杉山Drの知っていますか?認知症当会副代表理事の杉山孝博Drによる連載です。全52回、毎週日曜日と水曜日に新しい記事を追加します。


公益社団法人認知症の人と家族の会副代表理事・神奈川県支部代表

公益社団法人日本認知症グループホーム協会顧問
川崎幸クリニック院長

杉山 孝博

「ここのお年寄りは精神病院や老人ホーム、老健施設などにいたとき『問題老人』と呼ばれていた人たちばかりです。夜間騒いだり徘徊したりして、時に はベッドに縛り付けられたりしていました。ここに来て使い慣れた家具に囲まれ、規制のない生活を送るだけで本当に落ち着いきて、普通のお年寄りになまし た」

そう話すのは、北海道函館市にある「シルバービレッジ函館あいの里」総合施設長、林崎光弘さん。十数年前、私が初めてグループホームを見学した時聞いた話である。

「食事の支度や、畑の野菜づくり、ポニーの世話など、それぞれのお年寄りの能力や経験に応じたことをやってもらうと生き生きとして来ます。人の役に立っていると感じることは誰でもうれしいものですから」

入院しているときと比べて、自宅に帰った途端に食欲が出て、見違えるほど元気になった在宅患者をたくさん診ている私には、林崎さんの言葉が誇張されているとは思わない。

認知症高齢者グループホームは利用者の数が5~9名程度の小規模な生活の場で、専門スタッフとともに家庭的で落ちついた雰囲気の中で生活を送ること により、認知症の進行を遅らせ、その人らしい生き方を可能とするサービスである。「ゆったり、一緒に、楽しく、ゆたかに」が基本理念だ。

2000年3月末で266施設であったグループホームは、介護保険によって「認知症対応型共同生活介護事業」として認められ、最近では約1万カ所まで増加した。介護保険のサービスで最も拡大したサービスのひとつだ。

小規模のため設置しやすいこと、介護保険で認められて経営的に安定したことなどが急速な拡大の理由としてあげられるが、最大の理由は認知症の人の介護に関してグループホームにおけるケアが最も有効であると考えられたことであろう。

グループホームが抱える問題としては、ケアの質の向上・維持と、利用者の重度化、ターミナルケアへの対応がある。

自己評価、外部評価などによって自発的にケアの質の向上・維持をはかる仕組みが、グループホームで最も早くから義務化されたことは重要だ。

入居時体力のあった人でも徐々に動けなくなって重度化し、いずれ末期を迎える。その状態で他の施設や病院に移ると混乱がおこる。医療との連携や医療的ケアなどさまざまな問題があるが、「みとり」に取り組み始めたホームが出ていることは心強いかぎりだ。


杉山孝博:

川崎幸(さいわい)クリニック院長。1947年愛知県生まれ。東京大学医学部付属病院で内科研修後、患者・家族とともにつくる地域医療に取り組もうと考えて、1975年川崎幸病院に内科医として勤務。以来、内科の診療と在宅医療に取り組んできた。1987年より川崎幸病院副院長に就任。1998年9月川崎幸病院の外来部門を独立させて川崎幸クリニックが設立され院長に就任し、現在に至る。現在、訪問対象の患者は、約140名。

1981年から、公益社団法人認知症の人と家族の会(旧呆け老人をかかえる家族の会)の活動に参加。全国本部の副代表理事、神奈川県支部代表。公益社団法人日本認知症グループホーム協会顧問。公益財団法人さわやか福祉財団(堀田力理事長)評議員。

著書は、「認知症・アルツハイマー病 早期発見と介護のポイント」(PHP研究所)、「介護職・家族のためのターミナルケア入門」(雲母書房)、「杉山孝博Drの『認知症の理解と援助』」(クリエイツかもがわ)、「家族が認知症になったら読む本」(二見書房)、杉山孝博編「認知症・アルツハーマー病 介護・ケアに役立つ実例集」(主婦の友社)、「21世紀の在宅ケア」(光芒社)、「痴呆性老人の地域ケア」(医学書院、編著)など多数。


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