之)

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