No.49–認知症知り地域で支える-サポーターは150万人

杉山Drの知っていますか?認知症当会副代表理事の杉山孝博Drによる連載です。全52回、毎週日曜日と水曜日に新しい記事を追加します。


公益社団法人認知症の人と家族の会副代表理事・神奈川県支部代表

公益社団法人日本認知症グループホーム協会顧問
川崎幸クリニック院長

杉山 孝博

1,469,595人。この数字は2009年12月31日時点での「認知症サポーター」の数である。

05年度より「認知症サポーター100万人キャラバン」が始まった。5年間の期間が終わる前にもかかわらず、目標の約1.5倍のサポーターが養成されたことになる。

地域、職場、学校、老人クラブなど様々な所で開催される「認知症サポーター養成講座」を受講し、認知症を理解して認知症の人や家族を温かく見守る応援者が「認知症サポーター」だ。

周りの人たちにその知識を伝える。自分の職場や地域で、できる範囲で手助けをする。認知症の人や家族に対して声かけをする。そんなふうに自分のできる範囲でできる活動をすればよい。

認知症は医療や介護だけでは対応できない問題を含んでいる。多くの人が認知症について理解すると同時に、その地域に住む認知症の人を支えていくことが重要性だ。

昨年7月24日、神奈川県庁で、わたしが講師となって県幹部職員約300名に対する「認知症サポーター養成講座」が開かれた。すべての幹部職員全員が認知症を理解し、市民の視点で行政に取り組もうと知事が発案されたとのこと。注目すべき動きである。

厚生労働省と認知症にかかわる諸団体は、2005年度から10年計画の「認知症を知り、地域をつくるキャンペーン」を始め、全国に展開している。

この「キャンペーン」には「認知症サポーター100万人キャラバン」のほか、「認知症の人本人ネットワークの支援」「認知症の人や家族の力を活かしたケアマネジメントの推進」「認知症でもだいじょうぶ町づくりキャンペーン」の4つの事業がある。

「本人ネットワーク」は認知症の人本人同士の交流をはかり、それを支える動きである。

最近はシンポジウムやインターネットのブログなどで認知症の人自身が発言する機会が増えている。雑誌の特集や書物でも本人の思いが語られるようになった。

この動きを促進し、社会にアピールをすること、本人支援のサポーターを養成するための講座を開設することによって、「介護される側」という認知症の人に対する見方を変えるためにも重要な活動だ。

「町づくりキャンペーン」は認知症の人を地域で支える先進的な活動を顕彰する事業だ。地域に根ざした活動が展開されていることが分かる。


杉山孝博:

川崎幸(さいわい)クリニック院長。1947年愛知県生まれ。東京大学医学部付属病院で内科研修後、患者・家族とともにつくる地域医療に取り組もうと考えて、1975年川崎幸病院に内科医として勤務。以来、内科の診療と在宅医療に取り組んできた。1987年より川崎幸病院副院長に就任。1998年9月川崎幸病院の外来部門を独立させて川崎幸クリニックが設立され院長に就任し、現在に至る。現在、訪問対象の患者は、約140名。

1981年から、公益社団法人認知症の人と家族の会(旧呆け老人をかかえる家族の会)の活動に参加。全国本部の副代表理事、神奈川県支部代表。公益社団法人日本認知症グループホーム協会顧問。公益財団法人さわやか福祉財団(堀田力理事長)評議員。

著書は、「認知症・アルツハイマー病 早期発見と介護のポイント」(PHP研究所)、「介護職・家族のためのターミナルケア入門」(雲母書房)、「杉山孝博Drの『認知症の理解と援助』」(クリエイツかもがわ)、「家族が認知症になったら読む本」(二見書房)、杉山孝博編「認知症・アルツハーマー病 介護・ケアに役立つ実例集」(主婦の友社)、「21世紀の在宅ケア」(光芒社)、「痴呆性老人の地域ケア」(医学書院、編著)など多数。


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