杉山Drの知っていますか?認知症当会副代表理事の杉山孝博Drによる連載です。全52回、毎週日曜日と水曜日に新しい記事を追加します。


公益社団法人認知症の人と家族の会副代表理事・神奈川県支部代表

公益社団法人日本認知症グループホーム協会顧問
川崎幸クリニック院長

杉山 孝博

認知症介護に関して、今後大きな問題となるテーマが4つある。

「若年期認知症」「一人暮らしの認知症の地域ケア」「認知症の人が認知症の人を介護する『認認介護』」「ターミナルまでを含めた初期から末期までの継続的なケア」である。

今回は「若年期認知症」を取り上げてみる。まずは認知症の人と家族の会の調査に寄せられた声を聞いてほしい。

「何と言っても『徘徊全盛期?』は大変でした。将来の不安と世間の目を気にしながら、雨の日も、朝、昼、夜もかまわず歩きたい夫について歩いていた頃、よからぬことを考えたのもその頃でした」(55歳で発病した夫を11年間介護している妻)。

「何よりも経済的なことが心配です。年金生活の中から入院費、看護費、付添費などをどう捻出したらよいのか途方に暮れてしまいます」(59歳で発病した夫を1年間介護している妻)

若年期認知症とは、65歳未満に起こる認知症であって、厚生労働省研究班の調査によれば、全国に3万8千名の患者がいると推定されている。

若年期認知症の人も介護保険のサービスを利用できるようになった。しかし①活動性が高いため受け容れてくれる施設が少ない②若年期認知症にあったプ ログラムが用意されていない③手間のかかる割に要介護度が低く認定されるためサービス量が限られる―など介護負担の十分な軽減になっていないのが実情だ。

認知症の人と家族の会が実施した「若年期痴呆介護の実態調査」(2002年)によると、発症年齢は、50歳代後半が41.0%、50歳代前半が31.1%と50歳代が最も多く、40歳代も10%を超えていた。

発症時には62.1%の人が仕事についていたが、認知症が進行し仕事を辞めさせられた人が18%、自ら辞めた(たぶんやむを得ず辞めた)人が75.4%と、実に9割の人が仕事を続けられなくなったと回答した。

妻が夫を看るケースが44.7%、夫が妻を看るケースが37.4%と、配偶者同士の介護が80%を超えていた。

自分の認知症や配偶者の介護のため、退職したり責任の軽い職場へ配置転換されたりして、経済的に厳しい状況がうかがえる。認知症が重度障害と認められないために、ローンを払い続けなければならない人もいる。

若年期認知症をめぐっては医療や介護の領域のみならず、就労、経済的問題、遺伝、子供の養育・結婚、介護サービスの質的・量的不足などといった問題が山積している。総合的な対策が早急に望まれるのである。


杉山孝博:

川崎幸(さいわい)クリニック院長。1947年愛知県生まれ。東京大学医学部付属病院で内科研修後、患者・家族とともにつくる地域医療に取り組もうと考えて、1975年川崎幸病院に内科医として勤務。以来、内科の診療と在宅医療に取り組んできた。1987年より川崎幸病院副院長に就任。1998年9月川崎幸病院の外来部門を独立させて川崎幸クリニックが設立され院長に就任し、現在に至る。現在、訪問対象の患者は、約140名。

1981年から、公益社団法人認知症の人と家族の会(旧呆け老人をかかえる家族の会)の活動に参加。全国本部の副代表理事、神奈川県支部代表。公益社団法人日本認知症グループホーム協会顧問。公益財団法人さわやか福祉財団(堀田力理事長)評議員。

著書は、「認知症・アルツハイマー病 早期発見と介護のポイント」(PHP研究所)、「介護職・家族のためのターミナルケア入門」(雲母書房)、「杉山孝博Drの『認知症の理解と援助』」(クリエイツかもがわ)、「家族が認知症になったら読む本」(二見書房)、杉山孝博編「認知症・アルツハーマー病 介護・ケアに役立つ実例集」(主婦の友社)、「21世紀の在宅ケア」(光芒社)、「痴呆性老人の地域ケア」(医学書院、編著)など多数。


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