杉山Drの知っていますか?認知症当会副代表理事の杉山孝博Drによる連載です。全52回、毎週日曜日と水曜日に新しい記事を追加します。


公益社団法人認知症の人と家族の会副代表理事・神奈川県支部代表

公益社団法人日本認知症グループホーム協会顧問
川崎幸クリニック院長

杉山 孝博

記憶力、判断力の低下している認知症の人の介護で苦労することの一つが服薬だ。

「毒を盛られていると思っているのでしょうか。薬を飲もうとしません。説得しても聞き入れないばかりか、食べ物も拒否し始めました」

「睡眠薬を飲んだ後でも何度も要求してきます。毎晩1時間も続きます。かといって余分に飲ませることはできませんし…。夜の来るのが怖いです」

「先生に教えられたとおりに薬を粉にして食べ物に混ぜましたが、味がおかしいと感じたのか、吐き出して食べてくれませんでした」

認知症の人の中で服薬に関して深刻な問題を示す人はそれほど多いわけではないが一定の割合でいることは確かである。

認知症が進行すると必ず問題になるのは、薬を飲まなかったり余分に飲んだりする服薬管理の問題である。さまざまな工夫、家族や介護スタッフの介助が必要になってくる。

記憶障害のため、飲んだことを忘れて「飲んでいない」と要求することはしばしばだ。本人にとっては「飲んでいない」ことが事実なのだから、「飲んだから駄目よ」は説得力を持たない。

足りなくなった薬を医師に追加処方してもらうことはできないし、多く飲めば副作用も出てくる。

「飲んでいない」というこだわりに対しては、市販の整腸剤の錠剤やサプルメント製剤を「先生が出してくれたよく効く薬よ」と言って、要求のたびに与えるのがよい方法である。これなら何錠服用しても問題はないし、要求に応じた方が早くこだわりがとれる。

自分である程度管理ができる認知症の人が服薬を確実にするための工夫を挙げてみる。

①複数の薬を一包化して一度に飲みやすいようにする②服薬ボックスを使う③カレンダーに張って見やすい位置に置く④テーブルの上に「薬は飲みました か」と書いた紙を置く⑤家族がタイミングをみて電話する⑥服薬時刻をはずれてもよいので、ヘルパーの訪問時に服薬させる―などがある。

薬を飲まない人に対する工夫としては次のようなものがある。

①飲みやすい剤型にする②どうしても必要な薬に絞る③勧め方を工夫する④食べ物に混ぜる⑤味を考える⑥注射や貼付薬に変える―などがある。

散剤や単純な錠剤では苦い薬も、糖衣錠やカプセルになっていれば、苦味を感じなくなる。シロップや砂糖をまぜれば飲みやすくなる場合もある。


杉山孝博:

川崎幸(さいわい)クリニック院長。1947年愛知県生まれ。東京大学医学部付属病院で内科研修後、患者・家族とともにつくる地域医療に取り組もうと考えて、1975年川崎幸病院に内科医として勤務。以来、内科の診療と在宅医療に取り組んできた。1987年より川崎幸病院副院長に就任。1998年9月川崎幸病院の外来部門を独立させて川崎幸クリニックが設立され院長に就任し、現在に至る。現在、訪問対象の患者は、約140名。

1981年から、公益社団法人認知症の人と家族の会(旧呆け老人をかかえる家族の会)の活動に参加。全国本部の副代表理事、神奈川県支部代表。公益社団法人日本認知症グループホーム協会顧問。公益財団法人さわやか福祉財団(堀田力理事長)評議員。

著書は、「認知症・アルツハイマー病 早期発見と介護のポイント」(PHP研究所)、「介護職・家族のためのターミナルケア入門」(雲母書房)、「杉山孝博Drの『認知症の理解と援助』」(クリエイツかもがわ)、「家族が認知症になったら読む本」(二見書房)、杉山孝博編「認知症・アルツハーマー病 介護・ケアに役立つ実例集」(主婦の友社)、「21世紀の在宅ケア」(光芒社)、「痴呆性老人の地域ケア」(医学書院、編著)など多数。


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