どうするつもりか介護保険法=次期改正の動きレポート#11

介護保険・社会保障専門委員会

今号も、第173回(昨年12月12日)第175回(1月24日)の「給付費分科会」レポート合併号です。前号同様長くなっていますが、最後までお付き合いください。

*第174回の議題は「介護事業経営概況調査」のみでした。利用者である私たちにも大いに関係のある事ですが、今回は掲載しませんでした。

はじめに~「主任ケアマネ」問題と「報酬改定の効果検証」~

第173回厚生労働省「社会保障審議会介護保険部会給付費分科会」(分科会)は昨年 12月12日に「ベルサール神田」(東京都千代田区)で午前10時から行われました。議題は(1)居宅介護支援の管理者要件に係る経過措置及び地域区分について(2)「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」中間取りまとめ(報告)、でした。  また、第175回は、本年1月24日に「ベルサール九段」(東京都千代田区)で午後5時から行われました。議題は(1)居宅介護支援事業所の管理者要件に係る諮問について、 (2)平成30年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(令和2年度調査)の実施内容及び進め方について、でした。

議題は(1)居宅介護支援の管理者要件に係る経過措置及び地域区分について(2)「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」中間取りまとめ(報告)、でした。  

 また、第175回は、本年1月24日に「ベルサール九段」(東京都千代田区)で午後5時から行われました。議題は(1)居宅介護支援事業所の管理者要件に係る諮問について、 (2)平成30年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(令和2年度調査)の実施内容及び進め方について、でした。

第173回給付費分科会

主任ケアマネの管理者要件「適用」先送り~人材問題は介護職だけではない

議題(1)は昨年11月12日の第172回分科会で検討された項目ですが、今回「居宅介護支援事業所の管理者要件に関する審議会報告案」が提案されました。その「案文」によりますと、『管理者が主任ケアマネである事業所は増加している』『(要件を満たすことで)人材育成の取組が引き続き推進されている』『一方で、(要件を満たしていない事業所は)4割程度ある』また、『研修受講方法の利便性の向上や研修費用の助成の推進など、より積極的な取組を進めるべきとの指摘』にも触れられています。具体的には、既設事業所は現管理者が変わらない限り、2027年まで「猶予」し、2021年4月以降に新設する事業所は、主任ケアマネを管理者の要件とする事を提案しています。ちなみに、主任ケアマネ研修費は秋田県の20,996円から広島県の62,000円まで差があり、会場も限られているため、離島や中山間地の人には厳しい環境になっています。

第173回給付費分科会での鎌田松代事務局長の発言要旨

ケアマネの質向上は利用者にとって最も大事~利用者の声を活かした研修を~

(主任ケアマネ研修)受講に関して、居宅開設で必要となっているため受講したくても東京都においては受講制限がされていると聞く。制限している理由は何なのかお教え願いたい。(⇒事務局回答:市町村の推薦が受講要件にあるため) ケアマネの質向上は利用者にとっては最も大事なことである。そのための受講環境の 整備は引き続き進めていただきたい.おもな意見にも書かれているが、質が確保されているのかは研修などの体制だけではく、ぜひ私たち利用者の声を聞いていただきたく重ねてお願いする

都市部の利用者を直撃するもの~「地域区分」について

意見の中で、人材不足による人件費の高騰から見直しが必要となっている。特に都市部では利用者が支払う利用料にこれは反映するので、これ以上の上昇となると、サービスの利用を控えるか、他の生活費を切り詰めての利用となることも検討の中に入れていただきたい。利用料が高くなることについて保険者である市区町村だけでなく、厚労省でも、利用者や家族に丁寧な説明をする工夫が必要であると認識していただきたい。

(*例えば、訪問介護を同じ時間利用して、鹿児島県では20,000円の自己負担が大阪市では22,240円になるのが現在の「地域区分」です)

「書くこと」が多くて介護に集中できない~「文書に係る負担軽減化」について

介護人材不足は深刻で、なじみの職員さんが書くことやチェックの多い現場では介護に集中できない、もっとゆっくりと利用者と向き合いたいとバーンアウトされる姿を見るにつけ、何とかしてもらいたいと思う。そのような中で、文書の簡略化は本人・家族も大いに進めてもらいたいところ。ただ、簡略化はわかるが、現場事情は自治体ごとに違うので共通化には驚いている。なぜそうなったのか、お教え願いたい(⇒事務局回答 参考資料2に記載『事業者からは、自治体による様式や解釈の差異などの、いわゆるローカルルールへの対応に負担感があるとの意見が多く示された』等々)

「文書の負担軽減・簡素化」は必要書類の基準を明確にして

この「文書の負担軽減化」する内容や「簡素化」で優先順位は示されたが、検討委員会(介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会)では文書の重要度別、法令遵守を確認する必要書類は何であり、重要であるとする文書の内容は何なのかを示して欲しい。人員とか設備、加算はきちんと法令に則って書類は完備されないといけない。例えば、資格要件に合致、経験のある人など配置基準に示された人が配置され、不正を行う余地がないようにした上での簡略化と考えますが。何が重要な文書であるのかその内容を示して欲しい。検討委員会では必要書類基準を設け検討されたと考えます。

第175回分科会

~次期改定に向けて、利用者・家族への影響の実態と課題を明らかにする調査を~

次期報酬改定審議の「データ収集のため」に実施すると提案された「調査研究事業」は、①「介護保険制度におけるサービスの質の評価に関する調査研究」②「福祉用具貸与価格の適正化に関する~」③「訪問介護における平成 30 年度介護報酬改定の影響に関する~」④「医療提供を目的とした介護保険施設等のサービス提供実態及び介護医療院等への 移行に関する~」⑤「認知症対応型共同生活介護等における平成 30 年度報酬改定の影響に関する~」の5件です。例えば、①の調査で気になるのは、「サービスの質の評価」の基準が「科学的に自立支援等の効果が裏付けられた介護」とされている事です。ここで言う「自立」を「介護を必要としない状態」とするならば、介護保険法の目的から逸脱しています。⑤の主な調査項目として「認知症カフェや認知症の人やその家族への相談支援の実施状況、その 課題と効果」とありますが、いずれの調査にも利用者と家族への「影響」の実態と課題を明らかにする調査であってほしいと思います。

第175回給付費分科会の鎌田松代事務局長による報告及び発言要旨

主任ケアマネを管理者要件とする事には課題が多い 

 議題(1)居宅介護支援事業所の管理者要件に係る諮問について

「居宅会議支援事業所の管理者は主任ケアマネジャーであることが必要」という規定に関して、半分の事業所が未配置であるため、令和2年3月31日までの経過措置を令和9年3月31日まで延長することを12月12日の給付費分科会からの意見で決定した。これまでの給付費分科会で出された資料によると、配置での効果調査では所内の研修率や人材育成などケアマネの質の向上となっているとのことでした。     委員からの意見は、「中山間地や離島での配慮措置については、配置がいらないのではなく事業所や市町村も努力することも必要」「主任ケアマネの受講を希望しても受講できない市町村があるので、受講の定員増」「配置してもリクルートや引き抜きなどがある現状」「受講要件の拡大」などが出ました。

本人・家族、地域の人にとっての、真の「効果」検証を

議題(2)平成30年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査

委員からは「調査にあたるシンクタンクの力量で結果が変化するので、しっかりしたデータ、有意義な調査解析、高い回収率」への要望がありました。 私は意見として、グループホームは地域の認知症ケアの拠点として活動している事業所があり、本人・家族、地域の人にとっても認知症理解を進めるのに効果があるが、人手不足のなかで事業所は頑張っている。そのように拠点として活動している事業所の調査をしていただきたいし、報酬的なものがあると人材確保の面からもよいのではないか。訪問介護での自立支援のための見守り的援助で、ケアマネによる認知症の人の出来る能力アセスメントで、真に必要な見守りサービスとなっているか、利用者への効果検証も調査項目として要望するとの発言をしました。

被保険者の個人データ活用には説明責任の明記を 本人・家族の介護実態の声をこの審議の場に

2月の給付費分科会は休会で4月からは月に2回の開催ペースでいよいよ本格化します。平成30年度介護報酬改定での審議報告で検討が必要とされた横断的事項で、同一建物等の共住者へのサービス提供、外部のリハビリテーション専門職等の連携に関する実施状況や効果検証など10項目、居宅系では「訪問介護」における見直しなど4項目、施設系では介護保険施設のリスクマネジメントに関する実態把握や今後の対応検討など2項目があり、各種調査・研究を活用し実態を把握し、それに基づき給付費分科会で審議し21年度の介護報酬改定が決まっていきます。  私の役割は本人・家族の介護実態の声をこの審議の場に届けることと考えています。                                  (鎌田松代)

4月からの審議では、2021年4月から実施される新たな「負担」を決めることになります。「負担増」の流れを止めることの難しさはありますが、今回(第8期改正)の審議を通じて、「負担増」につながる多くの検討項目を「先送り」させたのも、声を上げ続けたからこその「成果」と言えますので、今後も審議経過を注視し、情報提供に努めたいと思います。                            (まとめと文責 鎌田晴之)

次回の「給付費分科会は」

 次回の「給付費分科会」は2020年3月24日に予定されています。(まとめと文責 鎌田晴之)

リンク:厚生労働省(部会ホームページ)

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126734.html

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